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ファッションとTシャツと私

ファッションについて、何か書くのであればなににしようか?そう思っていた時に川久保玲さんのこの言葉を思い出した。
「ファッションで成功できる人間は3種類、ブルジョワかゲイ、もしくはユダヤ人のいずれかでなければいけない。」
今のご時世だったら、完全にアウトな発言の気もしてるが、長年ファッションのそれも、世界の最前線で活躍してきた彼女が言うのだから間違いない。ただ、僕はこの発言には4番目と5番目の回答が隠されている気がしている。それは、圧倒的なセンスを持っている人と飽くなき好奇心と追及力を持っている人、だ。

自分は曲がりなりにも、ファッションの世界に身を置き、自分が目標にしていた”歴史に残る洋服”を作るという想いを実現するために、死に物狂いで働いた。周りにはゲイもいたし、ブルジョワもいたし、それにユダヤ人並みに商売の上手い奴もいた。そんな彼らでも成功出来ずに挫折して辞めていく。先ほども言ったような4番目、5番目の才能を持った人間も何人もいたし、自分もそのうちの1人だと信じていた。それでも成功できるのは一握り、仮にうまく行ってもそれを持続させていくことに精神、肉体共に疲弊して擦り減って行く。これがファッションの世界だ。それ故に生み出されるコレクションや、そこに生まれるブランドの哲学は儚くも美しく、だからこそ、人々を魅了するのだけれども。

そんなファッションの世界を僕が去ってから、早2年近い月日が流れようとしている。
あの頃からファッションの楽しみ方も少し変わってきて、今は自分のライフスタイルと向き合って、この歳にして初めて自分らしい洋服が選べるようになってきた。
最近はアウトドアが趣味になってきたので、専らアウトドアブランドばかり着ている。昔、古着屋のおっちゃんから、ライフスタイルと洋服についての説教地味た持論を聞いた時は、適当に相槌を打って聞き流したものだが、今になって初めて、ライフスタイルや自分の思想と洋服のリンクがこんなにも心地いいなんてことに驚いている。

そんな自分の最近のお気に入りは、プリントTシャツと柄シャツだ。何故なら、そこに自分らしさ、つまりキャラクター、もっといえばその人のアイデンティティが出るから。だから、僕はプリントTシャツや柄シャツを選ぶ時には、自分自身の名刺のデザインをしていると思いながら選ぶことにしている。人からどう思われたいのか?このTシャツやシャツを着た自分を見て、あの人はなにを思うのか?そして何より、自分はどういう人間でありたいか?服を選ぶこと=人生を、自分自身を選ぶことだと思って、最近の僕は洋服を選んでいる。(それで死ぬわけでもないので、そんな大それたもんでもないが笑)

今、ファッション業界は未曾有の危機に直面している。それでも、この業界には確固たる意思を持って、何かを成し遂げようとする人たちが沢山いることをどうか忘れないでほしい。挫折しながらも、まだファッションを愛する人間として、そして、ファッションの可能性を信じている一個人として、ファッションを通して得る感動を、そして、そこから生まれる自身の信念やアイデンティティを築き上げる経験を、どうか次の世代へ絶やすことなく繋いでいけるよう心から願っている。

大事なことはファッションが教えてくれる。
そう言う人生で僕はありたい。

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