ケーキを作りたかっただけなのに

おはようございます。僕です。

僕が最近お菓子とかそういったものを作り始めてることは前回のnoteで書いたが、今回僕はケーキを作ってみることにした。

と、いうのも、僕がやっているアイドルマスターシンデレラガールズに登場するアイドル、小関麗奈ちゃんの誕生日ケーキを作るためであって、クリスマスに調子こいて作ったケーキとは違う。〝格の違い〟を出さねばならない。

僕は小関麗奈というアイドルを半ば崇拝しているような形で担当しているので、そこらへんのこだわりは下手なガンダムオタクより強い。中高生のガノタを余裕でぶっとばせるレベルでこだわりたい。
そういうことで、僕はスポンジからケーキを焼いてやろうと画策した。

早速昔使わないまましまっておいた大学ノートを押入れから引っ張り出し、ぐるっと円を描いてデザインを始めようとした。
が、全然わからない。どうやってデザインしたらいいかわからないし、結果出来上がったのは幼稚園児が描いた「ハロウィンのお化けの仮装デザイン」だった。
この時点で既に「なんでケーキを作りたいだけなのに幼稚園児になってしまったんだ」と歯ぎしりをしていた。こんなところで幼稚園児並みの画力だったということを嫌でも自覚させられてしまう。誰に言われたわけでもない。「現実」が教えてくれたことだ。僕は微妙な顔のままその「幼稚園児の描いたお化け」の絵を眺めていた。

「まあそこらへんはアドリブでなんとかできるっしょ。チャレンジってそういうもんじゃん」と自分を納得させ、とりあえず作ってみるという方向にシフトチェンジした。
別に諦めたわけではない。「これでいい」という妥協だ。諦めたわけではない。

続いてデコレーションで上に乗せるチョコレートを作る。
今回はただチョコを湯煎で溶かして固めただけのチョコレートにする。温度計を持っていない僕はテンパリングなどわからないし出来ないので、温度ガン無視でホワイトチョコレートを溶かしていった。

が、ここでも若干のトラブルが発生した。
最初、切り刻んだホワイトチョコは順調に溶けていったが、ある一定のラインを超えると急に固まりだした。最初はペースト状から始まり、段々冷えていっているようにガチガチになっていった。ボウルの下は依然としてアッツアツの熱湯のままなのに。
あまりの出来事に「ア ゙ア ゙ッ!?」とチョコレートを溶かすというメルヘンなことをしているようには思えない声が腹の底から響き渡ってくる。僕は一体どこに向かっているんだ。ジャージにエプロンを着けているのに魔王みたいな声を出してしまった。

結局、ホワイトチョコレートは「ちょっと粘度があってボトボトと落ちるようなレベル」になり、僕は仕方なくそれを型に流し込んだ。
多分なんか原因があるんだろうが、ろくに調べずに「チョコ溶かすだけっしょ!楽勝じゃん!」と完璧な死亡フラグを立てて挑んだ僕はさながらゴブリンスレイヤー一話のパーティだ。あんな惨状をキッチンで繰り返すわけにはいかない。最終回のような大団円を迎えるのだ。
いや、ただケーキを作ってるだけだが、「初めて最初から最後までケーキを作る」とはこういうテンションになるものだったのだ。
オタクだから多くの体験をスルーして生きてきたが、自分でスイーツを作ってみるとゴブリンスレイヤー一話のようになると初めて知った。やはりいくつになってもチャレンジは必要ということなのだろう。

チョコを冷やしている間にいよいよスポンジケーキ作りに取り掛かる。
スポンジこそケーキの命。スポンジが台無しだとケーキ全体がダメになる。だってケーキってほぼスポンジで構成されてるから。慎重にいかねばならない。

僕は慎重に粉の量を計り、レシピを何度も見直した。
僕が用意できなかったところはなるべく似たようなもので代用した。例えば今回作るスポンジケーキとはタジン鍋とフライパンを使った蒸し焼きだったのだが、僕は普通に友達からもらった蒸し鍋を使って挑んだ。まあ大丈夫だろう。

