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【9月24日阿寒から北見へ〜安藤靖子氏編〜】

鶴居村のヒッコーリーウィンドを後にして山本さんの運転する車で中務さんと一緒に北見に向かう途中、山本さんが案内してくださった場所が2カ所。
まずは「ギャラリー・工房 彩の風」。
ヒッコリーからそれほど離れていない場所に位置する天井の高い平家のその建物は、革とガラスの工芸作家、安藤靖子さんのアトリエ兼ギャラリーだ。

安藤靖子さんは誠さんの小学校進学時にランドセルを手作りされたことがきっかけとなって革工芸を学ぶようになり、その後ステンドグラスにも挑戦。本格的に技術を身につけたのは50代になってからだそうで、そうと知ると驚くばかり。
ポートランドやベネチアなど海外でも学ばれ、2010年にこのギャラリーがオープン、現在は作家活動の傍ら教室の講師としても活躍されている。
聞けば今は道内に新しく建つ大型施設に納める大作を手掛けられているのだとか。

ヒッコリーウィンドの誠さんは高校生のとき、このお母様から指導を受けてレザーで椿のコースターを作り、バレンタインのお返しにと当時の彼女さんに贈られたのだとか。なんて素敵なエピソードだろう。
間違いなくこのお母さんの血を受け継がれた誠さん、今や海外からも表彰される写真家で、スペシャルなネイチャーガイドで、その上天然石のアクセサリー制作まで手掛けられているのだから、才能溢れる方だなとつくづく思う。

さて、ギャラリーに着いて、中に入りたくても入れない。
なぜか。
ギャラリーの周囲のイングリッシュガーデンが見事なのだ。

ついつい庭を歩きたくなってしまう気持ちを抑えに抑え、中に入った。
そして呆然。ギャラリーというより、ここはミュージアム。
唯一無二の圧倒的な作品達が、天井に棚にすぐそこに、まるで宝箱の中に入り込んだかのように並べられている。

前日ヒッコリーウィンドで見た革細工、ガラス細工はほんの一部だった。ここには美術館クラスの作品が大小さまざまにその存在感をもってこちらに迫ってくる。
お目にかかった靖子さんは小柄なのに凛とされて、真っ直ぐに自分の足で立つ人、という印象。

妥協しない、信念を投げ出さない、生きることを諦めない人だと、どの作品からも声が聞こえてくるようだ。
なので、靖子さんの説明を伺いながら歩く館内で、こちらはずっと感嘆が漏れ続けた。

動けなくなるほどに魅了されたのは、とあるランプシェード。
オーロラを切り取ったようなそのガラスのシェードを鳥がくちばしでくわえている。
この鳥が登場する物語のページがまさに開かれそうな感覚に陥る。

タイムキーパーされている山本さんはハラハラ。それでもこちらは動けないし、靖子さんの説明も熱を帯びて、この後北見での講演会がなかったら、あとどれくらいいただろうと思うほど。

とにかく、ここに来た証を買い求めようと、小さなガラスの器を購入。
まるではじめから空中階にいたかのような深いグリーンのその器を胸に抱え、靖子さんにまた来ますと約束し、このミュージアムを後に。

ああ、お金貯めて今度はあのランプ買いに来よう。あの鳥、賢者だろうなぁ。

「ギャラリー・工房 彩の風」は、6月中旬から9月下旬の日曜のみ一般に開放されているそう。
また来年。ご縁のある方はぜひ。
阿寒郡鶴居村雪裡原野北18西6-5

帰り際しっかり覗いたお庭も、素晴らしかった。イギリスで学んだ職人が詰んだというレンガもまた、タイムトリップしたかのような気にさせてくれるので必見。

その後向かったのは、阿寒湖そばの「阿寒アートギャラリー&アートギフトショップ」。

今年4月末にオープンしたばかりというこのギャラリー、2階はワンフロアまるまる安藤誠さんの写真が40点近く展示されている。

自然の厳しさと朗らかさが同時に切り取られた一瞬の一枚一枚が、見ているこちらに問いを立てる安藤さんの写真。

地元のホテルオーナーが安藤さんの写真に惚れ込んだことで、このギャラリーでの独占展示が実現したのだとか。納得の迫力で大きく引き伸ばされた作品の数々、また1階の大型モニターでは安藤さんが撮影した動物達の動画も見ることができ、すっかり引き込まれる。

「そろそろいきましょうか」
名タイムキーパー、山本さんの声。そうでした。我々の今日の目的地は北見。

移動する車中のこと。
前日の鶴居村講演会の話から、この日の北見講演会の話題に移る。
それを聞きながら、お彼岸の期間に開催される意味を話し出されたのが中務さん。
そして、「3月の講演会、自分が主催させてくれる?」と申し出られ、山本さんと二人で驚くばかり。
ヒッコリーウィンドで偶然ご一緒したことだけでもとんでもない確率なのに、今こうしてなぜか一緒に北見に向かっている。
その上、今度は主催者になってくださるだなんて。

ありがたいなぁと思いながら窓の外の木々を見やるうちに景色が街中へと変化し、北見駅前に待ち合わせより少し早く、お昼過ぎに到着。流石の名タイムキーパー兼ドライバーさん。

電話で優しい声色を聞かせてくれた北見の山口さんと、ほどなく合流。
今度は山口さんの運転される車に乗り込み、後から山本さんと中務さんが乗った車が続く。

さて、北見の講演会がもうすぐ始まる。

その前に腹ごしらえだ。

ということで、この先は北見の二日間をお届けします。

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