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エンジニアリングマネージャーとしての README を書いて、1 年半が経った

これは、Engineering Manager Advent Calendar 2019 の 4 日目の記事です。

僕がエンジニアリングマネージャーになったのは約 1 年半前のこと。

ちょうどそのころ、シリコンバレーのテック企業(Slack、Netflixなど)のマネージャーたちが README を書いているという記事がはてブで話題になっていた。
かんたんに言えばマネージャーとしての「じぶん説明書」だ。(文字通りだ…)
昔々に血液型占いの文脈で、女子高生のあいだで「自分の説明書」が流行っていたような気がする。

そうして、日本ではクックパッド社の @yoshiori さんが README を書いていた。

この README が本当に良くて、僕も触発されてしまったのだが、二番煎じ感に負けて当時はパブリックにするのを躊躇ってしまった。結果、社内ドキュメントとして公開することとした。
幸いなことに公開直後に社内のエンジニアほぼ全員が見てくれて、何名かからはポジティブなフィードバックを頂くことができた。

あれから 1 年半ほど経ち、自分の中でもパブリックにすることへの恥ずかしさもどこかへ消えた。改めて今日読んでみたところ、自分の軸にあまりブレがないことを確認できたのでインターネットに置いておこうと思う。

なお、思考は状況により変わりゆくものだとも思うので Work In Progress なドキュメントとして捉えてほしい。

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これは何?

これにインスパイアされたものです。(https://hackernoon.com/12-manager-readmes-from-silicon-valleys-top-tech-companies-26588a660afe)

常に気持ちよく良い仕事をするために、僕がどのようなことを考えているかを書いたものです。
僕が普段どんなことを考えているかを明記しておくことで、お互いの精神的な負担を減らせないかという試みです。
「新たな挑戦を恐れてはならない *1」という文脈の try のひとつでもあります。

なお、ここに書いてあることを一切強制するつもりがないことは強く明示しておきます。

基本的信条

僕と関わる人は、基本的に幸せであって欲しいと思っています。
ただ、人生の都合上、いろいろなことがあるのは承知しており、あなたの人生すべてを背負うことは残念ながらできません。
そのかわり、少なくとも仕事をする上では幸せな状況を作り続けるのが僕の役割だと思っています。

幸せの定義は人によってまちまちなので、対話を重ねていくことで、少しずつでも認識のすり合わせができると嬉しいです。

Engineering Manager という Role

少なくとも僕の所属するチームにおいては、マネージャーとメンバーは上下関係ではなく、Role (役割)という認識でいます。
それぞれがプロフェッショナル意識を持ち、尊敬しあえる状況にあることを望んでいます。
階層構造は意思決定を遅らせます。「許可を得ること」や「自分を守ること」に力を注がずに、いつでも気軽に相談してください。
「いつでも気軽に相談できない」ような状態であればそれは僕の課題なので、その旨を伝えてくれると嬉しいです。

技術について勘を鈍らせないように、できるだけコードに触れていたいという思いはあります。ただ、あなたが幸せに仕事をできていない状態では、コードを書いていたらそれは少し違うかなと思っています。

1. 中長期的な目線で、僕達のチームの存在意義について考え、伝えます。
2. あなたが目指したい方向を、一緒に考え続けていきます。会社に所属している限り、会社のリソースを利用して個人が成長することは善だと思っています。会社が向かいたい方向と個人が向かいたい方向のベクトルをなるべく合わせられるようにしていく作業になると思います。
3. あなたが目指していく方向になにか障害物があれば、それを取り除くための努力をします。
4. 視野が狭まらないように外を見るように促します。外というのは会社の外だけでなく、日本の外も指します。

大事にしていること

オープンソースの文化、UNIX 哲学が好きなので、そのあたりの思想の影響を受けていると思います。

1. 何事もオープンに進めることについては大事にしたいと思っています。手を伸ばせばそこにある状態を作っていきたいと考えているので、気になったら取りに来てください。そして、興味があればコミットしてください。
2. 絶対に正しいことなど存在しないと思っています。自分の意見ですら、正しいのかは分かりません。しかし、一度それと決めたら、それを正解にしていくような進め方をとっていきたいと思っています。
3. いろいろな考え方を大事にしたいと思っています。たくさんの価値観に触れることで豊かな人生になると信じています。
4. 思考の先には行動が伴うと思っています。そして、行動が自身を変え、周りを変える手段であると思っています。
5. 基本的には「ギブ・アンド・ギブ」の精神を持っており、打算的な行動はそこまで得意ではないと思っています。

フィードバックについて

定期的に行われる 1on1 だけではなく、日常的なフィードバックを好みます。
良いと思ったものはなるべくその場で良いと伝えたいですし、好ましくないと思ったら、それはそれで伝えたいと思っています。
もしよければ、ぜひ僕にもフィードバックをお願いしたいです。ポジティブなものも、ネガティブなものも大歓迎です。
どんなに歳を重ねていても成長したいと思っており、成長にはフィードバックが不可欠だと考えています。

仕事と健康

肉体的にも精神的にも健康であることが、何よりも重要だと考えます。
仕事と僕生活は相互に依存関係があると考えています。特に頭脳労働である僕たちにおいては、より依存関係が強い認識で、厳密に仕事と僕生活を区切るのが難しい職種だと思います。
仕事により健康が脅かされる状態はとても望ましくないので、速やかに伝えて欲しいです。(もちろん僕からも声をかけたいとは思っています。)
その際、アラートレベルが低い段階から伝えてくれるとなおありがたいです。評価などには一切影響しません。あえて強調しますが、健康が一番大事だと考えています。

情報伝達について

組織構造上、どうしても情報の非対称性が生まれてしまうのは事実です。
「何事もオープン」にしたいのはやまやまですが、現実的には時間的都合などで難しい場合もあります。気になったことや分からないことはいつでも聞いてください。変に推測をしないでください。
僕は情報を伝える努力をしますが、正しい情報を得る努力をして欲しいとも思います。

Notes

僕も人間なので、常にこの文章の通りであるとは限りません :bow: ときどきこれを見直したいと思っており、追加や編集が加わると思います。
長文読んでくださってありがとうございます。

*1 「新たな挑戦を恐れてはならない」とは弊社で体現を推奨している "Style" です。

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また、このドキュメントに紐づく形で、僕への匿名フィードバックを行える Google Form を置いている。
(Google Form 経由でフィードバックが来たことはないので、それはそれで課題なのかもしれないが...)

そのひとがどういう考え方の持ち主なのかをあらかじめ知れると、無用な期待をせずに済み、結果的にコミュニケーションコストが下がる。

あるとき面談で「serima さんの Manager's README の取り組みは良かった。次に私がマネージャーになったときにはやりたいと思う。」と言ってくれたエンジニアもいた。

言語化のプロセスで新たな気付きも得られるはずので、README を書いてみるのは個人的にはおすすめだ。たとえあなたがマネージャーでなくても。

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