見出し画像

画面アスペクト

ここ数年公開されるアニメーション映画が増えましたが、それに合わせてシネマスコープ、いわゆるシネスコサイズの画面アスペクトを使用した作品も増えています。「シネマスコープ」という言葉自体は20世紀フォックス社の商標名なので、単にスコープ、スコープサイズと呼ぶところでしょうが、業界内でも一般的にはシネスコと呼称されることが多いです。

スコープサイズは映画で多く使われるVISTA(アメリカンVISTA)や地デジ放送のHDTVのフォーマットよりも横長で、現在の映画のデジタル上映の標準では縦横比が[ 1 : 2.39 ]になっています。地デジの放送が約[ 1 : 1.78 ]ですから約1.33倍とかなり横長になります。

よく使われる画面アスペクト

映画らしい画面サイズということもあって採用される機会も増えていると思いますが、横長になる分、構図や配置もHDTVやVISTAとは違った効果があるため、演出や画作りにも手慣れたものとは違った配慮が必要になります。

そもそもスコープサイズは広い画角を利用した広大な景色や遠近感を強調した奥行き表現などに効果を発揮します。引きで配置した人物の距離感や広い空間を利用した演出の幅も広がります。人物に寄った場合も周囲の空間が広いために、周囲の環境や状況を自然に配置して見せることも可能になります。
また縦横比2倍以上の比率を持つ画角は上映時に視野を画面で覆うことでの臨場感と客観的な視点をもたらす効果もあります。

逆にワイドな分、縦横のラインが強調される傾向が強いので、映るものの水平垂直ラインの配置はシビアになってきます。また画面上での配置でアニメーションで多い人物の顔のアップを並べた構図などはかなりの圧迫感を感じます。他にも縦横比が長くなる分、相対的に上下が狭くなるため、よく使われる斜めの構図や俯瞰、アオリの構図が難しくなります。同様に激しい縦方向のカメラワークも見える上下幅が狭く見える分難しそうです。

映像効果としてはアナモルフィックレンズで撮影した体の光学的効果を付加する場合もありますが、そこまでこだわった作品はまだ多くありません。

最近はTVでも初めからスコープサイズで制作されている作品も出てきています。

当然放送時には上下に黒みが入ったレターボックスになるので小さめのモニターで見ると少しもったいない気もします。
作品中の特殊なシーンでの使用やオープニングやエンディングでの採用も増えているので、意識されているのは間違いないと思います。とりあえずクロップでも横長にすることで映画的雰囲気が出るので、演出の一つとして使われるのはわかります。
ただし作品全体を通して使用するとなると先に書いた通り、レイアウトから普通とは違う考えで納めていかなければならないので、やたらとスコープサイズにすればいいというものでもないと思います。

画面アスペクト一つとっても作品に合う合わないはあるので、慎重に検討していただきたいところです。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?