事実は小説より奇なり
「事実は小説より奇なり」
奇とは不思議という意味が強そうだが、小説より面白いともとれる。
ある本を読んで実際に感じた。
物語、作り話を好む。
作者に興を覚えればエッセイも。
紀行文は読むが、ルポルタージュやドキュメンタリーのようなノンフィクションは敬遠気味だった。
娯楽のため、いわゆるオンナ、コドモの読む本を選んできた。
太宰治の「小説の面白さ」の冒頭の文章にあるように。
「小説というものは、本来、女子供の読むもので、いわゆる利口な大人が目の色を変えて読み、しかもその読後感を卓を叩いて論じ合うような性質のものではないのであります〜」
私だけかもしれないが、沢木耕太郎の名前を最近よく見かける。
著名な本は多いが、ノンフィクション作家の先入観があった。
スポーツなど硬派のルポが多く、オトコたちの好きな作家と認識している。
図書室の棚で「彼らの流儀」に呼びかけられ、文庫本の裏表紙の文も興味を覚えた。
「生の一瞬の感知に徹して、コラムでもエッセイでもノンフィクションでも小説でもなく、それらすべての気配を同時に漂わせる33の物語」
事実は小説よりの言葉を思い出すほど愉しめた。
現実に存在する人が登場するにも関わらず、小説かと紛うばかりの面白さである。
最新刊「天路の旅人」を県立図書館に注文した。
食わず嫌いもひょんなことで好きになるものだ。
近ごろ、面白い本に巡り会うことが多い。
感謝、感謝。