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【大化け株を捉える/CANSLIM分析】Tesla, Inc. (TSLA/テスラ)_Q1-FY22決算_2022年4月21日

(全文無料で読めます)

このマガジンは取り挙げた企業の投資を推奨する意図は全くないことを改めて確認いたします。企業の業績チェック、ビジネスモデル、新着ニュースをシンプルに定点観測する読み物です。


◇ 大事なお知らせ

本文に入る前に、一点大事なお知らせです。今まで本記事のような銘柄分析記事は無料で配信してきましたが、今後さらなる「クオリティの底上げ」と、「発信領域の拡大」をしていくべく、2022年5月1日より有料マガジンにて発信させていただく運びとなりました。今後とも末永く、何卒よろしくお願い申し上げます。

(マガジンの詳細説明記事)


(ここからが本文です)


本日「Tesla, Inc.(ティッカーシンボル:TSLA)」のQ1-2021の結果が出ました。


上記の通り事前予想を上回る素晴らしい決算であり、チャート的にも「カップウィズハンドル」を形成しており、1152ドルが買い場となっております。まだ買い場までは少し距離があるのですが、注目銘柄ということでCANSLIM分析を行なっていきます。

2022年4月21日時点の株価チャート


CANSLIM分析(2022年4月21日時点)

決算データは以下でまとめていますので、テスラがどんな決算を出したかをまずは把握しましょう。


「CANSLIM」は成長株発掘法の著者、ウィリアム・オニール氏の成長株の見極めに用いられる判断指標です。


オニール氏の理念は以下です。


・CANSLIMを満たすかどうかで真の成長株かどうかを見極める。
・株価チャートで売買のタイミングを測り大きな利益の獲得を狙う。



CANSLIMとは以下の頭文字です。これら全てを満たすと「大化け株」となる可能性が非常に高くなります。(満たしていなくても有望銘柄として売買はOK、投資家の技量が試される)


・C(=Current Quarterly Earnings=当四半期のEPSと売上)
・A(=Annual Earnings Increase=年間EPSの増加、高いROE水準)
・N(=New Products, New Management, New Highs=新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値)
・S(=Supply and Demand=株式の需要と供給)
・L(=Leader or Laggard=主導銘柄か、停滞銘柄か)
・I(=Institutional Sponsorship=機関投資家による保有)
・M(=Marker Direction=株式市場の方向)



筆者が今回行ったTSLAのCANSLIM判定結果は以下の通りでした。前回判定したのはQ3決算時点でした。


C:◎
A:◎
N:○
S:○
L:◎
I:◎
M:△



ほぼ完璧に近いです。ファンダメンタルのみを見れば「買い」ですが、忍耐強く買いポイントまで資金投下は我慢しましょう。

懸念事項として、最も大事と言っても過言ではない「M=株式市場の方向」が限りなくXに近い△で非常にネックです。どれだけ優れた銘柄でも、マーケットが悪ければ上昇は難しいです。その点も踏まえ、TSLA株に手を出すのであれば損切りなどリスク管理を徹底するようにしてください。


それでは各判定の詳細を見ていきましょう。


■ C(=当四半期のEPSと売上)[◎]

C(=Current Quarterly Earnings)を見ていきます。ここでは以下の2つを判定します。


⑴ 当四半期のEPSが前年同期比で25〜30%以上か?
⑵ 売上が25%(または直近3四半期で伸び率が加速)以上伸びているか?



⑴ 当四半期のEPSが前年同期比で25〜30%以上か?▷◎

当四半期のEPSが前年同期比で大きな伸び率を示しているかどうかを見ます。最低目標は25〜30%です。より保守的に見るのであれば40〜50%です。

テスラはYoY+246%です。異次元ですね。当然判定は「◎」となります。


■ EPS推移

Q1-2019:$ -0.57
Q2-2019:$ -0.22
Q3-2019:$0.37(YoY -36%)
Q4-2019:$0.41(YoY +5%)
Q1-2020:$0.23(YoY +140%)
Q2-2020:$0.44(YoY +300%)
Q3-2020:$0.76(YoY +105%)
Q4-2020:$0.80(YoY +95%)
Q1-2021:$0.93(YoY+304%)
Q2-2021:$1.45(YoY+230%)
Q3-2021:$1.86(YoY+145%)
Q4-2021:$2.54(YoY+218%)
Q1-2022:$3.22(YoY+246%)←New!!



