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【OKTA/Q3-2021決算速報】アイデンティティ・アクセス管理サービス(IDaaS)を提供するオクタ、2021年第3四半期の結果は売上◎、EPS◎、ガイダンス◎。予想上回りAH上昇。今回もEarnings CallチェックとCANSLIM定点観測。

このマガジンは取り上げた企業の投資を推奨する意図は全くないことを改めて確認いたします。企業の業績チェック、ビジネスモデル、新着ニュースをシンプルに定点観測する読み物です。

(OKTAの会社概要・歴史・ビジネスモデル考察は「【OKTA/米国株銘柄分析】アイデンティティ・アクセス管理サービス(IDaaS)を提供するハイパーグロース企業の概要・ビジネスモデル・今後の株価見通し(将来性/成長性)を決算とCANSLIMの観点から考察。」を参照。)


「OKTA(ティッカーシンボル:OKTA)」のQ3-2021の決算結果が出ました。

After Hourで株価は決算を受けて下落。Q3決算及びガイダンスはアナリスト予想をしっかりクリアしてきました。

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三十分後に反転しました。一通り見て、下がる要因がなかったので安心しました。しかし、安定しない市場ですね。

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(2021年12月2日時点の株価チャート)

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OKTAの2021年第3四半期の決算結果

OKTAは、IDaaS(Identity as a Service)と呼ばれる「セキュリティサービス」を提供する企業です。

OKTAの主な収益源泉は法人にアイデンティティセキュリティを導入し、そこから発生する「サブスクリプション(サブスク)収入」です。サブスクとは、例えばアマゾンプライム、ネットフリックスなど月額で毎月顧客から支払いを受ける形態です。


収益形態から、非常に業績見通しがつきやすく、投資家からも未来が予測しやすくなるので好まれやすいです。サブスク企業の重要KPIはユーザー数ですね。

※企業決算分析をする上で、最優先で見なければならないのは、「実績(売上高・EPS・来期予想ガイダンス)」が決算前のアナリスト予想をしっかり上回っているかどうかです(ガイダンスを出さない企業もあるので注意)。

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※YoY = year over year(前年同期比)

□ OKTA.Incの2021年第3四半期決算

・売上:$351M/YoY+61%(予想$327M)◎
・EPS:-$0.07(予想-$0.23)◎


□ 2021年第4四半期(Q4-FY22)ガイダンス

・売上:$358M~$360M(予想$354.79M)◎
・EPS:-$0.25~-$0.24(予想-$0.28)◎


□ 2022年度(FY22)通年ガイダンス

・売上:$1.275~$1.277B(予想$1.25B)◎
・EPS:-$053~-$0.52(予想-$0.74)◎

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売上・EPSは予想を全てクリア。RPO、NRRの水準(後続記述)を考えると、業績は非常に好調ですね。それでは詳細を見ていきましょう。


■ Revenue(売上高)

◇ Q3-2021:$351M/YoY+61%(予想$327M)

市場予想をしっかり超えてきています。サブスクリプション収益が$337M(YoY+63%)です。サブスク収入は全体の96%を占めます。素晴らしい収益体質です。


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※YoY = year over year(前年同期比)

Q1-2018:$83.62M
Q2-2018:$94.58M
Q3-2018:$105.57M
Q4-2018:$115.47M
Q1-2019:$125M(YoY+49.75%)
Q2-2019:$141M(YoY+48.52%)
Q3-2019:$153M(YoY+44.95%)
Q4-2019:$167M(YoY+44.91%)
Q1-2020:$183M(YoY+46%)
Q2-2020:$200M (YoY+43%)
Q3-2020:$217M(YoY+42%)
Q4-2020:$235M (YoY+40%)
Q1-2021:$251M(YoY+37%)
Q2-2021:$316M(YoY+58%)
Q3-2021:$351M(YoY+61%)←New!!

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売上成長率は加速しています。力強いです。OKTA単体で売上がYoY+40%増加です。


売上の79%が米国、21%が海外となっています。海外比率がAuth0の買収で飛躍しています。

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■ EPS(1株当たりの当期純利益)

◇ Q3-2021:-$0.07(予想-$0.23)

これで売上、EPS共にアナリスト予想はクリアしました。過去のEPS(non-GAAP)とYoYの推移は以下の通りです。


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Q1-2019:-$0.19
Q2-2019:-$0.05
Q3-2019:-$0.03
Q4-2019:-$0.01
Q1-2020:-$0.06
Q2-2020:$0.07(YoY +240%)
Q3-2020:$0.04(YoY +233%)
Q4-2020:$0.06(YoY +700%)
Q1-2021:-$0.1
Q2-2021:-$0.11
Q3-2021:-$0.07 ←New!!

