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吉田博の版画

吉田博を知るようになったのは、まだ、たかだか5年くらいのにわかファン。手頃で気に入ったものが見つかると虫が騒ぐ。

日本の版画は欧米でも人気があって、直接、壁にピン留めされたり、作品名に相当する部分を隠して額装されたことによって、日に焼けた線が残ってしまうなど、扱われ方が残念なことがある。

実は、昨年のうちに手に入れていたこの2つの作品、元の持ち主は別だったと推察されるものが、画商のところで出会って対としてオークションに出ていた。どちらも奈良の猿沢の池と五重塔がモチーフとなっており、右側は故ダイアナ妃の執務室に飾られていたうちの1つと同じ「猿沢池」(下記、個人ブログ参照)、ということから、状態はあまり良くないことはわかっていたが、どうしても欲しくなった。

梱包を解いて、あら、まぁ……という状態で、顔なじみのギャラリーで額装して頂くのが躊躇われ、しかもコロナ禍だったし……ということで、かなりしばらく放置していて、ようやく今年になって意を決してフレームに入れて頂いた。

さらに本物の桜には負けてしまうから……と季節が過ぎるのを待って、ようやく片平のオフィスの壁に架けた。(カレンダーがちょっと邪魔なので、これは追って外す予定。)ちなみに、緑のカトランのリトグラフは、震災後に同じギャラリーで求めたもの。緑は自分にとってお守りの色。

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数年前に学会が奈良であって、猿沢の池の周りを歩いたことをブログに書いたことがあった。吉田博の版画で見たのとほぼ同じ眺めとなるポイントを見つけて画像に収めることができて満足。いつかこの版画を手に入れたいとずっと願っていたのだ。

吉田博が気になるようになった理由のもうひとつは、漱石の時代と重なっているから。そのあたりのことも拙ブログに書いていた。こちらの「ヴェニスの運河」の方はもう少し状態が良いお気に入り。

本当は、昨年が没後70周年で、展覧会が巡回していたのだが、東京会場がコロナ第4波と重なってしまって上京できず、ついに行けないことになりそう(残りは三重のみ……)。代わりにウェブサイトを貼り付けておくが、やたら重たいので開く際にイライラしないよう注意。この「見どころ」にも「猿沢池」と「光る海」が出てくるが、同じ版木で擦り色を変えた「帆船」シリーズも素晴らしい。

オフィスの窓に近いので、ブラインドを下ろしていても、やがてさらに経年劣化していくことだろう。もしかして、良い状態のものを見つけたら、再度、手に入れたくなるかもしれない。その前に、次は「光る海」が欲しいと願っているのだが、こちらの方がさらに手に入りにくいようだ。でも、いつか願いは叶うと信じたい。

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