その他補足判定:


① 過去10四半期に以前に比しEPS成長率が加速しているか?▷◎
② 2四半期連続で大幅にEPSが成長しているか?▷◎
③ 翌四半期、翌々四半期も力強い成長が予想されているか?▷◎
④ EPS成長率が66%以上の減少が二四半期続けば危険水域▷◎



⑵ 売上が25%(または直近3四半期で伸び率が加速)以上伸びているか?▷◎

売上が25%(または直近3四半期で伸び率が加速)以上伸びているという条件を見ていきます。こちらも文句なしです。


■ 売上推移

Q1-2019:$4.541B
Q2-2019:$6.350B
Q3-2019:$6.303B
Q4-2019:$7.384B
Q1-2020:$5.985B(YoY +32%)
Q2-2020:$6.036B(YoY -5%)
Q3-2020:$8.771B(YoY +39%)
Q4-2020:$10.744B(YoY +46%)
Q1-2021:$10.389B(YoY +74%)
Q2-2021:$11.958B(YoY+98%)
Q3-2021:$13.76B(YoY+56.88%)
Q4-2021:$17.71B(YoY+65%)
Q1-2022:$18.756B(YoY+81%)←New!!



⑴EPS、⑵売上双方の条件をクリアしているので、C(=Current Quarterly Earnings)は「◎」です。


■ A(=年間EPSの増加) 前回と同様[◎]

次はA(=Annual Earnings Increase)です。

年間EPSが過去3年連続で増加しているかどうか、増加率が25〜50%以上の銘柄かを見ていきます。

2年目のEPSが下がっている銘柄は除外されます。また、企業のROEが最低でも17%を超えているかどうかをチェックします。


わかりやすく並べると、ここでは以下の2つを見ていきます。


⑴ 年間EPSが過去3年連続で増加しているか?
⑵ 企業のROEが最低でも17%を超えているか?



⑴ 年間EPSが過去3年連続で増加しているか?▷◎

3年間のEPSを確認します。


2019年:$0.03(+900%)
2020年:$2.24(YoY+7,367%)
2021年:$6.78(YoY+202%)
2022年:$10.53(Q1+Yahoo Finance予想、YoY+55%)



過去3年連続増加しており、また2022年に向けても高い確率で増加すると考えられ、この項目は「◎」です。


⑵ 企業のROEが最低でも17%を超えているか?▷◎

次にROEです。最低でも17%を超えているかどうかをチェックします。

テスラの直近12ヶ月(=ttm)のROEは20.43%です。昨年のQ3時点では12.27%でした。大幅に改善しています。判定は「◎」です。

実際に、決算を見ていただければわかりますが、営業利益率が画期的に改善しています。


⑴⑵を総合的に考えるとA(=Annual Earnings Increase)は「◎」でしょう。


■ N(=新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値)[○]


Q1-2021からファンダメンタル部分の判定に変更はありません。正しいベースを抜けて新高値を更新した時点で「◎」となります。

現状は、ベルリンギガファクトリー、上海ギガファクトリーを建設し生産も順調。テキサス、オースティンでもモデルYを生産し成功しており、2023年にはサイバートラックの量産体制に入ります。

N(=New Products, New Management, New Highs)の判定は「◯」です。新高値は1243ドルです。ここを超えてきたら強気で買っていける水準です。(マーケットの状況が良い場合に限りますのでご注意ください)

■ S(=株式の需要と供給)[◯]

Sは以下の複数項目があります。一つずつチェックしていきます。


⑴ 浮動株比率→大企業(米国基準で時価総額100億ドル以上)であれば経営陣が1-3%、中小企業であればそれ以上が望ましい
⑵ 自社株買いをしている企業かどうか。
⑶ 企業の負債比率が低く推移しているかどうか。
⑷ 直近の出来高(機関の大きい買いが確認できるか)



⑴ 浮動株比率▷◯

大企業(米国基準で時価総額100億ドル以上)であれば経営陣が1-3%、中小企業であればそれ以上が望ましいです。企業として株価上昇に対する努力への期待度を示します。

テスラの総発行株式は1000百万株です。(10億株)理想は50百万程度の発行済み株式数ですが、テスラはすでに非常に規模の大きい企業ですので、相当な買い需要が必要であることは認識しておきましょう。


・Shares Outstanding(総発行済株式数):1000百万株
・Float:(浮動株式数):843百万株
・浮動株比率:84.3%



簡易的ではありますが、同社の浮動株比率は84.3%と経営陣がテスラ株を握っており、今後も期待して良さそうです。「◯」です。


⑵ 自社株買いをしている企業かどうか?▷X


実施していません。Xです。

「自社株買いをしている企業が望ましい」という点については、テスラは満たしていません。アップルやペイパルのように積極的な自社株買いは行わず、まだまだ公募増資のステージです。

とはいえ、2020年2月公募時にマスク氏が1000万ドル、テスラ役員のラリー氏が100万ドルと規模は大きくないものの、経営陣が自社の株を積極的に購入している点は好感が持てます。


