冷静と情熱のあいだ -3-

次にこのシリーズで一番語りたかったうちの一人、大塚くんの話をしようと思います。
彼は最近、私をもっとも驚かせている選手です。

先週、その活躍を現地で見てきました。
その前に彼を見たのは全日本インカレの決勝の舞台でした。プレーもチームをまとめるその姿もこのまま大学でやっていくのにはもったいなと感じていました。

大塚くんをちゃんと認識したのは春高2年の時。
サントに入団した鍬田くんが3年の時の鎮西と洛南の決勝戦でした。
洛南カルテットメンバーとともに2年からスタメンで惜しくも決勝戦で敗れたもののその強さは飛び抜けていたと思います。
そして3年の時には1セットも落とさず完全優勝。
世代で一番、期待されていた長身スパイカーだったのだと思います。

そして常勝早稲田に進学。いわゆるバレーエリート。
大学に入っても1年の時からOHとしてコートに当たり前のように立つ選手になっていました。いつかは代表でも活躍するんだろうなと思っていましたが、それが東京オリピックだとは思いも寄りませんでした。

2021年。
オリンピックが延期したことで彼が予想してたバレー人生とは変わった展開になったのではないでしょうか?
オリンピックが延期された年に初招集された大学生の大塚くんと藍くんはこの年も日本代表のオリンピック候補のメンバーの中に含まれていました。
でも、そのメンバーの発表があった時点で、この二人がオリンピックに行くだろうと予想した人は多くなかったのではないでしょうか?

蓋を開けてみると、VNLのメンバーに選出され、オリンピックメンバーに選出され東京オリンピックの舞台に立っていたのでした。
それは彼にとっては憧れの舞台に立てたという嬉しい気持ちとあまりコートに立てなかったと悔しい気持ちの入り混じった時間だったのかもしれません。さらには藍くんと同じように選出に関して疑問を投げかける声もあったように思います。
どんな気持ちでいたのかは本人にしかわからないことなのだと思います。

アジア選手権でも藍くんと比較するとコートに立った時間は長くなかったかもしれません。

その後、大学に戻った彼は秋季リーグをメンバーとともに戦い抜き、インカレでは早稲田の強さを見せつけ、現役大学生Vリーガとしてコートに立って私たちを驚かせてくれました。

いろんな経験をしてバレーボールで生きていく覚悟ができたと言っていた彼。同じ大学生の藍くんがイタリアに挑戦する姿を見て、自分もできることをしたいという気持ちと彼を取り巻く人たちの彼への期待がその場所へ連れてきてくれたんだと思います。

少しはコートに立たせてもらえるのかな?なんて思った自分を今は反省しています。1月に合流してからすでにVOMを5回。先週末の試合では彼はまさにパナソニックの主力選手としてチームを引っ張る活躍をしていました。
今はティリ監督、世界を知っている指導者と一緒に活動し、クビアクを筆頭に代表経験もある先輩方と一緒にコートに立ち、スポンジのようにいろんなことを経験しているところなのかな?
毎試合、毎試合、とても楽しそうにバレーボールをする姿がとても印象的です。

この年代の男性アスリートは一気に成長するタイミングです。
彼は去年から今年にかけて恐ろしいスピードで進化しているのではないかと思っています。

もちろん、彼も次のシーズン、代表のユニフォームを着る一人だと私は信じています(ユニバがどうなるのかわからないですけど)。
そして、藍くんとはお互いに競いながら(ちょっと持っている資質は違いますが)、前に出たり、追い越されたりを繰り返してさらに高いところに向かっていくんだろうと思っています。

もしかしたら石川祐希の後のポジションを引き継ぐのは彼なのかもしれません。(予言になったらいいなと思って書き残しておきます)
そしてパリの次のオリンピックでは彼がキャプテンかもしれませんね。

現地観戦したいな、もちろん、それも。


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