渋柿って、木から落ちるほど渋いのよ

もう20年以上も前の話になるが、一生懸命勉強してソムリエの資格を取ったとき、生まれて初めて「収斂(しゅうれん)作用」という言葉を知った。

タンニンが、舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して変性させることを「収れん作用」と呼ぶ。渋味は厳密には味覚の一種というよりも、このタンパク変性によって生じる痛みや触覚に近い感覚だと言われており、このため渋味のことを収れん味と呼ぶこともある。(by Wikipedia)

赤ワインの「渋み」である。

子供の頃住んでいた家の前に大きな土地があって、そこに多分20本以上の大きな柿の木があった。
あれは「柿畑」だったのか、わからないけど、誰もその柿を取らなかった。
カラスも食べない。
秋になるとたわわに実ったオレンジの柿が、それはそれは立派でいつも見上げていたんだけど、ある日どうしても食べてみたくなった。

柿の木を見たことのある人なら分かると思うが、
登らなくても子供の身長で届くところに実がなっている木も沢山ある。

でもその時のワタシはどうしても登ってみたかったらしい。

木に登って、大きなおいしそうな柿をひとつもぎ取ると、
その場で、ガブリとかぶりついた。

強烈なタンニンが、ワタシの口の中で収斂作用を引き起こし、暴れる。
毒でも食べたかと思ってワタシは木の上でパニックになり、
結果、ぽとりと木から落ちた。

とても表現できない、口がどうにかなってしまったのかと、
その場に柿を投げ捨てて、一目散に家に向かって走った。
(2mくらい落下したはずだけど、口の中が大変すぎて、落ちた痛みなどは全く感じなかった。)

母は、「それは、渋柿食べたんやねぇ。」と笑ったが、
あの衝撃は食べた人にしかわからないと思う。
調べてみると、未熟バナナ、イナゴマメと並び、青果三強渋味成分らしい。

まったく、笑い事じゃない。

あれから随分時間が流れた。
昭和から平成になり、そして令和になった本日、
近所のスーパーに「渋柿」が売っていた。

咄嗟に、
どこのアホが渋柿買うねん。(関西弁w)

と思いながら、買ってみたw

「焼酎漬けにした甘い渋柿です。」と書いてあったからだ。

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渋柿に含まれるタンニンは水溶性のため、口の中で唾液とまざり、
強烈な収斂作用を起こす。

アルコールから変化してできる「アセトアルデヒド」(お酒を飲んだときに顔が赤くなったり、動悸や吐き気、頭痛を起こす原因)がこのタンニンと結合し、水溶性じゃなくしてくれるため、焼酎につけると「渋み」が消えるらしい。

恐る恐る口に運んで、その甘さに思わず笑顔がほころぶ。

40年前のワタシに教えてあげたい。
毎日毎日大好物の柿を
きっとお腹いっぱい食べさせてあげることができただろうに、と思う。

励みになります。個別にお礼のメッセージさせていただきます。