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■ Non-GAAP Gross Margin/Non-GAAP Operating Margin

◇ Non-GAAP Gross Margin:

vs. Q3 FY21:-140 bps(76.9%)

◇ Non-GAAP Operating Margin(営業マージン)

vs. Q3 FY21:-520 bps(-2.7%)


■ Free Cash Flow Margin

vs. Q3 FY21:-960 bps(9.5%)

3,300万ドルのフリーキャッシュフローを創出。

企業KPI

■ Net Retention Rate(売上継続率)

NRRは既存顧客の売上を前年比で維持できているかを計る指標です。

Q3-2021も122%を達成しています。100%を常に超えているというアップセルが素晴らしいですよね。

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OKTAはQ1-2019から120%前後の水準を維持しています。これはつまり、既存顧客の維持のみならず、さらに違うシステムを導入してもらったり、アップグレードしてもらい、売上を向上していることを意味します。

サブスクリプションのビジネスは顧客の維持がとても大変です。しかしOKTAは維持+αの実績を出していることになります。非常にビジネスが巧みです。


■ Remaining Performance Obligations (RPO)

RPOは受注残です。売上に計上される予定の契約になります。OKTAのRPOは右肩上がりの増加を継続。Current RPO(今後12ヶ月間に認識する予定の契約収入)がYoY+57%、RPOがYoY+49%(前四半期YoY+60%)。


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とはいえ、NRRとRPOはまだまだ増加しており、WHF銘柄の株価上昇トレンドは終焉を迎えていますが、OKTAはロングトレンド銘柄として今後も期待して良い銘柄なのではないかと思います。


■ Total Customer Count(総顧客数)

総顧客数は14,000社(Auth0顧客1,660含む)に到達し、引き続き右肩上がりの成長を続けています。

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Oktaプラットフォームに700件以上、Auth0に200件以上の新規顧客を追加。

年間契約価値(ACV)が10万ドル以上の顧客を200社以上追加(約半数が新規顧客)


■ Customers with >$100K ACV

10万ドル以上の契約の顧客も今期は2825社に到達。堅調です。

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ACV25万ドル以上の顧客コホートの成長率は、すべて50%以上の伸びを示しています。

連邦政府の運輸省監察局からの受注も獲得。

世界最大級のアスレチック・パフォーマンス・ブランドであるUnder ArmourがOktaの新たな顧客アイデンティティを利用開始。


Under Armour


あのアンダーアーマーも消費者の購買活動の変化に柔軟に対応していますね。デジタルとリアル店舗で売るオムニチャネル時代到来です(AFRM、SHOP等がキーになってくる)。


Fortune 100の金融サービス会社は、第3四半期にAuth0を導入したと公表されました。

Auth0の顧客でOktaワークフォースの新規顧客となったのは、NASCAR、SigTec、Johanna、そしてTopenPrinting(グローバル1000企業)などがあり、シナジーを早速発揮していることがわかります。


財務状況(資本配分/自社株買い/M&A)

■ 資本配分

OKTAは公募は実施していません。自社株買いの動きも特にありません。

■ M&A(auth0買収完了)

Q4-2020にアイデンティティプラットフォームを提供する「Auth0」を65億ドルで買収。5月6日にM&Aのプロセスは完了しました。

このM&Aに関しては、OKTAの総括記事を参照してください。(■ M&A項項目で)詳しく解説しています。


FY-2022ガイダンス

■ Q4-2021:


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・売上:$358M~$360M(予想$354.79M)◎
・EPS:-$0.25~-$0.24(予想-$0.28)◎
・Non-GAAP Operating Loss:$35M to $34M
・Non-GAAP Net Loss Per Share:$0.25 to $0.24
・Weighted avg share count (basic):154 million

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■ FY-2022:


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・売上:$1.275~$1.277B(予想$1.25B)◎
・EPS:-$053~-$0.52(予想-$0.74)◎
・Non-GAAP Operating Loss:$85M to $84M
・Non-GAAP Net Loss Per Share:$0.53 to $0.52
・Weighted avg share count:147 million

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ガイダンスは総じて良いですね。上方修正しております。After Hourで株価が上がって然るべきだと思います。


Earnings Call



◇ 役員説明

  • 世界経済が回復に向かう中、アイデンティティの重要性は加速し続けている。

  • クラウドとハイブリッドITの展開、デジタルトランスフォーメーションプロジェクト、そしてゼロトラストセキュリティ環境の採用が、引き続きOktaの成長を牽引。

  • 史上初の*StateRAMPベンダーリストに含まれた。このリストへの掲載は、州政府や地方自治体がプラットフォームの変革を推進するためのOktaの取り組みを示すもの。

