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仙臺俳句会2022(10句作品合同集)

■ご挨拶
仙臺俳句会(せんだいはいくかい)は、仙台の街なかで、奇数月第3土曜日の午後に開催している超結社句会(未発表扱い)です。2017年6月に発足し今年6月で6年目を迎えます。会員制ではなく一回ごとにエントリーを受け付けています。ご参加者は毎回十数名で、若手が多く合評型式による句会で、自由に発言できる雰囲気を大切にしています。
句会名は、塩竈市在住の俳人・渡辺誠一郎氏に命名いただきました。「俳句会」とついていますが結社ではありません。
句会開催の詳細はツイッター(@sendaihaiku)で随時ご案内しております。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2021年1月以降は夏雲システムを利用したネット句会となり、全国から新しいご参加をいただきながら充実した句会を開催しております。

■『仙臺俳句会2022』
年1回の発行で、ご参加者の有志による10句作品合同集です(参加資格は仙臺俳句会にご参加いただいたことがあること)。当句会に出句した句に限らず、自由に作句いただいております。
今年も数珠玉の作品群が揃いましたので、お楽しみたいいただければ幸いです。
                         2022年3月𠮷日
                       編集発行人 小田島 渚


■一句選および一句選評の募集!

冊子のご参加者以外からの一句選(選評は任意)を募集しております。
各作品10句から1句ずつ選び下記メールアドレスまでメールください(書き方はnote掲載の形式をご参考になさってください)。いただいた1句選は本noteに更新していきます。なお全作品からでなくてもいいです。1句から受付けますので、お気軽にご参加いただければ嬉しいです。
〈送信先:sendaihaiku★gmail.com(★を@に変えて)〉


■ダウンロードA5判12枚

小冊子としてプリントする方法
①Adobe Acrobat Reader DCでファイルを開き、印刷をクリック。
②ページサイズ処理のなかに「小冊子」があるのでクリック。綴じ方を「右」と設定して、「印刷」をクリック。
※Adobe Acrobat Reader DCは以下URLから無料でダウンロードできます。
説明書きなどをよくお読みになって行ってください(ダウンロード後のパソコンおよび周辺機器の不具合などについて当会は責任を一切負いません)。
https://get.adobe.com/jp/reader/?promoid=TTGWL47M

■ネットプリント
セブンイレブンにても、ネットプリント配信中(R3.3/20~3/27)
プリント予約番号:39482745
設定は、「モノクロ、A4、小冊子(右とじ)」で120円です。設定しないでプリントするとA5で12枚となりますので、ご注意ください。カラーモードにされてもイラストはもともとモノクロですので、カラーにはなりません。


■■■■■仙臺俳句会2022■■■■■

【目 次】(受付順・敬称略)
金魚玉      渡辺 誠一郎   (小熊座)
鱗        𠮷沢 美香    (小熊座・むじな)
青き糞      水月 りの    (小熊座)
エンド・ロール  武田 菜美    (銀化)
八分音符     小田島 渚    (銀漢・小熊座)
人あり      佐復 桂     (蒼海・塔)
船        佐藤 涼子    (澤・蒼海・塔)
甘食       あさふろ     (河)
夢        浅川 芳直    (駒草・むじな)
下描き      丹下 京子
市外局番     恩田 富太    (銀化)
寒稽古      うにがわえりも (かばん・塔・むじな)
〈イラスト 丹下京子〉          *イラストの無断転載禁止
〈ご挨拶・仙臺俳句会2022・編集後記 小田島渚〉


金 魚 玉            渡辺 誠一郎  
口中のマスクが覗く獅子頭
春眠の猫の尻尾が降りてくる
故郷をまた問われたり残る雪
トウキョウトガリネズミいて憲法記念の日
人類の先頭にいる蜥蜴かな
息殺すことは続かず鉄線花
妹の金魚のいない金魚玉
心臓を洗い流すなら大夕立
芋茎干す星屑の香を少しだけ
荒脛巾座して動かぬ神の留守

鱗                𠮷沢 美香
鼓膜にも届く木漏れ日夏の川
落日の影の重さや薔薇一輪
鬼房が薔薇の黄色とすれ違ふ
蟻運ぶ蟻のみ末の松山に
雷や指に米粒貼りつきぬ
黒揚羽私の首を曲がりたる
青簾津軽平野の奥にゐる
父の日の石に座りて握り飯
炎天を鱗のありてホース這ふ
雲白し胡瓜一本噛み終へて

青 き 糞            水月 りの   
クリムトの「樹下の薔薇」待つ春の鳥
ふらここに剥製のマリーアントワネット
薔薇の棘踏みし時より潔癖症
水無月の電源全て切りにけり
強風に死せるみみずの動かざる
夕立をすり抜けていく編集長
パレットにプルシアンブルー小鳥来る
死顔は美しきもの空高し
秋の雨小さき釈迦の青き糞
アトリエのコーヒー香り神の旅

