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これまで誰も経験した事のない社会がやってくる!(その2)

若者がいない! ― 大学の大倒産時代!

 ちょっと古い話になりますが、2012年11月、田中文部大臣がすでに大学設置審議会が認めた翌年度新設予定の3大学について不認可としたことが大きな話題になりました。その決定の仕方が突然であったし、もうすでに、建物も出来上がり、学生募集もしていることから、大臣の決定に対し批判の声が多数あがりました。
 一方でこの問題が、今日の大学の現状と将来にかかえる問題点をあからさまに炙り出しました。少子化の中でも定員が増え続ける大学の実態が明らかになることで、単純に「人口減少社会」においてこれ以上大学を増やしていいのかという疑問の声も上がりました。
 そもそも大学の総定員は18歳人口に大学進学率を掛け合わせることによってある程度の予測ができるものです。 
下の表を見てください。このグラフは大学への進学年齢である18歳人口の推移と大学進学率の推移、大学進学者数の過去の実績値から将来予測を表したものです。大学進学者数の将来予測は18歳人口の中で専門学校へ行く人数、就職する人、自営業の人、海外へ出る人、などなどを除いた、「予想大学生数」の人数です。
大学は、義務教育化してほぼ100%が進学する高校と違い、進学率が6割弱の水準であり、専門学校を選択する者も2割を超えていますので、18歳の人口のうちの大学進学率は今後はそんなには増加しないと思われています
 この表から見える事は、18歳人口の減少を大学進学率の上昇では支えきれずに2026年には大学進学者数はピークを迎え、その後長期に渡り(グラフでは2050年までを表しています)減少が続き、大学の定員割れが多発し、大学そのものの維持ができなくなることが予想されます。
そうなると現在の大学は次々と経営不振に陥り、倒産していくことになります。あるいは大学の縮小、廃校が進むと考えられます。
普通の民間企業以上に、多くの税金が投入される大学の倒産は社会問題を引き起こす要因になります。
 大学をさらに増やして、定員をさらに増やすようなことは、今後、続けられない事は誰の目にも明らかなのです。それにもかかわらず、毎年々、大学の新設や学部の新設が今なお続けられています。

大学進学者数のピークは2026年

 このように見てくると今後の人口減少社会で大学の経営危機は必須であり、大学はその「あり方」を含め、抜本的な改革が求められていることは言うまでもないと思います。
 私が思うには、日本の大学は、激しい受験戦争と厳しい労働現場に入る前の一時の“息抜き”の期間になっている現実があると思います。そして、学生は何を将来したいのか、何を学びたいのか理解せずに入学し、四年間の人生のモラトリアムを経て就活に入ります。そして、社会に出ると、現実社会との大きなギャップを感じ、厳しい就職戦線を勝ち抜いて就職できたにもかかわらず、3人に1人が3年以内に退職するという事態が起こっています。これらの社会に出た若者の多くは、学生時代に勉強しておくべきだった分野について後悔の念にかられているのではないでしょうか? 
 これからの厳しい「人口減少社会」を生きていくうえでは、勉強は生涯欠かせないものになります。それも受動的な「学び」ではなく、働く中で、何が必要か、何を学ぶのか、を感じ取り、能動的に大学へ出かけていくことが必要になります。まさに働きながら学ぶ時代が到来するわけですし、それがイノベーションにもつながります。学生時代に勉強した物を持って社会に出るのではなく、勉強と労働という2者を同時平行で行っていくことでこそ、仕事にも勉強にも意義を持たせることができるのです。
 そうなると、大学の在り方は大きく変わらねばなりません。高校までに基礎知識を学び、大学で専門知識を学び、それを持って社会で働くということでは、対応できない時代が来ます。それは、1日働いた後、夜間や休日に学校へ行くという生活を意味するものではありません。
例えば週の3日は職場で働き、週の3日は大学で学ぶという生活も考えられるのではないでしょうか?高校を卒業した後、大学は週2~3日で6~8年通い、残りの日は仕事をするというような生活もありではないでしょうか?
 大学は社会人生活を送りながら、平行して、あるいは出たり入ったりできるもっと自由な存在でなければならないと思っています。そこにはいろんな年代の人が学んでいるべきでしょう。そうなれば、大学は、もはや若者が人生のモラトリアムを過ごすための場所ではなくなっているでしょう。
 そんな社会になれば、もちろん企業も変わらなければなりません。大学に行く人は短時間勤務=有期雇用というような硬直した制度ではなく、人生のそれぞれのステージにあわせた柔軟な働き方ができるような、新しい雇用管理制度が必要になって来ます。働き方にも、学び方にも、選択肢の多い多様性が求められる時代が来るのではないでしょうか?

