見出し画像

漢達の低弦2022札幌 終了!!

9/25に行った『漢達の低弦2022札幌』、会場の札幌市教育文化会館小ホール には200人を超すお客様が来てくれた。お越し頂き有難うございました!道外から駆けつけてくれた方も沢山いた。赤ちゃんや子供達も沢山来てくれて、客席での演奏の時にコントラバスに興味津々で寄ってきてくれたりして可愛いかったなぁ。

学生の頃に始めた『漢達の低弦』。その時はメンバーが男のみで、熱くて歌舞いたベーストリオ(ピアノとドラムもいた)をやろうぜ!というノリで始めたのでこのような名前がついた。でも性別は全然関係なくて、大塚恵は学生時代に参加していて、今回も京都から駆けつけてくれた。新たにMIO 、斎藤里菜、石川恵美の3人も加わってくれた。

北大の仲間達(北垣響、堀江大輔、ピアノは石田幹雄、ドラムに北市幸佑)と始めた低弦。2003年10月にはゲストで金井英人さんを招いている。まず一曲目で俺のベースの尾留め(コントラバスのテールピース(弦を引っかけてる下の黒いところ)と楽器本体を繋いでいる重要なワイヤー及び金属の留め具)が壊れて、駒は落ち、バラバラと弦はたわみ、その後演奏不可能となった。会場のジェリコには店のコントラバスがあったので、それで何とか乗り切った。金井さんとは2008年にも共演している。あの時は、柳真也さんが刀(ベースを弾く弓)で切られて倒れるような寸劇をした記憶がある。金井さんとの舞台は、戦が起きたり、盗賊が来て争いが起きたりして物騒なんだけど、全員が驚愕するような展開に金井さんが導くので、最後にはなんともいえない感動に包まれる。居合の達人みたいな人だった。

2004年には齋藤徹さんと井野信義さんをゲストで招き、徹さんの楽曲を多く演奏した。それまでがジャズ的なアンサンブル、アドリブや個々の発想、瞬発力で音楽を作ってきていたので、それとは全く異質な徹さんの表現は衝撃的だった。コントラバスという楽器自体を様々な角度や文化圏、発想で捉え直さなくてはならないと感じた。

弓、ピチカートだけではなく、棒、ベークライト板、すりこぎなどでも音を出し、ギターのカポ、箏の柱(じ)のような音程を固定させる器具も考案していた。

即興演奏、マレー、台湾、韓国、琉球などの文化圏を感じるオンバクヒタム(黒潮)プロジェクト、タンゴ、ブラジル、フォルクローレなど南米音楽、ダンス、舞踏など今まで知らなかった世界を徹さんの体験や視点で伝えてくれた。

井野信義さんは徹さんや俺たちみんなを理解し、音楽を支え、推進させてくれる素晴らしいベーシスト。スイッチが入るとめちゃくちゃアバンギャルドなプレイでびっくりしてしまう。お二人は4年間低弦にゲストで来てくれた。10人のベーシストと石田幹雄とで北海道ツアーもした。物凄い体験だった。

その後も徹さんとは2人で様々な土地で演奏したり、2011年の東日本大震災の頃に結成された【弦311】というベースアンサンブルで、アメリカロチェスターでの国際ベーシスト協会のコンベンションにも出演した。一週間世界中のベーシスト達の演奏を聴いたり、ワークショップを受けたり、共に演奏したりした。この時の仲間である田嶋真佐雄、田辺和弘とは『The Bass Collective』として活動している。

3年前に徹さんは癌で亡くなってしまった。今回の舞台では徹さんの追悼演奏をしたかった。

第二部の一曲目は、ステージ上、花道、客席とホール全体に奏者を配置して、徹さんの楽曲『糸』と『インビテーション』を演奏した。特殊な響きのチューニングで、ここではないどこかへ行ってしまう感覚に陥る。コントラバスという楽器をとことん見詰めていってこういう音楽が生まれる。本当に凄い名曲だと思う。糸が終わるとみんなに会場を歩きながら演奏してもらい、ステージ上に集合しインビテーションを演奏した。この曲の印象的なメロディを、左から右へ、中央から左右へと音の波紋が拡がるようにアレンジした。

本編ラストの『僕は多くの河を知っている』の怒濤のスティックアンサンブルも徹さんの影響が大きい。参加メンバーの半分は15年前の低弦ツアーで共演しているが、新たに参加するメンバー達ともこの感覚を共有したかった。熱帯雨林の密林から、最後はお祭り状態で叫んでいた。

