マガジンのカバー画像

千住暮らし100stories

25
千住のrealを知る100のものがたり
運営しているクリエイター

記事一覧

【story25】44年うなぎとともに

まじ満 店主 間嶋昭人さん(66歳) 朝の仕事は営業前の 7時過ぎからスタート 「うなぎ焼とり まじ満」は古くから川魚を扱う店が多かった千住で、半世紀以上続いてきた人気の店だ。住宅に囲まれた千住仲町のミリオン通り商店街の中にあり、近所の人からサラリーマン、観光客まで様々な人が昼前から晩まで足を運ぶ。 間嶋昭人さんはこのまじ満の2代目店主に当たる。 まじ満の営業は11時スタートだが、間嶋さんの仕事は朝7時半から始まる。千住内にある自宅から自転車に乗って、一旦、店を訪れた

【story24】路地が人と街をつなぐ-千住暮らし100stories-

建築家 千住いえまち会長 鶴巻俊治さん 木電気に誘われて 不規則に入り組んだ路地には、束の間、大人を子どもに還す魔法がかかっている。足を踏み入れると、両側から漏れ聞こえるテレビや食器の音、人の話し声、狭い道の先に思いがけず花をつけた樹が現れ、その下に悠々とやって来た猫が「この辺じゃ見ない顔だな」という眼をして座り込む。このまま進むとどこに連れて行かれるのだろうか――ちょっとした冒険をしているような、そんなワクワクした気持ちにさせてくれる。 荒川土手の手前に扇状に広がる柳

【story23】「かわいい」を千住に-千住暮らし100stories-

la feuille(ラフイユ) 帆足泰子さん(50歳) ネギや大根を持って 入れる魅力的な雑貨店 千住警察署も面する大踏切通りとミリオン商店街が交わる角にたたずむのが、雑貨店la feuille(ラフイユ)。生まれた頃から千住に暮らしてきた帆足泰子さんが営む、ハンドメイドのグッズでいっぱいのお店だ。 店内には色鮮やかなアクセサリーやバッグ、ベビー服や子ども向けの雑貨、置物などがいっぱいに置かれている。いずれも店主の帆足さんや作家さんによる手作り品。海外製やブランド製な

【story22】まちに物語を紡ぐ珈琲(千住宿 珈琲物語)-千住暮らし100stories-

千住宿 珈琲物語 店主 望月章雄さん・59歳 とある週末の朝、コーヒーが香る店内は開店早々にほぼ満席に。「カウンターなら空いていますけど、いいですか?」と、来店客をハキハキした口調で案内する女性。カウンター席の向こうには、コーヒーを淹れたり、トースターで食パンを焼いたりとテキパキ動く男性の姿がある。忙しいはずなのに、ゆったりした空気が流れるこの空間は、今年で36年を迎える喫茶店『千住宿 珈琲物語』。マスターの望月章雄(あきお)さん、妻の充子(あつこ)さんが営んでいる。 高

【story21】エンタメ支える路地裏-千住暮らし100stories-

遠藤 斗貴彦さん 40歳 架空と想像を実体化北千住駅東側――千住旭町の中心をまっすぐに伸びる商店街から一歩外れると、賑やかさが嘘のように閑静な住宅街へと変貌する。両側から木々の枝葉がはみ出す細い路地は、昭和にタイムスリップしたようなあたたかさを感じさせる。だが、道を歩く人の姿はない。昼下がりという時間帯のせいなのか……。ふと、一角にある平屋の建物が目に入る。軒下には細長い形の裸電球がいくつもぶら下がり、足元には黄色い草花が咲き乱れている。何かの倉庫だろうか。日差しを浴びて明

【story20】記憶と共に千住を走る -千住暮らし100stories-

重田雅敏さん(70歳) 清々しい土手の上を時に走り、時に歩いて千住の荒川土手のてっぺんには、どこまでも続く長い長い道がある。風通しがよく気持ちのいいその道筋は、これまで何十年もの間、地域の人々のちょっとした散歩、ウォーキングやランニングなどに利用されてきた。 重田雅敏さんもこの土手の上で、ウォーキングやランニングを楽しんできた一人だ。重田さんは網膜色素変性症という眼の病気によって50歳頃に全盲になった後、視覚障害者としてランニングを始めたという。 「土手は自然が感じられ

【story19】空き家がまちをつなぐ-千住暮らし100stories-

青木公隆さん 40歳 千住寿町にある、空き家をリノベーションした複合コミュニティスペース『せんつく』。名前の由来は「千のつくるが行き交う場所」。銀鮭専門割烹、パン教室、整体カフェなどの「つくる」をコンセプトにした店が集まり、さまざまな人との縁が繋がっている。2022年12月には、千住宮元町に「学ぶ」をコンセプトにした『せんつく2』がオープンした。 これらを企画・設計・運営をするのが建築家の青木公隆さんだ。木造でほっこりした雰囲気の『せんつく』の空気感とも少し違う、淡々と

