カール大公の恋6 叶えられなかった約束②
雪のシェーンブルン
1830年の年が明けた。
女官の目を盗んで、マリアはシェーンブルン宮殿の外へ出た。
冬の庭園は、寒々として寂しかった。マリアの好きなバラ園は、雪に埋もれていたし、迷路も閉じられていた。噴水さえも枯れ果てている。
……「姉上、どこへ行くつもり?」
咎めるような声が、耳に蘇る。
この頃、マリアの1歳下の弟、アルブレヒトは、ひどく生意気になった。皇帝から、大佐の内示を戴いてからというもの、偉ぶって、手がつけられない。
しつこく問い糾す弟を無理やり