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圧倒的に突き抜ける

『汗かけ 恥かけ 文を書け』渡辺道治著

Twitterをはじめとして、全国に名を知られている渡辺さんの著書。他の著書もいくつか拝読したが、この本には渡辺さん自身の教師としての原体験やどのような若かりし頃を過ごしてきたかなどが詳しく書かれている。

この本を読むと、いささか絶望してしまう。自分はまだまだだったのだと。

私自身、これまでの教師人生を振り返るとよく勉強してきたほうだと思っている。教師になって読んで積み重ねた本1000冊は軽く超えているし、勉強会やセミナーにもたくさん参加してきた。目の前の子どものために、力量を高めたいと誰よりも強く思っている。

しかし、よくよく考えれば、自分の実践に対してどれだけ向き合い、どれだけ突き詰め、どれだけ研ぎ澄まそうとしてきたであろうか。言い換えれば、どれだけ考え抜いてきたであろうか。

この本の中では、一つの事例として、渡辺さん自身が大切にしてきた学級通信について書かれている。
初任の頃、1学期の終わりに保護者に「もっと出してほしい』とお願いされる。もっと読みたいという意味で。
そこで年度の終わりには100枚出そうと決意する。当時一枚に数時間かけていた渡辺さんにとっては、並々ならぬ覚悟だったと思う。そして100枚を書き上げた。


しかし、ここで終わらない。
2年目は、その倍の200枚に挑戦しようと決める。1日1枚ペース。毎日書くとなると、休めないため、日常的に情報を入れ続けていかないといけなくなる。それでも、やり遂げる。

さらに、続く。
3年目はその倍の400枚。これもやり遂げる渡辺さんだが、この年が1番酷だったと振り返っている。1日2枚のペースだが、2枚の中にたくさんトピックがあると読み手に負担があるため、1トピックで長い文章を書く必要が生じてきたのである。結果は446枚。

さらにさらに。
「あと54枚で500枚か」と思った渡辺さんは、4年目は500枚に挑戦する。この辺りから、保護者からたくさんのお便りをもらうようになり、自分の伝えたいことを書くといよりは、相手に届けたいという思いが生まれ始める。

ぐっと枚数を減らし(それでも188枚)、子ども一人ひとりに向けて1枚書くこともあるなど質も転化していった。

そうしていくうちに、初めは1枚数時間かかっていた通信も、一枚10分程度でかけるようになり、「花は咲く」(通信のタイトル)の時には1000枚を超えるようになった。
この姿に、ネテロ会長の感謝の正拳突き1日10000回を思い浮かべた読者も多いはずだ。


この通信の話だけを読んでも、渡辺さんがいかに突き抜けていたか、突き抜けようとしていたかがわかる。渡辺さんは学生時代からある意味自分を追い込む気質の方で、成長が見込めるからと誰もが嫌がる大学の先生のゼミを進んで志願していた。また、2年目に行った校内の代表授業では、一つの授業を作るために100冊を超える本を買い研究をしていた。


このようなエピソードを読めば読むほど、自分はまだまだだったと圧倒的な事実を突きつけられる。

兜の尾を締め直す思いだ。

だからといって、渡辺さんと同じことができるはずもないしするべきでもない。自分の実践に対して、自分自身がどこまで研ぎ澄まし、磨き、突き詰めているか、考え抜いているか、問いかけよう。

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