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小さいわたし

『小さいわたし』

益田ミリ (著)
発行:ポプラ社

―ほっぺたを真っ赤にして
空を見上げていた小さいわたし。
いっしょうけんめい遊んでくれてありがとう。
キミのおかげで、大人になっても
ときどき幸せな気持ちになれるんだよ。―

「夏休み」ということばは
大人になっても大半の人にとって
特別なことば。
「夏休み」のことを思うと
今どんな感じがする?
それから、どんな記憶が浮かびますか?
私は、子供たちとすごす現在の夏休みと同時に
こどもだったころのあの夏休みに
瞬間的に、でも一瞬で戻ったりします。
お母さんとお父さんと兄弟と毎日一緒だった
あの日々。
夏休みに入ったときの
あの何でもできそうで
眩しくて仕方ないワクワク感。
7月31日くらいに
「あと1か月なんて!!」と夏が終わる日を感じて
なんだかやみくもに焦ったあの気持ち。
指を折りながら、何をしていたか
一日ずつもう一度振り返ってみたこと。
ひまをもてあまして3人兄弟で「おうちごっこ」をよくしていたこと。
家のおもちゃ箱や動かせるものを動かしに動かして
自分たちだけの秘密のおうちをつくることも
何かの役に入り込むのも好きだった。
今思い出すのって、不思議なことに
旅行に行った特別な記憶じゃなくて
もてあますような時間の中で味わっていたあの感覚。

こんな懐かしさと甘酸っぱさこそ
ここまで生きてきたご褒美。

心の底でいまも暮らしている、小さなわたしに会いにいく。
自分の中の階段を下りていく。
その扉の鍵のようなこの本を
大人になったあなたへ贈ります。

―こども時代は本当に短いものです。
長い人生のほんのひととき。
なのにプリンのカラメルソースみたいに
他の部分とはちがう特別な存在なのです―

あの頃を近くに感じながら。
2022年の夏は どんな日々だろうね。

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