【story18】整体カフェで幸せを-千住暮らし100stories-

高木みほさん 31歳 整体カフェ「Reliev(リリーブ)」は「せんつく」の1階にある。せんつくは10年以上空き家だった民家をリノベーションした複合コミュニティスペースで、「千のつくるが行き交う」がテーマ。人と人が交わり楽しみながら暮らしをつくっていく――そんなぬくもり溢れる場所の一角に、人を癒したいと2年前に独立した高木さんが、今年6月、曜日で変わる「アロマ整体」と「カフェ」のお店を始めた。 福の神になりたくて整体カフェ――なんて魅惑的な取り合わせだろう。ほんのりとアロ

【story17】まちに根づく家具職人-千住暮らし100stories-

家具屋 イヱノ イシワタ ノブユキさん 42歳 1人で営むからこその自由で忙しい日々インテリア好きなら無垢材の家具が気にならない人はいないだろう。千住にもそんな無垢材の家具を1点1点製作する工房がある。イシワタ ノブユキさんが営む家具屋 イヱノだ。 千住の南東から北に走る墨堤通りに沿って、千住スポーツ公園と千寿小学校の前を行き過ぎ、足立宮元町郵便局間近の緩やかな曲がり路を過ぎると、清々しいガラス張りの入口を持つ古民家が現れる。ここが家具屋 イヱノの工房兼ギャラリーに当たる

【story16】好きなまちに家を造る-千住暮らし100stories-

わだらぼ一級建築士事務所 和田真寛さん 37歳 地方移住、二拠点生活といったワードは、コロナ禍で見聞きする機会がさらに増えている。千住にも、家族で二拠点生活を楽しむ人がいる。『わだらぼ一級建築士事務所』代表の和田真寛さんだ。千住と茨城県大子町(だいごまち)に中古物件を買い、自身の手でリノベーションし、奥様と2人の娘さんと4人で暮らしている。茨城ではサウナやゲストハウスの運営を始めようと、現在はその準備に忙しくしつつ、家族との時間も大切にしながら理想の暮らしを形づくっている最

【story15】シェアハウスと本屋と-千住暮らし100stories-

R65不動産 代表取締役 山本遼さん 32歳 荒川と隅田川に囲まれた小さな千住のまちに、今、ちょっとユニークなシェアハウスが増殖(?)しているのをご存知だろうか。千住仲町の「ショウガナイズ北千住」、千住柳町の「チョイふるハウス北千住」、千住河原町の「日日nichinichi」、千住旭町の「アサヒ荘」、そして誕生したばかりの千住橋戸町の「メゾンまばたき」。 名前を聞くだけでも何だか好奇心をそそられるが、その仕掛け人が、山本遼さんだ。千住には18の町名があるが、まるでその一つ

【story14】自転車で繫ぐ地域の絆(自転車雑貨 FLIP&FLOP)-千住暮らし100stories-

自転車雑貨 FLIP&FLOP代表 中太理貴さん(45歳) 個性派自転車ショップができるまで宿場町通り商店街は北千住駅の線路に並行して南北に伸びる、人通りの多い商店街だ。飲食店やヘアサロン、パン屋、和菓子店、コンビニなど多彩な店舗が並ぶこの商店街を北に進み、郵便局とかどやのやりかけ団子の間の小道を曲がると、「自転車雑貨 FLIP&FLOP」が現れる。 FLIP&FLOPは自転車を中心に、自転車用のグッズやアクセサリー、アパレルなども扱う店だ。 FLIP&FLOPの開店は

【story13】銭湯とハンコと自転車-千住暮らし100stories-

銭湯ハンコ作家 廣瀬十四三さん 北千住と言わないの?から始まったお気に入りの場所を聞くと、次々に名前が挙がる。千住の銭湯やカフェ、区外の公園やスーパー。ハンコ作家というと勝手にインドア派をイメージしてしまうが、行動範囲の広さから伸びやかな廣瀬さんの千住ライフの楽しみ方が伝わってくる。 千住東のマンションは夫婦の自宅兼、廣瀬さんの仕事場。最初の3年間、住んでいた国道4号線沿いの寿町のマンションより狭かったが、広いバルコニーと近くの桜並木が気に入って移った。車もあまり通らず静

【story12】子ども達と世界を結ぶ(HOSTEL 1010、MILLS COFFEE)-千住暮らし100stories-

HOSTEL 1010、MILLS COFFEE 店主 欒天翔さん 38歳 Profile らんてんしょう 1983年上海生まれ。子どものころ、文筆家の父がラジオの海外チャンネルを聞いていたことから海外の文化に関心を持つ。中でも日本のアニメや文学に興味を持ち、約2年、独学で日本語を勉強。上海での日中交流パーティで後に妻となる百恵さんと出会い、約1年間、遠距離恋愛。2011年3月11日の東日本大震災を知り「彼女を助けに行かなくては」との思いで3月下旬来日。しばらくは浅草の日本