石川五右衛門3世―但し直系ではない/贔屓の筋②
照り返しのきつい河原で一日働いて、それなのに、俺たちは、姿絵を買えなかった。
教えられた版元に行くと、たった今、最後の一枚が売り切れたところだという。
「えええーーーー、銭ならいくらでも出す!」
この際だから、俺は叫んだ。
俺と独歩、合せて、30文(約千円)しか持ち合わせがなかったのだが。
「残念だったねえ」
大して残念でもなさそうに、版元の蔓屋は言う。
「愛之助の役者絵は、刷ったばかりの頃はそうでもなかったけど、最後の一枚は、200文(5000円強)で売れた