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Senri Oe: 5/21 1983 Debut

「記念日!」

編集の松山さんのLINE。

え?まだ数日あったんじゃなかったでしたっけ?ついうっかりこの数日をバタバタと過ごしているうちにまた例のごとく時間をワープしちゃったようだ。鳩が豆鉄砲を食ったようにキョトンとする。

全く以って時間っていうウスノロは10年を3日ぐらいに、20年を10時間くらいに、そして40年を40分ほどに感じさせてしまう。それだけの時間を過ごしてきたのにそんな感じが一切しない。生まれたてのプリプリなまま。

あれだけ歳をとるのを恐れた16歳、夢中でデビューした23歳、前へ向かうしかない30歳、叶わない夢があることを知る35歳、命の賞味期限を考え始めた45歳、そして再び夢中で夢を見始めた52歳、2回目の30歳を赤い色で祝った60歳。そして今はコロナ明けのどこか静かな勤労青年32歳。(+30)

ここ数日はぴの検査やthe US cdsを箱詰めして郵便局から送ったり、気温が暑いに加えて暖房がガンガンに効く部屋でハーハー言いながら暮らしていた。

で今朝、ふとあまりの寒さに温度計を見ると10度。暖房は止まってる。眠れないのでつい予備の暖房を稼働させる。恐らく最近病気療養を終えて復帰した同じ階に住むマーレーが暖房の権限を持っているので、彼の感覚でつけたり消したりしているのだと思う。全くもって彼とは温度の感じ方が違う。

5月20日の土曜日。朝5時50分。ぴごはん完了。

10年前にPND Recordsを立ち上げてジャズのデビュー盤「Boys Mature Slow」をリリースしたのが随分前のことに思える。不思議とポップの時代よりもうんとこの10年を昔に感じるのだ。なぜだろう。そして逆にポップ時代が割とうんと近くにいる感じがする。それだけ時間が流れたということで客観的な目線で見れる距離にいるからかなとも思う。

Zinc Barでジャズデビューする日。リハを終えたクインテットのボーイズたちはジャズでは僕より先に卒業した先輩たちだが僕の子供といってもいいくらいの年齢で眩しかった。確かライブ直前、近所のレストランでドキドキしながら本番を待った時の輝きと不安と高鳴る鼓動は一生忘れないだろう。

47歳で受験して10代の頃にまた戻ってそのまま突入した20代をがむしゃらに生きた感じもする。だからなのか、どんどん前へ行く時間の刻み方が、どこか浮世離れしているのは。実際の身体は正直で62歳なのに心だけが若い。

そしてもう一つ感じるのは、5年前の「Boys & Girls」や来週日本盤リリースの「Class of '88」などで、ポップ時代の曲をジャズに置き換える経験を積んで、自分の青春期をまじかで見るチャンスが多かったことも大きな理由だ。

今年の1月に実家に帰った時にいろんな懐かしいものが出てきて、それを写真に収めてみた。ずっと眠ってた記憶の中のものたち。40年はおそらくそれらを開封していいだけの時間が経ったということでもあるのだろう。

すこしのんびり生きてみたい。そんなことしてたらあっという間にもうこの世にいないのかもしれないが。たくさんの偶然を引き寄せあっていくつもの奇跡を起こしあれよあれよと言う間に時間が過ぎていくのが人生なのか。少なくともこれまでがそうだった。こんなはずじゃなかったとかもっとこうしておけばよかったとか思いながら流されて、必死で筏に捕まって流れていくうちに、これが僕が見るはずだった景色なのかと対岸をぼんやり眺める。どう思い返しても戻らない月日だからこそ愛おしい。

そういえば母の日に買った花がまだ咲いている。もう少しだけ置いておこう。

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