5/10の日記「公園で遊ばせろ。金曜日だぞ。」

おはようございます。僕です。

今日は金曜日。
明日の昼食の弁当を気にして早く帰り、自炊をする時間のことを気にしなくていい。僕はここぞとばかりに普段駅で降りる方と反対の出口で降り、ちょっと遠い百均に行って、ジロジロと商品を見て回った。
百均は無限に入りびたれるような感覚になるから好きだ。あっという間に時間が過ぎる。「逆精神と時の部屋」かよ。
いろいろと見て、結局僕は65cm〜80cmに伸びるつっかえ棒を選んだ。先日オタク・暖簾を購入してしまったので、それを掛ける用のやつだ。僕はふんふんと鼻を鳴らしながら、それを握ってレジの列に並んだ。

ここで事件が発生した。
やけに百均の店員がバタバタと動き回り、レジの列が長くなっていたのだ。
レジには店員が一人しかおらず、店員はある外国人さんの接客をしていた。
店員が一人しかいないのなら客を捌くのに時間がかかるのはわかるが、それにしても遅すぎる。外国人さん一人を相手にしてるはずなのに、僕はかれこれ五、六分待っている。遅すぎるだろ。
僕はレジがどうなっているのか気になり、チラと列から顔を出し、レジの様子を眺めた。

レジの明細が表示される液晶画面には、「¥34,776」と表示されていた。
何が起こったらあんな金額になるんだ。
単純に割り算しても322個商品を買わなければあそこまで到達しないぞ。
僕は気になり、さらに詳細を見てみた。
「サプリメント 322」と表示されている。あの外国人さん、百均でサプリメント322個買っていたのか。

似たようなものは前に見たことがある。近所のデパートの中に入っている百均で買い物をしていたとき、外国人さんがサプリを20個くらい買っていったのをよく覚えている。
外国人さんはどういうわけか、百均でサプリメントを大量に買う。流行っているのかなんなのか、僕にはわからない。

ようやく、もう一人の店員がレジに現れた。手には見たこともないような無茶苦茶でかいレジ袋を抱えていた。あんなサイズあったのか。もうデパートで500円くらいで買うエコバックの倍はでかいだろ。どこに隠し持ってたんだそんなサイズ。
そんな無茶苦茶でかいレジ袋パンパンに詰められたサプリメントを持って、外国人さんは去っていった。どんだけ栄養補助する気だ。もはや主食だろそれ。
外国人さんが去ってから店員さんは他のお客さんにめちゃくちゃ謝りながら接客をしていたが、文句を言う者は一人もいなかった。あのとき、みんなで店員さんに同情していた。あれが僕の求める「優しい世界」なのかもしれない。

さて、買い物が済み、65cm〜80cmに伸びるつっかえ棒を握りしめて家に帰る。
帰り路の途中には公園があった。割と近所にあるのだが、近所と言っても普段通る道の方向ではなかったのでなかなか行く機会がなかった。
そもそも、行って何をするというわけでもない。休日に行っても小学生とママ達がワイワイとしている風景を眺めるくらいしか出来ない。
何が悲しくてそんなことを独身の成人男性がしなくちゃならないんだ。勝手な想像だが、僕と同じような立場の人間は総じて他人の幸福が憎いはずだ。きっとわかってくれる人はいると僕は信じている。

しかし今日は自由な金曜日。フリーフライデーだ。65cm〜80cmに伸びるつっかえ棒も買った僕はもはや無敵の気分だった。
僕は意気揚々と公園に行き、「ブランコに乗ろうか、シーソーに乗ってやろうか」と息巻いていた。

僕はふと、公園の中心にある小山を見た。山と言っても石で出来た遊具の一つのような山だ。滑り台がついていたり、取っ手がついていて登れるようになっていたりする山だった。
僕がその山を見たのは、そこに誰かがいる気配を感じたからだ。普段ろくに人間と交流していないオタクは、人の気配に敏感だ。
僕はじっくりと観察するように小山を見た。やはり頂上に誰かいる。

「誰かがいる」と判明すると、急に恥ずかしくなってきた。
僕はブランコやシーソーに対する威勢がすっかり萎み、そそくさと逃げるようにして公園を後にした。
僕は公園から出る前、そっと振り返って小山の頂上を見た。

高校生とおぼしきカップルが、対面座位の体勢でイチャついていた。

おい、ふざけるな。今日はご機嫌な金曜日だぞ。なんでわざわざ今ここでイチャつくんだ。
遊ばせろ。独身でオタクでご機嫌な成人男性だって公園で遊んだっていいだろ。むしろここしか遊ぶチャンスないんだぞ。遊ばせろよ。

そう叫ぶ気持ちを抑え、僕は悶々とした気分で家に帰り、65cm〜80cmに伸びるつっかえ棒にオタク・暖簾を通し、ドア枠の縁に固定した。

オタク・暖簾をしばらく眺めた僕は、もうご機嫌になっていた。
これからは、ご機嫌な金曜日第二部の開始である。

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