*StateRAMPは、米国国立標準技術研究所(NIST)の情報システムおよび組織のセキュリティおよびプライバシー管理に基づいたセキュリティ基準に基づいた審査を行う非営利団体です。州や地方自治体の利用するクラウドサービスプロバイダーへ要求されるサイバーセキュリティ標準への対応を標準化するというニーズから設立されました。

https://current.ndl.go.jp/node/45029
  • 州政府の認可を受けることで、政府や調達担当者はサービスプロバイダーのデータセキュリティ能力に自信を持ち、州政府の認可を受けたSaaSソリューションを調達するための中心的な場所を提供することができる。

  • OKTAはすでに、カンザス州、イリノイ州、アイオワ州、モンタナ州などの州政府機関、またロサンゼルス市、ラスベガス市、ラリマー郡などの地方政府機関でも成功を収めている。

  • 第4四半期は常に年間で最大の四半期であり、良いスタートを切ることができた。市場では、クラウドを優先した最新のアイデンティティへのアプローチが引き続き行われていることは明らか。

  • Oktaは、様々なユースケースを解決するクラウドネイティブなアイデンティティソリューションを提供しており、800億ドル規模の市場機会を捉え、それを実現するために最適な立場にあることも明らか。




◇ Q&A

Q1)連邦政府関連では、大規模な契約の話がありました。明らかに、大統領令により、アイデンティティと多要素認証に焦点が当てられている。しかし、州や地方では、このようなチャンスをどのくらいの期間で実現するのかを検討している?数年後には、公共部門の収益構成比はどのくらいになる?

・Todd McKinnon(CEO)

公共部門は、我々にとって非常に重要な部門。経済全体の中でも大きな位置を占めており、その結果としてIT投資の大きな部分を占めている。テクノロジーに大きな依存をしている他の組織と同様に、そのテクノロジーの中でアイデンティティに大きな依存をしているため、我々の優先事項の大部分を占めている。

来年は認証取得の促進に注力しており、それが連邦市場での成功につながると考えている。大統領令の話は、セキュリティがいかに重要であるか、IDソリューションが何をしてくれるのか、ゼロトラストが何をしてくれるのか、多要素が何をしてくれるのかが、この分野のテクノロジーやIDを購入する人たちの頭の中でさらに明確になった。

しかし、認証やFedRAMP、あるいは先に述べたように州の規制など、いくつかの具体的な要件がある。

世界は、ここ2、3年のように、アイデンティティがその中核であることを本当に理解しつつある。多くのCIOが行っている調査を見るとアイデンティティとセキュリティがすべての調査のトップに挙げられています。これは何よりも、我々の将来と、我々が言う800億ドルのTAMに向けた前進にとって、非常に良い兆し。

Q2)NRRについて。122%とは良い数字。特にAuth0の顧客層において、クロスセリングやアップセリングがうまくいったと。この数字に含まれる他の要素は?例えば、価格の引き上げは?解約については?

・Jacques Frederic Kerrest(COO)

プラットフォームの幅広さと力強さ。クロスセルやアップセルの機会はますます増えており、新規ロゴの純増も増えている。Okta単体では、前四半期に700社以上の新規顧客を獲得した。Auth0はさらに200以上のお客様を追加。

同時に、統合からわずか2四半期目にして、我々が楽観視していたAuth0のクロスセルがすでに多く発生している。Auth0の旧顧客が新たにOktaワークフォースの顧客になったり、逆にOktaを長く使っていた人が、上場企業の一員であるAuth0を安心して利用できるようになったりしている。これは非常にうまくいっていて、今後も続くと思う。




CANSLIM定点観測

OKTAは現在株価が地を這っており、50MAを超えて買い場が近づいた際にCANSLIM分析を実施したいと思います。ここを省く代わりに新たな投資妙味のある銘柄を取り上げていければと思います。

「CANSLIM」は成長株発掘法の著者、ウィリアム・オニール氏の成長株の見極めに用いられる判断指標です。


CANSLIMとは以下の頭文字です。これら全てを満たすと「大化け株」となります。(満たしていなくても有望銘柄として売買はOK、投資家の技量が試される)

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・C(=Current Quarterly Earnings=当四半期のEPSと売上)
・A(=Annual Earnings Increase=年間EPSの増加、高いROE水準)
・N(=New Products, New Management, New Highs=新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値)
・S(=Supply and Demand=株式の需要と供給)
・L(=Leader or Laggard=主導銘柄か、停滞銘柄か)
・I(=Institutional Sponsorship=機関投資家による保有)
・M(=Marker Direction=株式市場の方向)

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筆者が行った前四半期(2021/9/2)の判定結果は以下の通りでした。(Q1→Q2)

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C:X → X
A:△ → X
N:X → X
S:X → X
L:X → X
I:◯ → △
M:◯ → ◯

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決算も素晴らしい企業ですが、地合いが回復し、また注目される機会を待ちましょう。


ーFINー

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