くもをさがす
『くもをさがす』
西加奈子(著)
発行:河出書房新社
病気になったらかわいそう
あれが出来る事は価値が高い
痩せてる方がいいし胸は大きい方がいい
これはこうであれはああで・・・。
そんなつもりはなくても、ここで生きてるだけで、カテゴリー分けや評価、価値、みえ方、そんなものに辟易しながらも、いつの間にか自分も染まっていることに、ふとした時に思い知らされたりする。
カナダに住み、ガンになった
作家の西加奈子さん。
カナダに移住したから気づいたこと
ガンになって感じ揺れ動いたその内側の瞬間瞬間の記録。
綺麗事は言わない。でもどんな時も一貫して
真ん中に透き通った何かが流れている。
一つの尊い命を生きる人の本だ。
何度もこみ上げ、泣きそうになった。
目を逸らしたくない。
この真っ直ぐな魂の言葉を
直球の感情がそのままのった言葉を
今、私に出来る一番まっすぐで、真正面から受け取りたいと思った。
西さんのその時の日記のような文章に合わせて
詩が挿入されていて、それがまた、とてもグッとくるスパイスのようになっている。
これは、折り目をつけて何度も読み返した部分の一つ。
抗がん剤治療を開始する為に、坊主にした時の描写はとても神々しかった。
ご自身でもそれを気に入っていて、美しいと感じていた。その場面で西さんが挿入した詩はこれだった。
-しっかりとした気持ちでいたい
自ら選んだ人と友達になって
穏やかじゃなくていい毎日は
屋根の色は自分で決める
美しいから ぼくらは
カネコアヤノ「燦々」―
表面的に穏やかな様子で自分を偽って傷つけるくらいなら
穏やかなんかじゃなくていい。
そんな気持ちに共感した。
うまく立ち回れていないのかもしれない。でも
どこまでも、今、この瞬間の自分そのままで納得していたい。
「人に対して誠実でありたいと思うこと」
それとあわせて、
「自分の奥底に対して誠実であること」
結局のところ、見えない思いや根底に流れる部分を、人は感じ取り合う。
わかりやすくそれっぽく見えなくたっていい。
できない時もある。それでも、そういたい、と思っていたい。
そしてそんな心意気で生きようと思っている人を感じ取ると…
とても嬉しくてありがたいと思う。
そこで その場所で まっすぐに生きていてくれて
ただまっすぐに生きることがとても難しい時代に
その姿をみせてくれて ありがとう。
しっかりとした気持ちでいたい。
目の前のことに対して、人に対して、自分に対して。
これは、それぞれの人生の中で感じたい事を問う本かもしれない。
決して人生で起こってほしい事柄やなりたい形の事じゃない。
たくさんたくさん揺さぶられて、感じて
自分は・・・を問う。
答えはないかもしれない。でも、それでいい。
そんな余白のある長い時間を
秋は用意してくれるから。
最後に
ジェーン・スーさんの帯の一言が本当に良くて。
まさに、これ。
本当に、これに尽きる。
「思い通りにならないことと、幸せでいることは同時に成り立つと改めて教わったよう。」
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