音楽ライターの齊藤聡(さいとうあきら)さんが執筆した齋藤徹さんの本がある。改めて唯一無二のコントラバス奏者、音楽家だと思う。是非読んでみてください。
(https://www.amazon.co.jp/齋藤徹の芸術-コントラバスが描く運動体-齊藤聡/dp/4910065091)

本番数日前からメンバーが集結し、それまで3.4人でやっていたリハが急に活性を帯びてきた。豊田健さんが流行病で参加出来ず、ニック•トラディフさんが急遽参加してくれた。めちゃくちゃ真剣に練習してきてくれて、リハで一緒に演奏して伝わってくるものが多かった。すぐに彼を信頼して難しい重要な幾つかのパートをお願いした。

本番2日前にやっと全ての曲が通せるようになった。リハを重ねていく中で、各メンバーの音とフレーズが入ってきて、何をすべきかということが明確になってきた。本当にギリギリまでアレンジや構成の変更があった。みんなで曲を創り上げた感覚がある。

生誕100年を祝うミンガスメドレーのラストに、Weird Nightmareを持ってきた。始めは自分の意図がはっきりとは分からないのだが、これだと思ったのだ。本番数日前までアレンジも決まらない、誰が弾くのかも明確ではなかった。リハを通して、北垣響と斎藤里菜さんの2人をフィーチャーする事に決めた。すると自然と他のパートが何を奏でるか見えて来た。冒頭や中盤は、俺と北垣のデュオにした。この時間がとても良かった。色々抜きにして没頭できる瞬間。原点回帰。北垣の音には強い意思が感じられたし、リハーサルでも人一倍想いを感じた。斎藤里菜はクラシック音楽で培った技術もありながら、ミンガスをテーマにライブを行ったりソロライブもやっている。札幌のジャズ、音楽シーンに欠かせない存在になっている。彼女の音もこの曲の要だと思った。短い準備期間でコントラバスで弾くのは容易ではないパートを歌い上げてくれた。

本番前日、稽古場から各々帰ったり、飲みに行ったりしてる中、大久保太郎と石川恵美さんの2人はずっと練習している。俺も加わり気になる箇所をさらい、最後にセッションまでした。

太郎は弓を弾けるようになりたいと習いにきたことがある。教えられるほど上手くないしアカデミックにやってきてないので、札幌時計台でのデュオコンサートを企画した。コレッリのラフォリアやピアソラの鮫など、2人でやれる様にアレンジしたのだが、自分がバイオリンパートを弾かなくてはならなくて、めちゃくちゃ苦労した。一緒に猛練習して本番に臨む事となり、教えるということは教わること、共に練習することなんだなと実感した。

石川恵美さんは、北大ジャズ研の後輩で前から知っていたのだが、Facebookを見ていて、久保タクマさんとセッションしている音を聴いて、これだ!と思い声をかけた。タクマさんは20歳くらいのころ161倉庫や、ギタリストの籠島学さんがやっていたライブハウスで対バンライブをしていた。素晴らしいブルースシンガー、ギタリストだった。タクマさんとジャズのセッションしてる動画から伝わる石川さんのブルースのフィーリング、グルーヴが素晴らしいと思って声をかけた。そして、このライブにかける彼女の真剣な気持ちはリハで凄く伝わってきた。一緒に演奏出来て嬉しい。

札幌のジャズシーンに欠かせない存在の柳真也さん。井野さんと徹さん、金井さんとの低弦も経験している。場を明るくしてくれるムードメーカーで、ベーシストとしてとても信頼している。コントラバスで弾くのはまじで大変というところを柳さんは笑顔でばっちり弾いてくれる。

ラテン音楽やクラシックも演奏しているMIOさん。室蘭から来た当初から突き抜けた音を出してるなと思ったけど、アルコの音がしっかりしていて、今もコントラバスと向き合っているのがよく分かった。echoes of moonlightの終盤のソロをお願いした。周りの音も厚くなるので、聴こえる音で歌い上げていくのは、強い気持ちが必要だ。強い気持ち、強い愛、素晴らしかった!!

