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悪魔と契約した話

何て厨二病のようなタイトルなのだろうか。恥ずかしい。でもこれ以外にしっくりくるタイトルが思い浮かばなかったの。だから読んで下さい。読んだ後にあなたなら何てタイトルつけるか教えてください。


これはフィクションです

だから察してください



「わかめちょっとこっちにおいで」

険しい表情の祖母がしゃがれた声で呼んだ

私はとても嫌な予感がした


畳の香り

敗れた障子窓

ブラウン管のテレビ

日本人形が並ぶ棚

赤色の座布団


「そこに座りなさい」

言われた通りにすぐに座る

「落ち着いて聞いて」

「いいかい?」

ゆっくり頷く


「お母さんもう長くないんやって」

「病院の先生から今日聞いた」

「長くてももうあと二、三日じゃそうじゃ」


知っていた

というよりも感じ取っていた

だから不思議と何も湧き出なかった

驚きも悲しみも怒りも

微塵もなかった


「ごめんね」

「まだ5年生なのに」

「寂しい思いばかりさせてごめんね」


私は大丈夫だと伝え

2階の自分の部屋に戻った




母は白血病だった

その時はそんな知識もなく

治らない病気という認識だった


4年生の時

急に入院をした

学校から帰ってきたらいなかった

すぐに帰ってくると思っていたけど


あれから一度もこの家に帰ってこなかった

それでも病院は近かったから

たまにお見舞いに行った

ごめん嘘

毎日行った


母の体には

何本もの管がつけられていた

酸素ボンベもつけていたから

話すことはできなかった

それでも

母の手を繋いで

その日あったことを

一方的に伝えた

友達と遊んだ話、喧嘩した話

先生に褒められた話、叱られた話

好きな人ができた話、嫌いな人ができた話

時々、ぎゅっと手を握り返す瞬間が

子供ながらにたまらなく嬉しかった

お母さんはまだ生きている

きっといつか

そう期待をしていた


4年生の春が過ぎ、夏が過ぎ

秋が来るあたりで


少しずつ私の中に悪魔が住みついた

いつになったら起きるのだろう

いつになったら話せるのだろう

もしかしたらもう二度と…

この頃から涙を流すようになった


ことあるごとに

最悪の事を想像してしまう

その度にトイレに走って泣いていた

涙が止まらなかった

母が死ぬことが怖かった

独りになるのが怖かった


そんなある日

担任の先生に呼ばれた

「辛いとは思うが」

「男ならもう泣くな」

「泣いたら泣いた分だけ人は弱くなる」

「だから泣くな」

そう言われた

子供の私は強くなるために

泣くことをやめた

「泣いたらその分弱くなる」

先生のこの言葉は賛否両論あると思うけど

私は感謝している

そうして少しずつ私は泣かなくなった

というより悲しいという色が消えた


冬になりかける頃

母の意識が回復した

学校に電話があり

途中で早退した

走って病院に向かった

酸素ボンベは外されていたけど

変わらずたくさんの管が繋がっていた

横になりながら

手を振る母

4年生の私は嬉しくて

周りの大人の前で抱きついてしまった

これはもう衝動的なものだった

奇跡だと思った

もう話せないと思っていたから

かぼそく小さな声で

「ごめんね」

と母が言った

もう泣かないと決めていたのに

涙が止まらなかった

すると束の間

病院の先生たちがきて

いろんな機械や薬が運ばれた

「お気持ちはお察ししますが」

「時間がないのです」

「一度出てください」

そう言われて病室から出された

結局その後

母はまた眠りについてしまった

「ごめんね」

それが母と交わした最後の言葉になった

冬が過ぎ、春が来て

5年生になり

もうこの頃には

落ち着いていた

だから祖母に母の余命を告げられても

特に何も思わなかった


自分の部屋で走馬灯のように

これまでの母との思い出が蘇る

だめだ気持ちが揺れている

落ち着こう

期待しちゃだめだ

感情なんかいらない

特別な人なんかいない

この世界は残酷なんだ

そう自分に言い聞かせて

自分の中の悪魔と契約をした

そうして私の世界から色が消えた


その三日後に母が死んだ

体育の授業をしている時だった

教頭先生が青ざめた顔で

走ってきた

そっか

その表情を見たらすぐにわかった


教室に戻り

ランドセルの準備をして

歩いて向かった


「車で送ります」

と教頭先生に言われたけど

一人で行きたいとお願いをした


校門を出て

信号機を渡り

郵便局の横を歩いて

公園を抜けて

図書館の横を通りすぎると

病院が見えてくる


歩きながら

いろんなことが頭の中でぐちゃぐちゃになっていた

お母さんが死んだ

何度もそう呟きながら歩いて向かった


病院に着いた

祖母が泣いている

病院の独特の匂い

たくさんの病院の先生たち

看護師の一人が私を外に出そうとしたけど

最後まで見させて欲しいと伝えた

看護師は泣いていた


なんでこの人は泣いているのだろう

もうこの時にはそう思った

身体中につけられた管をとる作業をしていた

本当に死んでしまったのだ


ぴーーっと心電図の機械音が偶然なった

その瞬間

私は嘔吐した

自分でもびっくりした

止まらない

口からも鼻からも止まらない

苦しい

気持ちが悪い

すぐにたくさんの大人が走ってきた


そうしてゆっくりと気を失った


目が覚めたら

祖母の家にいた


畳の香り

直された障子窓

ブラウン管のテレビ

日本人形が並ぶ棚


祖母がおかゆをもってきた

たまご粥にカリカリ梅が入っている

「少しは食べれるかい?」

ゆっくり頷き

ゆっくり起き上がった


酸っぱい梅干しの味を

かろうじて感じた事を覚えている


そこからのことは正直覚えていない

身内だけでひっそりと葬式をして

いつの間にか仏壇に母の写真が飾られた



私は人間をやめた

人間らしくあることをやめた

そして心をもたない悪魔になった





そんな私は東京で教員になった

小学校の先生になった


教員になって

少しずつ変わってきているらしい

私の冷え切った心を

子供達が溶かしてくれている


運動会の表現で 熱くなったり

音楽発表会で 成功を喜んだり

卒業式で 立派な姿に感動したり

ほんの少しだけど変わってきている

感謝している


でも悪魔との契約は無くならない

私はこれからも

大切なモノは作るつもりもないし

誰かに期待することもない

自分の身は自分で守って

一人で生きていくつもりだし

そうしたいと思っている

幸か不幸かこれまでの人生なんとか乗り越えている

母の死が教えてくれた気づきが

一人では気づけなかった教訓が

今の私を生かしている

私が生きている限り母は死なない


でもいつか

私の気持ちを受け止めてくれる人が

できたら

いいなと

思ってもいることは

内緒


ここまで読んでくれたあなたが

大好きです


今あなたの隣にいる人を大切にしてね

家族が生きているなら大切にしてね

当たり前になってしまっている幸せを

もう一度ゆっくり考えてみてね

お願いね


少しでもこの文を読んで

何かを感じたのなら

ハートをください
















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