【擬人化】モンスターハンター/安寧

「そういえば、お嬢も新しいドレス欲しいよね。私が作ってあげようか?」
「あら、嬉しいですわ。よろしければあの娘の分もお願いしますわ」
後ろから楽しそうな声が聞こえてくる。今話している綺麗な2人の少女は共通点がある。
それは「古龍級生物」と呼ばれる強大なモンスターであること。人の身体や声を手に入れた今は信じられないが。
2つ、仲がいい。女の子同士でちょっと目を背けたくなるような戯れを見せる時もあるけど、優しくてとても思いやりがあって話していて面白い2人組。
「みんなは私が異質だとは言わないんだね。いつまで私を嫌わないかな・・・」
細々した独り言は誰にも聞こえなかった。

「ヴァル君、ちょっと来て」
「え?」
「いいから」
いつになく真剣な彼女に気圧されて狭い路地に入った。
「一体なんだ」
急にそんな行動を取られたら混乱する。
「怖いの」
「それは、どういう・・・」
事だ、と。続きは言えなかった。
病んだ眼をしていたから言えなかった。
「お嬢様も、お茶を濁すから君に聞く。なんでそこまで私たちに尽くすの?ハンターでしょう」
彼女が言う狩人、という言葉に明らかに強い感情が乗っていてた。
私が怪しいって?いつも本音を言ってきたつもりだったけど、本人に信じてもらうしか無いのに。
「今まで私と接してきた人間はそんなお人好しじゃ無かった。なにか特別な理由があるの?」
私はみんなと世界の架け橋になるために楽しく暮らしたいだけ。
「君が一番信じられるから言うけど、私は日常を君の同業者に壊された。いるだけで迷惑だからって、集落を焼かれ、同族や家族、姉妹を殺された。遺体も見せしめにされて、全部お前がしてきた勝手だって人間は言っていた。
他の娘の苦しみを、悩みを聞いてあげているうちに人間はそんな生き物なんだって思った。だから、誰かが人間と戦っていれば魂がそれを感じ取った」
わかっている。私は偽りない気持ちでみんなに接してきたつもりだ。
「だから人間を殺そうとした。狩猟をできなくして追い払おうとした」
知っている。ここにいるのは辛い思いをした仲間がたくさんいる。
「そしたら人間が、私のありもしない噂を流して、私を外道だと罵った」
聞いている。家族の悩みなら聞いてあげたい。
「ごめんね、暗い話ばっかりで」
「大丈夫。そうして話してくれることが嬉しい。不安をため込むといいことないから」
「ありがと。・・・君以外の人間はもう二度と信用しない。
君が一番だよ、ヴァル君・・・でも」
私は普段明るく優しい彼女のいつも通り美しく澄んだ声を聴いた。
「本当は君が好きだから束縛して私だけの物にしたいけど、離したくなくて、他には染まらないで欲しいけど・・・今は貢ぐだけで我慢してあげる」
最後にとびきり恐ろしいことを言ってみんなの所に戻って行った。怖くなってきたから日ごろから閃光玉をいくつか持っておこうかなと決心した。
「お待たせ」
「・・・?」
可愛く首を傾げるディアブロスと優しく見守る2人、と
「お嬢、ちょっと・・・」
そっと耳打ちしたように見えた。
そしてその後、表情が曇ったのを見逃さなかった。
何かあるのなら、力になるよ、そう言ってあげたかったけどそんな雰囲気じゃなくてもどかしかった。


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