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プチDAYS 「縁結びの神様! ありがとう」

「4年ぶりですか? アリとマットとやったブルーノートでお会いして以来ですよね?」

「そうかもしれない。あのときチケット買ってくれて楽屋に顔だしてくれたんだったよね」

懐かしい友、常(つね)と酌み交わし互いに頷きあった。

この歳になるとうなずくことが増えてゆく

N Yへ帰る最終日の仕事が終わるのが4時半。夜はパッキングがあるので一応空けておいたのだが、ふと、もしかして常が空いてたらほんの少しでも会えるかなと思い勇気を出してメッセンジャーしたのだった。

仕事の話、奥さんの健康の話など聞きたいことは山ほどあって、時間はあっという間に流れる。せっかちな性格の僕はパッキングの方も彼がホテルに来てくれる直前に済ませ、完全にチェックアウト態勢を整えてからの晩御飯。辛いモツ鍋のカウンターに並んだ2人は会えなかった時間を取り戻すかのように威勢良くグラスの音を立て、グイと生ビールを喉に流し込んだ。

1月はあっという間に愛溢れる2月へ走り出す

「そういえば、ボズスキャッグスのブルーノートの後、この近所のラボエムで大激論交わしたよね? 覚えてる?」

「覚えてますよ。Senriさんがボズのチャレンジしてるジャズはジャズじゃないって一歩も譲らずで(笑)」

「そうそう。今思えばジャズをやる彼が羨ましかったのかもしれないな。ジェラシーだね。本当に追求したいことをやれてない自分にどこか苛立ってたんだ」

「でも知ってました? 実はボズスキャッグス一緒に聴くのはあれが最初じゃないんですよ。前に渋公でポップのボズを一緒に観てるの。それ覚えてないでしょう?」

踏みしめながらの

それは覚えてない。常と僕は同い年でしょっちゅう連んでいて、ボズの鮮烈なジャズの記憶はそのアルバムとともに深く記憶に刻まれているのに、ポップのコンサートのボズは同じfolderにしまい込んだままなのか脳のscreenには出てこない。それにしても4年もご無沙汰なんて考えられないが、コロナはあれよあれよという間に時を転がしたのだ。お互い実生活でも大変なことも多く、たまのメールじゃ「どう返していいものやら」と、互いを気遣っていたようにも思う。でも会えて良かった。

ね!

「モツ鍋屋ってさどこもそうなんだけど、"お湯を足してください"ってお願いするのは"味が煮詰まって濃すぎるから薄めて"って意味なのに、こっちの気持ちを全然理解してくれず、さらにスープの素を足しちゃうもんだからカサだけ増して濃い味は変わらない(笑)。これじゃ体壊しちゃうね」

「ははは。相変わらずだなあ、Senriさんは。僕ら健康に気を使う、そういう歳になりましたよねえ。あ、それと今日は荷物になるかなと思ったんだけど、ずっと借りてた『山上たつひこ全集』を2冊持ってきましたよ」

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