6/22の日記「僕は絶対電話に出たくない」

おはようございます。僕です。


僕は現在、製造業に就いている。前職はギンギンのドブラックな企業だったので転職してやったのだが、その際ハローワークで職を選んだ基準というのが「人と話さない職」だった。
前職は土木系の仕事をしていたため、仲間とのコミュニケーションが不可欠だった。報告を省くと怪我人すら出る世界だ。
そんな中をコミュ障である僕が生き抜けるはずもないし、そもそも給料がスズメの涙だった。辞めないワケがない。なんで月120時間残業して残業代が三万で済むと思っているのか、今一度経営者に向かって問い詰めたい。

そして僕はハローワークで「人と話さない職」、つまり製造業に目をつけた。幸い僕は工業系の学校に通っており、多少知識はあった。僕は製造業のカテゴリから仕事を選び、職員さんと一緒に頑張っていた。

そして面接も通り、現在の仕事場で働いているわけだが、弊社は非常に小さく、事務担当が二人しかいない。
つまり、二人がどこかのタイミングで離席していると、電話が鳴ったときは製造課が飛んできて受話器をとらなければならない。

前述の通り、僕はコミュ障だ。人と話すのが恐怖にすらなっている。対面して話すときは一旦相手の目を見てどの程度距離感をとればいいかから始まる。間の取り方が完全に「戦場リアルタイム攻略系RPG」だ。脳内に三国志のBGMが鳴り響く。

いろいろな会話の中でも、僕は電話が苦手だった。
僕がなぜ人と話せないかというと、緊張しすぎて何をしゃべっているか全然わからなくなり、「今何喋ってたんだっけ」という状態が常に続く。会話の内容が闇に包まれたままなるべく無難な返しを続ける無間地獄だ。その上電話は回線の音も混じり若干ノイズがかっている。何言ってっかまで聞こえない。ていうか聞こえても覚えられない。緊張してて。
さらに会社にかかってくる電話といったら大体取引先だ。真面目な仕事の話をする。しかし会話の内容を覚えられないのでは仕事に支障が出る。損害が出る可能性があるのだ。
さらに、僕は人と喋っているとき「質問すると怒られる」という強い恐怖を抱いていた。「なんでこんなことも覚えられないんだ!」という架空の声がどっかから聞こえて来る。その怒りが恐ろしくて、僕は人に質問ができなかった。当然、取引先の人が何言ってっかわかんなくて質問が怖くて出来ない状態で「わかりました」を連呼してしまうだろう。それで怒られるのだけは嫌だった。ていうかそもそも怒られるのが怖い。
だから僕は絶対に電話をとりたくなかった。

しかし無慈悲にもその嫌なタイミングがきてしまった。二人が離席している状態で電話が鳴ったのだ。
立場的に一番下っ端の僕が電話をとらなければならないだろうが、怖くて足がすくんでしまった。「他の誰かとってくんねえかな」という思いと「怖い」という思いが交錯し、心が無の状態になった。

決死の思いで電話に出て「ひゃい!」と言った。
ファックスだった。

僕は安堵し、受話器を戻した。
席に戻って作業を再開すると、上司から「お前、電話くらいさっととれよ。3コールくらいしてからとるな。遅いだろ」と怒られた。
僕は様々な恐怖と戦い、受話器をとり、安堵していたのに、僕の人生で最も怖い「人の怒り」を浴びてしまった。

怒られた直後、僕は何も言えずにただ「はい、すいません」と謝っていた。会話の内容は覚えられないのに、怒られた言葉の一つ一つは全て覚えている。脳の欠陥の一つだと思う。こういうときくらい忘れてくれ。

僕は電話で人と話す際に「責任」が生じると思っている。電話というのは「人に何かを伝えたくてするもの」だ。大抵約束だとか何か言いたいことがあるからするものだろう。
仕事の電話だってそうだ。誰から何の電話があったという報告を正確にしなければ後から何か発覚して怒られることになる。僕はそれが嫌だった。とにかく人と会話することに自信がない。ていうか責任をとりたくない。
だから製造業についたというのに、僕は何を恐怖しながら会社に行っているんだろう。

帰り道で気付いたが、製造業だからどうとかこの会社がどうとかではなく、「自分が社会で生きるのに向いていない人間」だと悟った。
僕はいつ社会からドロップアウトしてもいいように携帯を開き、Googleで「在宅ワーク」と調べた。

仕事の単価が想像以上に安くて速攻で閉じた。

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