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【9月23日鶴居村講演会〜北海道アウトドアマスターガイド安藤誠氏編〜】

ヒッコリーウィンドに到着。

とにかくどんな部屋のどんなひと隅にもセンスが溢れていて、驚嘆。
「急なお話だったので部屋は満室で、スタッフや添乗員さんがお泊まりになる部屋しかなくて」と通されたお部屋は、いやいやとても心地がいい。
ベッド横にさりげなく置かれたランプの、その革のシェードのクォリティー、壁にかけられた大きな写真は、安藤さんの撮影された川を登る躍動感溢れる鮭、
さらには講演会会場となるサロンルームの各所に配されたガラス細工、皮細工、家具、陶器、花々、楽器、音響、安藤ご夫妻が只者でないことが十二分に理解できる空間だった。

う〜むと唸りながら他の場所も見せていただくと、ひっくり返りそうになった。
書斎兼スタジオの本棚も最高だったし、
安藤さんの好きなバイク、レコード、ウィスキー、パイプ、ギターが置かれたアジトに足を踏み入れた際には、それぞれを間近にしながら「マジか……」とため息しか出なかった。

その後この場所のオーナー安藤誠さんの奥様安藤忍さん、スタッフの山田佳奈さんにご挨拶し、美味しいコーヒーをいただいていると、
そこに現れたのは千葉からお越しの中務信英さん。
中務さんは読書のすすめのお客さんで、何度もご一緒している方。
この宿を予約した後に私の講演会が決まったのだとか。
よく知る方にこんなところで再会するだなんて、そんなことあるんですかと、びっくり。

山本さんの運転で雨降る中すぐそばのホテル「グリーンパークつるい」に中務さんと一緒に向かい、どれだけご縁があるのかしらと言葉を交わしながら、それぞれに温泉入浴。
戻って、夕食のために食堂へ。
すると「吉満さん、お久しぶりです」と声をかけてくださる方が。
ん? どうしてここに??

その方は昨年6月、愛知県半田市で岩波房子さんが主催くださった講演会にて司会をしてくださった新美結花さん。
中務さん同様、私の講演会があると知らずに、息子さんとこちらに予約されたのだそう。
なんと。一人ならず二人も、こちらで偶然会えるとは。。
しかも、1週間前に半田で房子さんと熱田神宮詣にご一緒していたタイミング。
受け取ったお土産は「きよめ餅」。ええ、ええ、よく存じていますよ。
なぜなら先週房子さんが買ってくださったんですもの。とっても美味しかったからもっと食べたいと思っていたところ。嬉しい。

そんなサプライズを経て、忍さんお手製のお料理を宿泊客の方々といただき、身体が全身で喜ぶのを感じている頃に安藤さんご登場。
宿泊客の皆さんに、今晩の予定、明日のことなどをお伝えされ、講演会への参加を促してくださった。
一見、その体格も鋭い眼差しも、軽々しく声をかけられない距離を感じる。
でも、目を細めて浮かべるその笑顔で、その大きな包容力に気づかされる。
今思えばこの瞬間、私は安藤さんに、私がいつもキャンプで自然から感じる「畏れ」と「包容」と同じものを受け取っていたんだろう。安藤さんは「自然」と同化している人だ。

この時話された内容に、私が持参した千住の銘菓のお土産についての話があった。
職人の方が本当に繊細に作っているのがわかる。こういうお土産を選べる人だとすぐわかったとのお話がなされ、震え上がる。
いやいやいやいや。。
たまたま今回はフライトの時間が早くて、前日にお土産を近所で買うしかなかったんです、安藤さん。
確かにこういう時には地元の銘菓をお持ちしますが、それでも、
もし時間が違えば空港でベタな何かを買っていた可能性は非常に高いのです。。
穴があったら入って、私は貝になりたいと目をしばたかせながら、でも厳しくてあったかい方だなぁとしみじみ。
と同時に、おいおい、初対面でこんな方の前で講演会って、罰ゲームですよ山本さん、と泣きたくなる。
で、食事の後、部屋に引きこもってただただ時間まで安藤さんの本『日常の奇跡』を読み進めることに。

気になる箇所を読み込むうちに、背筋が伸びた。
安藤さんの足元にも及ばないけれど、おっしゃることがよくわかる。理解できる。いや、共感できる。
この人は哲学者で、実践者だ。
そして、センジュ出版が大事にしているものとかなり近いものを大切になさっている。