東京に在住のメンバーの堀江大輔、彼こそが低弦オリジネーター。今や全国規模のジャズのライブ、セッションの情報サイト『今日ジャズ』は彼がやっているのだ。1人でよくこんな凄いサイトを運営してるなといつも不思議に思うのだが、本人は、そこまで大変じゃないんですよーと言って飄々と熱いベースを弾いている。アレンジなど変更する度に、彼がLINEなどを駆使してアーカイブ化して、みんなに伝えてくれた。おかげでギリギリまで音楽に集中出来た。抜群のスイング感。惚れ惚れするジャズベースを弾く。

もう1人東京から参加の多田信吾。学生の頃からの彼の飛躍は凄まじい。猛者揃いの高田馬場のイントロに通いセッションを重ね、ベース技術を高めている。echoes of moonlightのソロめちゃくちゃ良かったなぁ。隣で弾く秋田祐二さんとの強烈タッグも素晴らしかった。リハが終わり飲みに行くと、多田が「明日もあるんだから1時間だけですよ!」とみんなに言うんだけど、1時間後に「最後の乾杯がまだだから」と言うと、みんなに酒を注いでくれて、そしてしっかりと飲んで、その繰り返しが朝まで続く。ジェリコで飲んだの楽しかったなぁ。途中から記憶薄いけどさ。

関西京都から飛んできてくれた大塚恵。めちゃくちゃ良い音出してた。美しいフレンチのベースからは重みもあるが抜けの良い音がした。そんな音を愛おしいと思ってるのも伝わるし、子育て真っ最中の中でも関西のジャズシーンで頑張ってるんだなぁって思った。日常の生活があって、音楽があって、そして、ベーシストが集結するこんな特別な日もあって、彼女が来てくれたのがめちゃくちゃ嬉しい。そして、演奏も存在も歌も素晴らしかった。

ピアノの本山禎朗の存在もとても大きかった。コントラバスの音を活かしながら絶妙なバッキングと、所々でフューチャーされるもっちゃんのソロ。1番リハに多く参加してくれた1人でもある。もっと休んでも大丈夫だよといっても、頑なにリハに来てくれて、真剣にこの公演に向かいあってくれた。楽曲の意図を掴み、全ての音が音楽的で素晴らしかった。頼れる大きな存在だった。

札幌のジャズに熱狂を感じるのは、この人のおかげだと思っている。秋田祐二さん。通称カニさん。そして、パートナーである勝子さん。2人の存在はめちゃくちゃ大きい。暖かく、そして厳しく見守ってくれている。カニさんのコントラバスから出てくる音は信じられないくらい大きい。物理的のみならず全身全霊の音が心にダイレクトに響いてくる。みんなベーシストの低弦の中でもさらにベース。低いぜ!!

勝子さんは、音楽に集中出来る様に全てやってくれた。毎日のリハに美味し過ぎるお弁当やスープまで用意してくれた。食べると元気になって深夜までリハが出来た。リハに専念出来る場も用意してくれた。勝子さんはGAIAという会社(今回の制作などは全てお願いした)と保護猫活動をやっていて、ニャン友ねっとわーく北海道(https://nyantomo.jp)の方々が、低弦ライブを手伝ってくれた。本当に有難うございました!猫の命を救う活動を勝子さんから聞くと、日本が抱える様々な問題が見えてくる。これについては別に取り上げていきたい。ニャン友の方々の猫への無償の愛、命の大切さを思う気持ちには頭が下がる。勝子さんが関わると、とにかく半端なく熱い。魂が燃え盛る。だから仕事も保護猫活動もジャズも低弦も熱狂するのだ。

宣伝に協力してくれた札幌の沢山のジャズクラブ、ライブハウスの皆様、会場まで来てくれたという話も聞いてます。終わってからもバタバタで挨拶が出来ず申し訳ないです。有難うございました!

関わった全ての人とお客さん達、メンバーのみんな、本当に有難う!!また、こんな日を作っていきたいと願っています。

漢達の低弦 2022 札幌
~コントラバス12台とピアノによるコンサート
2022年9月25日(日) 
会場:札幌市教育文化会館 小ホール

【セットリスト】
1st
Laplace (瀬尾高志)
echoes of moonlight (瀬尾高志)
Charles Mingus Medley(編曲 瀬尾高志)

2nd
糸ーInvitation (齋藤 徹)※舞台、花道、客席全体に奏者を配置しての演奏
Aldan_Maadyr (瀬尾高志)3カルテットに分かれての即興
僕は多くの河を知っている Negro speaks of rivers (瀬尾高志)

アンコール
At.IKA(秋田祐二)

[出演]
コントラバス
瀬尾高志
秋田祐二
Nick Tradif
柳真也
北垣響
大塚恵
堀江大輔
多田信吾
大久保太郎
MIO 
斎藤里菜
石川恵美

ピアノ 本山禎朗

主催:Mapleko
協力:GAIA

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?