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お天道様ノ掴み方- ③

「契約?!」
「うん♪」

だから「うん♪」じゃねーよ!

「つまりはの?そなたは、ウチと契約をしないと、お前さんを「仇なす」あの死の権化を打ち破ることができないのじゃ」

冒頭から、いきなり何を言っているんだこいつは・・

「ぼ、僕が死神を倒す?」
「うん!」
「・・・さっきからウンウンって・・。あ、あのなあ!一体どうやって!どうやって、そんな、そんな・・こんな、なんの変哲もない、さっきまで普通の「高校生」をやってた僕に、一体、どうやってそんな変なものと立ち向かえばいいって言うんだよ!」

僕は、当たり前のことを、ただ当たり前のように言っていた。だってそうだろう?はっきり言って、意味がわからない-

「安心せい。だから、儂がついておるのじゃ」
「信用できない!」
「無粋なやっちゃのお〜。妾のことを、全く信用しとらんというのか?」
「今のこの状況で、どうやったらお前のその力とやらを信用できる!・・さいあく、この状況までは認めよう。だからといって、お前が一体全体何で、僕に何をしてくれる!何ができる!」
「その時になったら説明をする」
「ハア・・結局、こんな感じだもんなあ・・」

・・話をかいつまんで整理すると、僕は、どうや、これから訪れる可能性があるのであろう。その「死の権化」とやらに立ち向かうため、こいつと協力をしてらそいつを打ち破らないといけない。

ただ、こいつが一体全体何で、どういう存在で、どういう力を持っているのかは、話し半分程度ぐらいにしか、理解ができない。

「最悪だ・・」
「夕よ」
「なんだ」
「落ち込んでいるところ悪いが、そろそろこの状況とも『おさらば』をする時が、来たようなのじゃ」
「・・?それってどういう-」
「お前さんの魂が、肉体に戻りたがっておる- つまりは、現実のお前さんがまた、目覚めの時を迎えようとしておるようなのじゃ」
「ヘ?!じゃ、じゃあ、僕は、帰れるのか?!元の生活に!」
「そのようじゃの♪」

彼女の笑みに合わせるかのように、僕も歓喜をする-

元の生活に戻れる-

その言葉が、僕にとっては、何よりも救いで、何よりも有り難かった。

「しかし、気をつけるんだぞ?夕」
「え?」
「また、いつ、何時、お主が彼奴らの手に襲われるかわからん- だから、そなたは、これから先、奴らにまた襲われないようにするためにも、充分に「配慮」をして生きていかなければならんのじゃ」
「あ、ああ・・そ、そうなのか・・」

僕が元の生活に戻れても「危険自体」は、残されているというわけなのか・・。だから、僕は、半ば、半信半疑だが、彼女にこう聞いてみせた。

「そ、その時は、お前が助けてくれるんだろ?」

彼女はそっと微笑んで、僕にそう告げた。

「契約は、契約なのじゃ♪」
「・・あ、あのさ、さっきから言っているその「契約」ってのは、実のところ、一体なんなんだ?僕たちにはこう・・何か約束事みたいなものでも、あるというのか?」
「その時が来たら-」

「教えてしんぜよう」って訳か・・

彼女の言葉を遮るかのよう、僕の思考回路は、先に答えを出す。まあ良い- これで、晴れて、元の生活に、戻れるわけなのだから-

「因みに、あとどれくらいで元に戻れる?」
「そうさの〜。あと少しの筈じゃ。心配せんでも、今はアヤカシの気配は、全く無いぞ?」
「そうか・・それを聞いて安心したよ。で、お前は、どうなる?」
「妾はの。お前さんみたいな者がまたどこかに現れんよう、ただこの世界のどこかで、息を潜めて、来世から、そなたの無事を祈っておるのじゃ!」
「なるほどね・・そりゃ、神様らしい」
「そろそろ時間がきたようなのじゃ・・。では、またの♪」
「あ、ああ」
「..またの」
「・・?」

突如、目の前がブラックアウトした-

と同時に、僕の思考回路は、そこで途絶え、瞬間的に、安眠と安らぎのようなものに似た世界の感覚に包まれて、どこか光の彼方に、消え去っていった・・・

なんだったんだ?一体・・・

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