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抜けたくないトンネル




「ようやく抜けたね」

誰かが讃えられている
難しいトンネルを抜けたらしい
抜けれておめでとうと、讃えられている


私は、
抜けれない
抜けれない..
何だか私は、とうてい抜けれない気がする
ずっとそう思っていた


誰かは"抜けた"

それは、それを抜けたら
素晴らしい世界が待ってるというトンネル
人生が変わるというトンネル
そのトンネルは幸せへの不可避の通路


それが抜けれないなら、幸せはないね、と。
そこで負ける奴は弱い奴だね、と。
弱い、意気地なし、根性なし..
とにかくそのトンネルを抜けれる人が素晴らしく
抜けれない人は無茶苦茶に非難される



その言葉を間に受け
抜けれない自分が弱いんだと思ってた


でも、違った


私は、抜けれないんじゃなく
どうしても抜けたくなかった

その先を行けば、もう戻れないから
失ってはいけないものを失ってしまうから


『行きたくない』
『行かない方がいい』

ずっと、誰かが
行かないでといってくれていた

抜けた先
何となく欲しいものが待ってる気がする
そう思うものの、なんだかぼやぼや
ずっと暗雲が立ち込めてる、そんな感覚



今、分かった。

"抜けた"ことを賞賛されてる人
抜けた先にいて賞賛している人達が
何に笑っているかを見て
分かった


抜けた先は、
自分にとってどんな都合の悪いことだって
自分の都合の良いように解釈する
そんな自分になってしまう世界だと

人の苦しみを踏みつけ通り過ぎ
そのことにも気づかず
笑って話している
そんな自分の不気味さに
何の違和感も覚えずに


本当に危なかった

帰ってきてよかった
よかった..じゃない
帰ってこれたことが、まだ、ましだった
ただそれだけだ


もう二度と近づいてはいけない
行けば帰って来れない

決して渡ってはいけない
あの世とこの世を隔てるトンネル

あぁ確かに
人生が変わるトンネルだ


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