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長井トひと。つむぎのおと(Vol.1)

長井市との出会いと2泊3日の旅

 私が「長井市」と出会ったのは、私が3年生の後期に履修した観光経済論の授業でした。その授業の終盤で、私の通う大学で非常勤講師としてこの授業の担当をしていた山崎先生(現長井市地域おこし協力隊)自身が北大(北海道大学)の大学院で研究されている「ロックフェスの主催者」にまつわる発表を聞き、そこで「ぼくらの文楽」(以下、「ぼく文」と呼ぶ。)というものに興味を持ちました。

 廃映画館で始まったロックフェスが、第3回の公民館開催から音楽ステージが一要素になり、「子どもの遊び」がメインテーマとなって変貌していく。それは、主催者がその地で生活していくにあたって「地域とのかかわり」というものが変化していき、さらには上手い具合に「フェス」と「地域」との融合が起こっていき、回を重ねるごとに「祭り」として創造されていく。これぞまさに「消費する観光」とはひと味もふた味も違う、新たな関わり方が展開されている、そこに私は「ぼく文」の魅力を感じました。

 また授業のどこかで「SENN」(元ゲストハウス再生プロジェクト)のお話もちらっと聞いていたのですが、その「SENN」のあるフィールドが「ぼく文」と同じ長井市というところが繋がっておらず、それがわかったときには「ぜひ、この目で見たい!もう行くしかない!」と思うようになりました。(そして気づけば先生と三浦くんと共に長井にいました笑)

先生と三浦くん

「SENN」の可能性

 旅の帰りの山形駅から仙台駅へ向かう高速バスの中で聞いていた、花男さんの「ど田舎行進曲」。その歌の中に出てくる「何もない」というフレーズ。これはまさに今のSENNであると思いました。ひとつ誤解を生みそうではありますが、現在のSENNの中には机や椅子、2階のゲストハウスだった所にはベッドもない状態でした。それは「何もない」けど、裏を返せば「どんなカタチにもできる」ということ。「カウンターテーブルには椅子がマスト」なんて固定概念もありません。そのスペースは「立ち呑み席」にもなり得るし、2階の部屋はただベッドを置くだけではなく、「この部屋は宿泊者たちが語り合う交流ルームにしよう」なんてこともできる、そんな想像が膨らみます。あらゆる可能性が「全部」あるSENN。これからどんな変貌を遂げていくか。想像を創造していくか、その「想像」の部分でこの施設をみられたことはとても感慨深いです。

作詞作曲:花男
2017年 暮らし 「ど田舎行進曲」からの引用

「観光客」になってしまう危険な存在

 今回の2泊3日の旅では外からまちを見る「観光客」的な存在ではなく、もう少し内側の世界に引き込んでいただいたと思っています。そんな経験をさせてもらったからこそ、自分もこのまちや、このまちに暮らす方々、関わってくださった皆様にお返ししたい、という気持ちがいつぞやか滞在中に生まれてきていたと思います。この想いはこの地に足を踏み入れる前は微塵もありませんでした。最初はただただ純粋な「長井」というまちへの興味だけでした。それが、途中からいつのまにか「こんなことをやってみたら面白そう」などと偉そうに提案させてもらうまでになっていました。いま学生という自分の立場で実績というものも何も無く、経験もないので的はずれなことを言った部分も多々あったと思いますが、それくらいアツくなり、自分なりに本気でこのまちに向き合い、前のめりになっていたという証拠にはなると思っています。(まちの皆さんが「うんうん」と私たちの意見を否定せずに聞いてくださるので、どんどん気持ちが大きくなっていった部分も大きいです(笑))

 しかしながら、いざ私が完全に長井市の内側にはいって実践する(移住して定住して長井に根を張るような)人間になるのかといわれれば、(現時点では)そうではないと思っている自分がいました。それはもっと実践者(その地に根を下ろして働いていくようなプレーヤー)になるべき友人の存在や、その地で生き抜く「覚悟」がまだ醸成されていないためなのでしょう。この状態は、『おもひでぽろぽろ』でタエ子が「結婚」というものを目の当たりにしたときに感じたモノと似ているのかもしれません。『北の国から』で富良野を出ようとした純に対して清吉が「負けて、逃げるんだぞ」と言うシーンに近しいような気もします。

 ただ、今後ともこのまちと何かしらのカタチで関わって、今回繋がったほそいほそい糸を切らしてしまうことなく、紡いで紡いで徐々に太くしていきたいと思っています。


山形県長井市 人口約2万6千人(令和4年1月現在)
「水と緑と花のまち・ながい」というキャッチコピーがあり、6月中旬から7月上旬にかけてあやめが見頃になる。まちには水路があり、江戸時代に最上川舟運で栄えた歴史を感じることが出来る。水がきれいなため、醤油・味噌蔵がみることができる。米所ときれいな水ということで日本酒「惣邑(そうむら)」が有名。


内村光良(21) 北海学園大学経済学部地域経済学科3年 北海道札幌市出身
父は中富良野町出身で、祖父が建てた喫茶店「十年館」は、倉本聰さん脚本のドラマ「優しい時間」のロケ地になる。その祖父とのご縁で現在は、俳優の高倉健さんが愛した店「カフェノエル」でアルバイトをしながら、社会に出るための残りの学生の時間で、さまざまなことを吸収し、日々邁進している。

(2022年3月11-13日 長井訪問)


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