⑶ 企業の負債比率が低く推移しているかどうか?▷◎


こちらは年間で見る指標です。Q4-2021まで財務健全性は高まっています。工場を立ち上げているのにこれは凄いですね。文句なしで「◎」です。


2021年

総資本:62,131 million
負債:30,548 million
負債比率:49.16%

■ 2020年

総資本:52,148 million
負債:28,418 million
負債比率:54.5%

■ 2019年

総資本:34,309 million
負債:26,199 million
負債比率:76%

■ 2018年(10- Kの数字を引用)

総資本:29,740 million
負債:23,427 million
負債比率:78.8%



⑷ 直近の出来高(機関の大きい買いが確認できるか)▷◯

2022年4月21日時点でMarket Smithの「Acc/Dis Rating」は「B」です。

Acc/Dis Rating = Accumulation/Distribution Rating(過去13週間における特定の銘柄に対する機関投資家の買い(集積)と売り(分配)の相対的な度合い)

A = 買いが多い
B = ほどほどの買い
C = 買いと売りが同程度
D = 適度な売り
E=売りが多い

ほどほどに買われていると言えるので、「◯」とします。


⑴「◯」⑵「×」⑶「◎」⑷「◯」自社株買いは置いておいて、S(=株式の需要と供給)は「◯」としたいと思います。


■ L(=主導銘柄か、停滞銘柄か)[◎]

業界内で最高の業績を記録しているかどうかを測る「L(=Leader or Laggard)」を見ていきましょう。

これは、レラティブストレングス指数が80〜90台かどうかで判断をします。

テスラは90なのでL(=Leader or Laggard)は「◎」です。IBDでもグループ内ランクは1位です。


■ I(=機関投資家による保有)[◎]


I(=Institutional Sponsorship)を見ていきます。

株価を押し上げるには大きな需要が必要です。投資信託、年金基金、ヘッジファンド、保険会社など。機関投資家に保有されている銘柄であるかどうかが非常に重要になります。


また、その機関投資家は高いリターンを出す優秀な組織体(ファンド)なのか?という点も大切です。

見極め方として、最近の四半期で保有する機関投資家の数が着実に増加しているか、株主数が著しく増加しているか。


また、株主となった機関投資家は誰なのかまで詳しく調べます。

優秀なファンドが大人買いしているか」を満たさなければならないのでかなり高度な判定です。まずはテスラの機関投資家保有株数の直近の動きです。

引用:Fintel「Institutional Ownership and Shareholders」


機関投資家のポジションは引き続き堅調、良い趨勢です。年初に株式市場は下落し、まだまだ不安が残る状況ですが、引き続きテスラを保有している機関投資家はやはり多いですね。

以下はMarketSmithで確認できる、テスラに投資をしている機関投資家の数です。テスラを保有するファンド自体は2022年に入っても増えていることがわかります。というかまだ増えてるのかと引いています。


Mar-20:1,412
Jun-20:1,678
Sep-20:1,938
Dec-20:2,421
Mar-21:2,658
Jun-21:2,786
Sep-21:2,994
Dec-21:3,412
Mar-22:3,500



テスラを保有しているファンドのほとんどがAランクです。American Funds Growth Fundに、Baron Partners、Habor Capitalなど錚々たるメンバーです。


I(=Institutional Sponsorship)は文句なしで「◎」です。


■ M(=株式市場の方向) [△]

M=Marker Directionはテスラに関わらず全銘柄に関わることです。

「強気相場」であればグロース株を積極的に買っていっても良いとされています。2022年4月21日現在は「Uptrend under pressure(上昇相場頭打ち)」です。

売り抜け日も溜まっており、今は積極的に株を買ってはいけません。判定は限りなくXに近い「△」です。


その根拠は週刊レポートで確認してください(毎週末に定期更新)。

直近のマーケットレポート:


2022年4月21日時点の株価チャート

上記の通り事前予想を上回る素晴らしい決算であり、チャート的にも「カップウィズハンドル」を形成しており、教科書的な投資をするのであれば、マずは1152ドルが買い場となっております。その後は新高値の1243.49ドルです。

まだ買い場までは少し距離があるのですが、買いポイントまでは忍耐強く待つようにしましょう。マーケットも非常に不安定ですので、TSLAのファンダメンタルを吹き飛ばし、市場に巻き込まれ下落する可能性があることも頭に入れておきましょう。


ーFINー


◇ 大事なお知らせ

再掲になりますが、今まで本記事のような銘柄分析コンテンツは無料で配信してきましたが、今後さらなる「クオリティの底上げ」と、「発信領域の拡大」をしていくべく、2022年5月1日より有料マガジンにて発信させていただく運びとなりました。今後とも末永く、何卒よろしくお願い申し上げます。

(マガジンの詳細説明記事)


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