おばさま

どうも、「コミュニケーション能力は人並み以下だがおばさまウケについては一家言持ち」です。今日はおばさま方の心を掴むためにはどのような心がけが重要であるか、真剣に考察していきます。

まず前提として挙がるのが、いわゆるジェネレーションギャップ。これはもちろん避けては通れませんが、コツを掴めば案外気になりません。仕事や熱烈な趣味など、雑談を盛り上げるためには共通の話題が不可欠です。しかしその幅には各々限界があり、苦し紛れに「これは外さないだろ」というような話題を出したところで、相手を巻き込んで議論を深められるだけの知見を持っていなければ逆効果になりかねません。下手すれば、
「あー、名前は知ってる!周りには好きな子いたなあ(笑)」
の1ターンキルで終わる可能性すらあります。これが積み重なると、
話題が見つからないことに対する既存の焦燥感に加えて「まずい今俺エンターテイナーじゃない」という無力感に苛まれ始めてしまいます。これはいけませんね。エンターテイナーというのは、おばさまを楽しませる以前に自分を楽しませてこそなのですから。

さて、ここまでで無理やり共通の話題をひねり出すのは望ましくないということがわかっていただけたかと思います。しかしそれでも共通の話題は見つけ出さねばなりません。一見、八方塞がりに思える状況ですが打開策は案外シンプルです。
すなわち、「現在進行中の会話から引用する」のです。

例えば、「日本の薬って世界的に見てもすごいらしい」という話題があったとします。この真偽はあまり重要ではないので、まず具体例を挙げてもらいます。すると、「ロキソニンは外国人留学生が長蛇の列を作るほど大人気」という情報をくれます。ここです。ここに勝機が潜んでいます。「外国人留学生」でもなく、「長蛇の列」でもなく、深めるべきは「ロキソニン」一択です。それではこれをもとに、雑談をイメージしてみてください。


どうですか?全然盛り上がっていないと思います。すみません。
しかし私は何も皆さん及びおばさまを貶めたくてしゃべっているわけではありません。一つ重要なことを忘れていました。ロキソニンを深める「タイミング」です。
イメージとしては、「忘れた頃にロキソニン」で覚えてください。
最初にロキソニンというワードが出てきた時に深める必要はありません。まだおばさま方の膨大な雑学に身を任せましょう。たとえあなたが薬学に自信ニキだとしても、こちらから「この成分は日本独自にうんぬんカンヌン」してはなりません。いや、してもいいです。私には。知識として面白いので、そういう趣旨の対話であれば是非してください。しかし今回はおばさま相手。今後役立つ知識よりも、今この雑談を楽しむことに集中してください。あなただけが楽しむのではなく、おばさまと一緒に真のエンターテイメントを享受してください。

抽象的な話が続いたので、一度具体例に戻ります。
あなたはおばさまの、「日本の薬」に関する雑学を教えてもらっている最中でしたね。ここはひたすら「はえー、マジっすか!?」しときましょう。しときましょうというと語弊がありますね。しょうもないものと決めつけずに傾聴すれば、そもそもおばさまの話はとても面白いことがほとんどです。ここはこちら側の雑学で対抗するのではなく、たとえ「薬」の話題が終わろうとも、話を聴く側に徹します。

すると、新たな話題をもらいます。
ここでは仮に、あなたが「趣味を聞かれて『お酒が好き』と答えた」場面を想像してみてください。ここで、おばさま方の「私も好き」ルートと「私は飲めないんだよね」ルートの2パターンが生じるはずです。どっちでも問題ありません。まだです、まだ身を任せる段階です。このあと自分の好きなお酒を答えたり、おつまみの話に展開しても構いません。しかし絶対に聴き逃してはならない話題が一つだけあります。お酒がもたらす「頭痛」の話です。
ここォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
逆転裁判みたいなカットインを入れてください。


「飲みすぎて二日酔いになりがちなんだよね〜」
         
僕「まあでも日本にはロキソニンありますからね」

          (どっ)


無事ウケましたね。こうなってしまえばもうこっちのもんです。おばさまはもう、あなたのことを「ウケる人」としてみてくれるので、何を言ってもそれなりにウケます。何なら最悪ここでウケなくても何とかなります。本当に重要なポイントは、
①ロキソニンのようにできるだけ具体的なワードを拾っておく
②その場ではなく、忘れた頃に使えるタイミングで叩き込む
この2点だけだからです。ロキソニンがウケなくても、次のロキソニンをまた探せばいいのです。おばさまはいくらでもネタを提供してくれるのですから。敵ではなく、最大の味方なのです。じっくり雑学を聞きながら、あなただけのロキソニンを見つけましょう。

ドイツの近代建築家、ミース・ファン・デル・ローエは言いました。
「God is in the details(神は細部に宿る).」

私も言いました。
「God is in the details(おばさまとの雑談は、一般ウケより具体的なワード).」

なんにせよ、雑談は独りよがりでは成立しません。おばさまのやりたいこと、あなたのやりたいことを焦らずに、楽しみながら探してみましょう。その先にはきっと、さらに楽しい雑談が待っています。
それではおばさまもおばさまではない方も、素敵な雑談ライフを。

2月19日 日曜日の朝、いつもより少し遅い時間

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