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重要事件の現場

明けましておめでとうございます。

最近まで記事の投稿や推敲を担当している親族が多忙でなかなか投稿できませんでした。

投稿が滞ったまま新年になってしまいましたが、私は元気にしていますし、記事も執筆していますので本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて。新年から物騒な話ですが、元警察官の話。

物騒な話の他はありませんのでご容赦を。

本部鑑識課指紋係勤務時に経験した話。

現場のドタバタぶりと事件発生に順番はないという内容。

昭和から平成になりかけの頃、朝一で某地方都市の住宅街、知人が訪問、応答なく玄関も半開き、不審に思い、中を見たら血の海、殺人事件だと通報。

県内無線はこの件でもちきりとなる。

先着PCから報告が入電、家族5人が死亡との続報、刻々と現場からの報告で一家全員の無理心中の可能性高しの方向へ。

しかし、万が一殺人事件となるやも知れずで本部機動鑑識班・直轄警察犬等が出動。

遺体5体もあれば、現場鑑識に時間がかかるのは当然の成行、朝出た本部班、ようよう夕方に終了し警察本部に向け、帰る途次、またもや殺人事件の通報、こういう時はなぜか重なる。

さすがの本部鑑識班も内心はまたかよと言う心理になるのは当然。

本件は朝一の事案と違い、首にビニールひもが巻き付いており、殺人事件の可能性極めて高し。

状況は民間アパート居住の家族が仕事を終え帰宅、台所で発見通報してきたもの、職人ぞろいの本部鑑識班でも朝から夕方まで飲まず食わずはきつい。

それでも本部機動鑑識班、舳先の向きを変え、休みもとらずに現場に直行。

テレビのようにははいきません。見かねた鑑識課のお偉いさんからデスクの者にも応援に行けとお呼びが掛かる次第。

で本職と足跡係の係長等が別便で現場に直行。

現場のアパートは勿論入り口は一つ、そこに刑事・鑑識課員が殺到、見ただけで現場破壊行為と言う感じ。

所轄警察署の鑑識係長、ぶぜんとした表情で黙々と現場作業中。

刑事等入れ代わり立ち代わり出入りし、とにかく蜂の巣を突いた有様。

本来なら重要事件現場立入要領等で必要最小限の人数しか入れないもの。

常日頃から田舎警察で重要・凶悪事件が少ないためか全員舞い上がった状態。

その渦中、現場鑑識作業開始、現場台所のテーブルに皿に乗せたコーヒーカップがあり、来客用と推定され、大変重要な資料。

丁寧な指紋検出等鑑識作業が行われなければならない。

本部班の職人達も手ぐすね引いてその作業を開始しようとした矢先、本部刑事部の一番偉い人から「犯人は割れた、被害者の知人、前科有で指紋もある、指紋がコーヒーカップから出れば逮捕状が出る、コーヒーカップを本部に持ち帰り、早急に対照合致させよ」というご指示。

いきなり、トンビが油揚げさらわれたような顔の本部鑑識班。

ですが指示命令は絶対です。コーヒーカップを特使に預け、別の作業を黙々と実施。

数時間後、現場作業終了。

疲れ切ったその頃、本部からコーヒーカップの件で報告あり、結局、指紋自体検出できず、さらにその男にはアリバイあり。

なんてこった。振り出しに戻る。

その後、あれやこれやで別人を捕まえましたが(これはこれでひと悶着あ

り)「捜査は無駄の積み重ね」を実践した一日でした。

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