嬉しくなった。
ありがたくなった。

その時に、奥さんの忍さんから声をかけられた。
「対談内容を少し打ち合わせませんか?」
あ、ぜひ、と忍さんに先導され、サロンの隣の建物、例のアジトに向かう。
カウンターの中にはパイプをくわえた安藤さんが。カッコ良すぎるでしょ、安藤さん。。

安藤ご夫妻は『しずけさとユーモアを』を読んでくださっていた。

ご主人の誠さんは、その中から気になったことをメモにいくつか箇条書きされていて、
ドキッとする質問を対談前にいくつかしてくださった。
あ、この方の感性は安心できる、そう思った。

誠さんはかつて学習塾の社会の講師として、行列ができるほどの名講師を務めていらした。
教えるのが上手いということは、物事を知る勘所がスマートだということ。
打ち合わせもそこそこに、私からもいくつか質問させていただいた。
ああ、なんだか嬉しいなぁと、この後の講演会、対談への緊張が少し解けた。
私の印象は、笑顔をよく浮かべるほうのワタナベアニさん。
安藤さんもアニさんも、写真を扱いながら哲学し続ける表現者だ。
話し方がしずかなところも似ていて、お話をずっと聞いていられる。

あっという間に時間になり、会場となるサロンに入る。
とにかく室内でも室外からも、木の優しさに包まれる空間。
見ると、先ほど食堂で会ったばかりのお客様が多数、そして山本さんの呼びかけでこの講演会のためにいらした方々、さらに画面越しには、翌日の北見講演会主催者の松浦さんとその息子の信孝さん、先に話が出た岩浪さん、読書のすすめの小川さん他、大変お世話になっている皆さんが。
その上、かつて私の本の出版記念講演会を主催してくださった中川葉子さんの姿に驚いていたら、なんと安藤さんのオンライン私塾「至誠塾」の塾生と後で知り、二度驚く。

実は、ここでも奇跡的な出来事が。
山本さん曰く、もしこの夜晴れていたら、ヒッコリー名物「星空カヌー」に繰り出す流れになっていたのだそう。
そうすると宿泊客のご参加はほぼ見込めなかったし、安藤さんとの対談ももちろん行えなかった。
私にとっては雨降りさまさまだったのだ。

まずは山本さんが今回の講演会の目的を真っ直ぐに話され、

その後私から、自分の言葉についてその意味と発見と発信について。

初めましての皆さんなのにびっくりするほど真剣に聞いてくださり、こちらもグッと臍に力が入る。
休憩後はいよいよ安藤さんとの対談。


先ほど会ったばかりと思えないほどに、和やかな空気を纏われた安藤さん。
センジュ出版の本作りについていくつかのありがたいご質問をいただき、お返事を戻す。
そしてこちらからもいくつか質問を。
自然はフェイクがない、との安藤さんの言葉は重厚だった。
初顔合わせの時に感じた安藤さんの「自然」はここに集約されると思う。
安藤さんの生き方にはフェイクがない。
もっとお話伺いたいと感じつつ、講演会は終了。

ここで私のヘッポコぶりが容赦なく発揮された。時と場所なんていっさい気にしない私のヘッポコさよ。本番でリラックスしてベストパフォーマンスを出す名選手か、君は。
事前に「センジュ出版さんの本、販売されませんか?」と山本さんからおっしゃっていただき、ありがたく販売を決めたものの、
事前の発送などいっさい気が回らずに出発前日を迎えたため、スーツケースに入れられる限界は10冊と判断。
自社の本を各1冊ずつと、自分の本2冊を会場で並べていただいたところ、講演会後に宿泊客の方々含め皆さんがご購入いただき、あっという間になくなる結果に。

おまけにお釣りの準備もまったくなく、山本さんに両替いただいたりと本当にご迷惑をお掛けした。
とはいえ、発売6年以上経った本も含め新しい読者の方々に手渡すことができたのは、嬉しい。
中には、「ぼく、『ロバート・ツルッパゲとの対話』持ってます」という若い男性まで。
手にされたお一人おひとりに、朗らかな時間が訪れますように。

さて。
普通ならここで、「おやすみなさい、また明日」なわけだが、ヒッコリーは一味違う。
例のアジトの扉が開いた。
その扉の奥は楽園につながっていた。

長い夜。
ということで、やっぱり続く。

*写真数枚は山本さんと中務さんからいただきました。

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