子供がいない! ― 高校生数はピーク時の3分の1に。 学校スポーツの落日                             

全国高校生徒数推移(学校基本調査)

 子供人口の減少は、高校にも大きな影響を与えています。高校在学生の数は2010年時点で約337万人でしたが、その後一貫して減少を続けています。そして、今後も減少が続き、2050年を超えると、総数で200万人をも下回るようになります。1万人を切る県も出てくるかも知れません。
 高校生絶対数の増加は、高校進学率がすでにほぼ上限の97%に達しているため、これ以上望めない状態になっていますから、この減少傾向は間違いなく続きます。そして、このことは、私学の経営に大きな影響を与えるだけでなく、公立の高校も過剰になり、統廃合が進むものと思われます。
2020年の1高校当たりの生徒数は全国平均で約634人ですから、これが運営上の適正人数であると仮定すれば、生徒数が200万人位になったら、高校数は3150校位でよくなり、2020年現在の4874校から1700校余りがが淘汰されることになります。
 現実には学校を簡単に廃校にすることはできませんから、生徒数の少ない学校が増加したり、地方では都市部の分校になることも考えられますが、それでもかなりの数の学校が廃校になると予想されます。高校生人口の減少は他にも、教職員数の減少、学習塾、教科書出版社、学校制服等学校関連の業者の経営にも大きな影響を与えることでしょう。
 高校生数の大幅減少は高校スポーツにも大きな影響を与えるでしょう。
例えば、男子の運動部系の部員数を、高野連、高体連発表数字で見てみましょう。2020年のデータで見れば、男子高校生の内、高野連、高体連でカウント(登録)されている人数は約85万人にも及び、男子高校生約155万人の54.9%にもなります。
 しかし、この54.9%という数字を将来の男子高校生人数に当てはめて見ると、平成30年約77万人、平成40年63万人、平成50年58万人、平成60年51万人と大幅な減少が続いていきます。
各競技とも高校生年代での競技人口の奪い合いは熾烈になるでしょうが、傾向からいって、多様化が進み、1つの競技に集中することはないと考えると、どの競技も競技人口の減少に苦しむことが予想されます。
 ちなみに一番多い硬式野球も2010年度での男子高校生の内の野球部員比率は約10%ありましたが、2023年には12.8万人と約8%程に低下していますから、今後も野球部員比率8%を維持できたとしても、2040年9.2万人、2050年8.4万人、2060年7.3万人と激減することが予想されます。2014年17万人が過去最高の部員数ですから、運営に支障がでることは避けられないと思います。
 また当時とは全く違った状況が運営の妨げになります。すなわち、一つには、都市部と地方の格差が著しく子供人口が半分以下になる県が出てくるなど、地方の衰退が著しくなること。2つ目には、野球名門校など100人を超える部員を持つ高校に対し、9人のメンバーを確保するのがむずかしい高校も多くなるなど、学校間の格差が拡がって行くこと。人口の減少(高校生数の減少)がその後も止まらず、今世紀末まで続きそうであること、などを考えると、高野連加盟校は減り続け、1県1代表のような現在の運営方法は行き詰まるでしょう。高野連は今後、抜本的な改革が迫られています。
そして高校野球だけでなく、高校サッカーなど、他のスポーツについても同じ状況にあり、今後、学生スポーツの立ちいかない時代が来ます。また高校スポーツのバックアップに大きな力を持っていた新聞社が購読者数の激減で今後厳しい経営状況に立たされることが予想されることなどもマイナス材料になります。
 地域のスポーツクラブも育ってきている今、もはや『歴史と伝統を持つ』高校スポーツも終焉の時が来るのではないでしょうか?
教育の場である学校とスポーツの場が切り離される時代が来るのではと思います。

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