SとR 第四章 Sの青年が戦地から戻る
私はふるさとに帰る
海に出てから船はよく揺れたが、数日経った頃にはH町に到着した
私は港から駅行きのバスに乗り、本州を南下する汽車に乗った
ふるさとまではあと数日かかるようだ
およそ4年ぶりの帰郷であって、戦争に負けた後この国に一体何が起きて、いまどういう状況なのかはよく分からないし、分かりたくもない気がする
例えばさっき私が通ってきた海は、いまは一体どのような名前で呼ばれているのだろう
ぼんやりと問いが浮かんだが、それに対しての何かを考える力は残っていないようだった
私は空