卵を黄身と白身に分け、丁寧にミキシングしてヘトヘトになりながらメレンゲを泡立て、黄身と合わせてさっくり混ぜ、粉と合わせてさらに混ぜる。それを型に流し込み、蒸し鍋の中にぶちこむ。
これで万事大丈夫だ。95%レシピに沿ったケーキの作り方だった。

指定の時間通りに火加減を調節しつつ、時間を測って蒸し鍋をコントロールした。これで大丈夫だ。この蒸し焼き時間に使った用具などを洗っておく。
僕は完成を心待ちにしながら用具を洗った。

そしてついにスポンジが蒸しあがった。さてどんな具合になっているのだろう。やっぱレシピにあった写真みたいなすんばらしい出来に

キモッ

なんなんですかこれ。水爆実験の一番最初のほうの爆発?
僕こんなものできると思ってなかったんですけど。

まあ自分の想像していたものとはちょっと違ったが、どうということはない。結局全部僕が一人で食べるものだ。それに、クリームをちょいちょいっと乗せれば自分だろうと十分誤魔化せる。大丈夫だ。まだ余裕ある。

スポンジが完成したので今度はクリームを作っていく。今回はチョコホイップにしたかったのでチョコを湯煎して生クリームと混ぜる本格派な方向でいきました。森永さんのHPにレシピが載っていたのでそれを参考に作ることにしました。

うおおおおおおおお!!!!!!やるぞやるぞやるぞ!!!!!!!!いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!


一人暮らしの家に虚しく木霊する気合は、誰のためでもない、自分のための叫びだった。自分の自己満足のためにケーキを作り、自分のためにクリームを混ぜる。それだけだった。他の要素など一切ない、純粋に「自分のための空間」となっていた。

途中までは完璧にクリームが出来ていた。スポンジケーキは若干の失敗をしたが、なんとかこれでいけ……これで……い……なに……?

これなに?炒めたバラ牛肉が液状化し始めた瞬間?

もはやこれは何を混ぜているのかわからない。これなに?なんのクリーチャーを生み出したの?
僕は半ば泣きながら炒めた牛肉みたいな色のクリームを混ぜ続けた。「生き返ってくれ」という思いを込めて、ひたすらに混ぜ続けた。出てくるのは泥みたいな色をしたビッチャビチャの水だった。
僕はケーキを作る前の万能感も、自分の何もかもを否定されたような気がした。「お前は一生たまご蒸しパンだけ作ってろ」と言われているようだ。
しかもこのクリーム、中途半端に固いから混ぜるのも疲れる。死ぬ。誰か助けてくれ。いろんな意味で誰か助けてくれ。

ついに僕はチョコホイップを諦め、もう一度湯煎のように温めなおし、完全にビチャビチャの泥水と化したチョコホイップになる予定だった液体をラップを敷いたバットに流し込み、「なんとか食えるものになりますように」と祈りながら冷凍庫にぶちこんだ。
ここまでくると完全に神頼みだ。キラキラプリキュアアラモードのひまりちゃんの「スイーツは科学なんです!レシピ通り作れば大丈夫です!」というセリフが刺さる。僕はスイーツ作りをしていたはずなのに、いつの間にか神に祈っている。僕は一体なにをしていたんだ。

全てを諦め、神に祈ってしまった僕には夕飯を作る体力は残されていなかった。
そんな僕の夕飯はこれだ。

最早「夕飯」と称して食すべきものかどうかも怪しい。
味噌汁を啜りながら思ったが、僕は「食」というものに対してかなり冒涜的なような気がする。一生精進料理とか食ってた方がいいんじゃないか。

しかし今日が3月3日だったのが唯一の救いだ。小関麗奈の誕生日まであと二日残っている。まだセーフ。まだ取り返せる。大丈夫。

とりあえず、明日と明後日は完成しているスポンジケーキに作り直したクリームを塗ることでなんとかしよう。「僕が作った」という体裁はなんとか取り繕いたい。ちっぽけだが大事な僕のプライドだ。


僕は大事なことを学んだ。
「レシピをふわっと解釈して料理を作るな」ということだ。
これを胸に刻みつけて、今後はたまご蒸しパンを作りまくって生きていこうと思う。

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