Kスタイルの解体新書

はじめに

 皆様、ご機嫌はいかがでしょうか。私は、今年新卒で入社した会社を7末に退職予定の者です。素晴らしいご縁を頂き、8月からは新しいステージへ活躍の場を移すこととなっています。正直に申し上げますと、私はネガティブな理由での転職となります。普段、心を燃やしながらエッセイを執筆する私ですが、本作では現職場が抱える問題点について考察します。

新卒どころか社員が定着しない環境

 私の会社は、新卒の定着率が驚くほどに低いです。それだけではありません。中途採用のミドルクラスの社員さんの定着率も低いです。毎年、全社員の4~5分の1の人数に当たる新卒を採用していますが、その中で生き残る社員さんはほんのひと握りです。そして、私や一部の方を除けば優秀な社員さんから辞めていきます。それはなぜなのでしょうか。結論から申しますと、組織の機能不全にあります。会社とは、仕組みです。何かを市場から購入し、加工等で価値を付加して再び市場へと財やサービスを流通させます。ヒト、モノ、カネ、情報の経営資源を用いて、利益を生み出すフロー全体を仕組み、つまり会社と呼びます。すべての経営資源は、人によって動かされますので、ヒトが経営資源の中で一番重要だということは容易に想像がつくでしょうか。私の会社でも勿論、人が中心となって会社が仕組みとして機能しています。しかし、一番重要な経営資源は毎年のように流出しています。採用数以上に人は流出しており、歯止めが効いていません。私の会社が属する業界は、人の入れ替わりが激しいと言われます。そして、私の会社では、異次元の離職を「入れ替わりが激しい業界だから。」の一言で片付けている点に大きな問題があります。もう一度言いますが、会社は仕組みです。ネガティブな理由での退職が続いているにも関わらず、組織としての改善がされていません。現場の根性によって会社が成り立っている状況です。例えば、アクセルを踏んでも自動車が走らなかったとします。シフトレバーはニュートラルに入っています。走らないのは歯車のせいでしょうか。それは違います。ニュートラルに入った状態では、自動車が走るという目的に対してコミットしない仕組みになっていたため、走らなかった。歯車は機能していたのに、動力がタイヤまで伝わらないから走らない。それを歯車のせいにして、歯車をもっと働かせよ、そういった思考をしているのが今の会社の現状です。仕組みを変えることができる会社というのは、シフトレバーをドライブに入れることができる会社です。問題点は歯車、つまり社員個人のミクロなものではなく、仕組み全体のものなのです。

優秀な社員ほどすぐ辞める理由

 先述の通り、私や一部の方を除き、優秀な人から会社を辞めていきます。優秀な社員さんは、違和感を抱くとすぐにアンテナを張ります。たくさん人が辞める環境というのは本来「異常」です。私の周りには、それを「慣れ」で片付けてしまっている社員さんがたくさんいます。慣れてしまうと、思考は停止します。しかし、優秀な社員さんはアンテナを張って、情報を集めます。この会社を鳥瞰すれば、会社の仕組みの機能不全に直ぐに気付きます。組織として仕組みの改善にも取り組みません。更に、情報は社外からも入ります。一般的な会社の常識と、あまりにもかけ離れた弊社の常識。自分自身のキャリアを考えると、あまりにまずい状況だと気付き、鳥瞰できる優秀な社員さんは自身のキャリアを守るために退職します。それを目の当たりにして、上長は退職理由を個人レベルのものだと思考停止し、本質に触れないまま同じことを繰り返しているのが今の会社です。

・社員が減ったにも関わらず、業務量や目標は変わらない。
・社員が減ったから、すぐに新しく補充する。

前者は、退職理由を個人レベルの問題だと考える会社の対応で、後者は会社を「仕組み」として捉えている会社の対応です。我々は、この会社で、個人の努力で何とかするしかないと考えて仕事に励みますが、それは「自分を追い込む」ということなのです。経営陣は、仕組みには目を向けません。コンサルが現場のヒアリングをしたことがあるでしょうか。経営陣が現場に入ってみたことがあるでしょうか。会社の方針は、謎に包まれた会議で決まり、私達はそれを押し付けられます。度々変わる決まりには、私達の何もかもが反映されていないため、全くもって効力はありません。

マイナスの感情は強烈に残る

 人間は、嬉しかった感情は数日で冷めてしまい、マイナスの感情はずっと残るそうです。私自身、何かで褒められた感情よりも、募集要項よりも給与が低かった時の怒りや悲しみ、諦めの感情の方が強く、もはや定着しています。長期間残るということは、複数のマイナスの感情が重なり合うということです。会議で感情論で詰められる先輩、ボーナスが出ない先輩。先輩の姿と将来の自分を重ね合わせ、不安な感情になり、それらが重なり合って、心のキャパシティには負の感情が蓄積していきます。私は、この会社にいるだけで私のアイデンティティを失うと考え、退職という結論に至りました。

慣れという悪

 私が声を大にしていいたいのは、この環境に慣れてはいけないということです。学生時代を思い出してください。この会社の現状が分かっていて、入社したでしょうか。僕なら絶対にしません。学生時代なら選択肢が他にありました。そして皆さんにお伝えしたいこと。それは、可能性は今でも無限に広がっているということです。今一度、自らのキャリアを考え直してください。私は現在の環境に身を置き続けることで、キャリアや人間性にまで悪影響をしてしまうと考えました。私が会社を変えるということはできませんし、私の会社の経営陣は全員同じ名字です。つまり、上が入れ替わることはありません。仕組みは変わらないまま、きっと同じようなことを繰り返し続けるでしょう。そんな環境を「当たり前」に思ってはいけません。私は、今の環境を当たり前だと思いたくないとの思いを抱え、不利な転職活動を乗り切って、自らの夢を叶えられるような会社とのご縁を掴み取りました。私にもできたので、皆様なら簡単に掴みとれます。ぜひ諦めることなく1歩を踏み出してみてください。

あとがき

 正に悪口大会のような作品となりましたが、皆様の中で一つでも気付きがあれば嬉しいです。最後にお伝えしたいことは、「私は素晴らしい人達に恵まれた」という点です。煩くてデリカシーのない私を煙たがる方もいらっしゃるでしょうが、皆様に優しくしていただきました。ただ、仕組みとしては厳しい形になっているというだけです。悲しいのは、それがほぼ不可変であるという点に尽きます。私は、活躍の場を移しても、皆様の発展を心より願っています。無理はせず、皆様もぜひ思考停止に陥る前に自分の頭で考えてみて欲しくて作品にしました。


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