エンド・ロール          武田 菜美   
啓蟄や旧坑道は闇を吐き
朝粥のひかり掬うて光悦忌
水打ちてなほも心の渇くなり
七月十四日首級のごとく照坊主
模索せる糸口からすうりの花
星流るエンド・ロールに名を留め
明治草引込み線の果に海
防人の歌など読まむささら萩
海鼠腸をすすり切字をとやかうと
梅探る缶コーヒーに暖をとり

八 分 音 符          小田島 渚   
獅子舞に噛まれわたしは誰でせう
まん丸の眼球が欲し残る雪
遠足のひとりは誰も知らない子
いつもどこか片づかぬ部屋クレマチス
青蘆の風に少女のリコーダー
くちびるを針が釣り上げ昼寝覚 
使はぬ穴多きベルトや雲の峰
いもがらは八分音符の髭のあぢ
ことわりもなく棒刺され茄子の牛
小鳥来るたび見つけたる誤字脱字

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人  あ  り           佐復 桂   
水底は動かぬままに水温む
鮊子の釘煮伯父より届きけり
牛の背の漲る肉や聖五月
国に人あり葛餅にきな粉あり
迢空忌古墳に募りゆく細雨
木の実木の実ここ木の実あるねさうね
天帝のチェスの駒めく冬木立
牛肉の煮込みほろほろ初笑
胡粉擂る乳鉢きゆると雪催
イヤリングおさへて外すマスクかな

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船                 佐藤 涼子   
カーディガン緩びし方をまた着たり
言ひ負かすまでの裏声寒椿
封筒へ吹き込む息や雪催
睫毛まで濡らし粕汁啜りけり
多喜二忌やささ身フライに赤き筋
春浅し琴に奏づるビートルズ
カフタンの親子風船ひとつづつ
春愁や鋏に抜きて手羽の骨
花冷えや卓にことりと白きマグ
薬袋に折りたる船よ朧なる

甘    食            あさふろ   
甲冑のままで受け取る吊し柿
消防車ゆゆゆと下る旧街道
甘食のふんだんにあり初時雨
甘鯛の観葉植物ではない眺め
風呂吹を見下ろす家族写真かな
鶴鳴くや水溶性の人類史
立ったままのブーツに耳が育っている
初雪や踵の上に乗る踵
夕まぐれ踏絵を洗ふ水白し
人形の骨盤拾ふ野焼かな

夢                 浅川 芳直   
亡き人の夢にふたたび余寒かな
島凪ぐや落花行き着く貝の殻
鳥帰る廃船といふ道しるべ
啓蟄の闇を抱きたる蒙古の碑
蟬の屍を日陰に運ぶ朝かな
果実酒の翳のただよふ夜の秋
もう消えし夢の記憶の爽やかに
冬木に日木の生涯の閃けり
敗蓮の突つ伏す水の白さかな
荒星に流るる星の幾筋か

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下  描  き            丹下 京子  
多摩川と梅と電車の見える部屋 
をどりばに傘転がつてゐて朧 
逆光や春暑き日のガスタンク 
紫陽花の青に打ちのめされてをり 
下描きの方が良かつたのに空蝉  
汗だくの人の隣が空いてゐる 
断水の予定のメモや原爆忌 
台本に付箋夜食のパン齧る 
ホットレモネード夫だけ泣く映画 
桃色のセーターなんて私着ない

市 外 局 番              恩田 富太   
山茶花の宅地ふたつを隔てあり
初夢の街もう一度なぞりをり
あたらしき杭の傾く春の土
のどけしや市外局番から違ふ
消音の天気図に雁帰りけり
物種の人語解することいつか
どの姫の摘み余したる菫かな
夢にゐてよう笑ふ子や遠かはづ
花の屑ぱりぱりと踏むアルミ缶
友達にともだちがゐる花疲れ

寒  稽  古           うにがわえりも   
漢字検定勉強はじめ冬うらら
アンテナはぴんと霜夜のラジオかな
エクセルを宥め賺して年の暮
枯蓮や聴き分けている四和音
チョココロネ垂らしたあとに初明り
百円の門松の縁なでにけり
御降りと言うにはちょっと多くないか
分厚さは意志の強さや日記買う
初夢は無地明日から本気出す
ペンを持つ今を寒稽古と思う

■編集後記
費用と労力をあまりかけずに、しかし表現の場として最大限の効果を生むことを目指しつつ淡々と運営を続けております。
今年はイラストレーターの丹下京子氏に楽しいイラストを書き下ろしていただきました。仙台にちなみ表紙には陸奥国分寺薬師堂の仁王門と桜、裏表紙には『荒城の月』の作詞家でもある土井晩翠の住まいであった晩翠草堂をお描きくださいました。
この場をお借りして深く感謝申し上げます(渚)。

〈丹下京子氏のHP〉
https://www.tis-home.com/kyoko-tange
http://tange913.net/

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今年は、仙台七夕風にピンク、イエロー、ブルーの3色の表紙(ホチキスもそれぞれに合わせて)、そして、仙台のシックさとしてクラフト、グレーの2色の表紙(ホチキスは黒)にしてみました。

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