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お天道様ノ掴み方- ⑤

月明かりの晩-

夜風と共に、物思いにふけっていた僕は、事故の際に起こった、あの「妙チキリンな出来事」を、思い出している。

(気をつけるんだぞ?夕-)

・・一体、何をどう気をつけたら良いんだ・・。と、今の僕には、さっぱり分からないでいた。

「『アヤカシ』・・だったっけか・・?」

何だそりゃ・・?まるで、おとぎ話でもあるまいし。

-事故から回復して、早数時間。

いい加減、脳内も肉体も、元の「健常な男子高校生」に戻っていた僕は、正直「あれはただの夢だったのではないか?」と、内心、そう思いかけていた。

あれが現実の出来事だったと決めつけるには・・まだ、いささか早すぎるのではないのか・・?というのが、僕の導き出した答えだ。

「妙にリアルだった・・」

・・考えていてもしょうがないか。

ここで「ふわ」っと、一度あくびをかいた僕は、色々な想いを胸に抱きながらも、綺麗な病院のベッドに、その身を横たえる-

(今日はもう、寝よう・・)

明日からは、毎日が平和でありますように- そう、願いを信じて。

(場面 変わる 病院 診察室)

朝-

病院のベッドから起き上がった僕は、院内で軽く朝食を摂ったのち、先日に診てもらった病院の先生から「食べおったら、診察室へ来るようにして下さい」と、看護婦さんを経由して、そう告げられる。

今朝方駆けつけた僕の母親が、診察の内情を知りに、病院の医師に診断を聞いてみると-

「・・・ふむ。経過は良好のようですね。これなら退院しても、大丈夫でしょう」
「先生、本当ですか??・・ハア・・・ありがとうございます。ホラ、貴方もちゃんと、お礼を言いなさい!」

母親にそう促された僕は、少し上目遣いになりながらも、申し訳なさそうな程度に、医師に礼を言った。こちらににこっと和らげな笑みを浮かべた医師からは「もう、大丈夫だよ」と、そんな、優しいメッセージのようなものを、勝手に感じ取っていた僕だったが「これで晴れて退院か」と、たった一日こっきりだったのだが、窮屈だった病院内のベッドからも、ようやく解放をされる。

(場面 変わる 東雲家内)

「お兄ちゃん!おかえり!どうしたの?」
「ただいま。ああ・・昨日はな。ちょっと、実は、事故にあっちゃってさッ」

テヘ、ペロリとまではいかない、僕の痛烈なブラックジョークは、齢5歳を迎えたばかりの僕の妹には、さすがに効かないでいた。

「ええ〜!事故?お母さん大丈夫なの?」
「大丈夫よ」

母親にニコっとそう促されると「お大事にね?」と、そっと彼女は、僕にそう囁く。・・心配されなくとも、お前のお世話にはならないよ。

退院後、とりあえず家に帰宅した僕は、自室のベッドにごろ寝した。

「・・・」

特に、何もすることがない。
ただ天井を、見つめていた。

これは・・そう・・そう。
毎日の「日課」みたいなものなのだ。

ひとまず安心をしたせいか、僕は「ふわあ」と大きくあくびをかきながら、毛伸びをする。

「明日からまた学校か〜・・」

ようやく日常に戻ってきた。

と同時に、気だるさを感じる毎日のその習慣に、ポケ〜っとしながら見る、動き続ける時計の針は、その鼓動をやめない。

午前、11時20分。

「暇だし。寝るか!」

そう決め込み、体制を横に変え、目を瞑り、黙々と寝る準備に取り掛かった僕は、明日からは、また気だるいが、健全な男子高校生活に戻れると信じて、一人祈りを捧げた-

「陽ノヒカリは妖しくて-」終

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