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ウタリのウサギ

「ウタリ」は湿地のことで、「雨足」「雨垂」と書きます。「ウタリ」神社の「ウタリ」が「菟足」なのは、この「ウタリ」の意味が「湿地」ではなく、「凪江(波の穏やかな入江)」、つまり、旧鎮座地の「柏木浜」を指すからであり、「雨足」「雨垂」とは表記できず、ご祭神である「菟上足尼」の文字を使ったのでしょう。

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 菟足神社のご神紋はウサギです。日本人のウサギ(玉兎、月兎)のイメージは、「月で杵と臼を使って餅をついている」(太陽にいる金烏(3本足のカラス)と対)ですが、「餅つき」は「望月」(もちづき。満月のこと)との掛詞で、中国では、[ウサギは、仙薬(不老不死の薬)の材料を手杵で打って粉にしている」と考えられています。

 菟足神社のご神紋がウサギである理由については諸説ありますが、この地は、仙薬(不老長生の薬)を求めて中国からやってきた道教の方士・徐福伝説が残る地ですから、道教のウサギのイメージで考えてみると・・・道教では、月神(太陰星君、月宮黄華素曜元精聖後太陰元君、月宮太陰皇君孝道明王)は、「嫦娥(じょうが、姮娥、こうが)」というヒキガエルだとしています。嫦娥は、仙女でしたが、地上に下りて不死ではなくなったため、夫・后羿(こうげい、夷羿、いげい)が西王母(せいおうぼ、さいおうぼ、九霊太妙亀山金母、太霊九光亀台金母、瑶池金母、西海聖母、西老、王母娘娘)からもらい受けた不死の薬を盗んで飲み、月の月宮殿に逃げ込むと、蟾蜍(せんじょ 。ヒキガエルの漢名)になったそうです。そして、ウサギは、西王母の眷属とも、嫦娥の眷属ともいわれ、月で仙薬を作っているのだそうです。
 『竹取物語』のラストでは、帝は、罪を負って地上に下ろされたかぐや姫(嫦娥?)にもらった不死の薬を富士山の山頂で燃やしていますから、「月で不死の薬が作られている」という考えは、日本にも伝わっていたようです。

※「蟾」と書いて「つき」とも読みます。
※井伊氏発祥の地・井伊谷について、『三代実録』(貞観8年12月26日条)に「授遠江国正六位上蟾渭神」(遠江国蟾渭神に正六位上を授く)とあることから、蟾渭谷→渭伊谷→井伊谷と変わったとされていますが、蟾渭(せんい)神社(井戸水(湧水を含む)を祭祀の対象として、蟾(ヒキガエル)の姿をした水の精霊を祭祀する神社)は、遠江国引佐郡渭伊(いい)郷の渭伊神社のことではなく、遠江国長上郡蟾沼(ひきぬま)郷の蟾沼神社(「渭」の草書体は「沼」に酷似)のことであって、渭伊谷→井伊谷と変わったのでしょう。


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