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仙臺俳句会2021(10句作品合同集)

 仙臺俳句会(せんだいはいくかい)は、仙台の街なかで、奇数月第3土曜日の午後に開催している超結社句会です。2017年6月に発足し、今年6月で5年目を迎えます。 会員制ではなく一回ごとにエントリーを受け付けています。ご参加者は毎回十数名で、若手が多く、合評型式による句会で、自由に発言できる雰囲気を大切にしています。
 昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、一月以降は夏雲システムを利用したネット句会となり、対面式では一度も開催できませんでしたが、毎回全国から新しいご参加があり、新たな刺激をいただいた一年となりました。
 本紙は、年1回の発行で、ご参加者の有志による10句合同作品集です。個性豊かな作品をお楽しみいただければ幸いです。 
                         2021年5月吉日


【参加者一覧】(作品受付順、敬称略)
久眞(いつき組)、佐藤涼子(澤、蒼海、塔)、あさふろ(河)、小田島渚(銀漢、小熊座)、水月りの(小熊座)、武田菜美(銀化)、夜行(ふらここ)、𠮷沢美香(小熊座・むじな)、渡辺誠一郎(小熊座)、小田桐妙女(陸、小熊座)、恩田富太(銀化)、うにがわえりも(かばん、塔、むじな)、緋乃捨楽(無所属)、浅川芳直(駒草、むじな)


※ダウンロードは、A4で8枚です。


※【ネットプリントの配信は終了しました】
セブンイレブンにても、ネットプリント配信中(R3.5/9~5/16)
予約番号:75410741
設定は、「モノクロ、A3、ちょっと小さめにする、小冊子(右とじ)」で80円です。設定しないでプリントするとA4で8枚となりますので、ご注意ください。カラーモードにされても、写真はもともとモノクロですので、カラーにはなりません。なお、ダウンロードされたPDFデータをUSBなどに入れて、セブンイレブンで同じ設定でプリントアウトすると、40円です。

【仙臺俳句会2021】 10句作品合同集


禍 福 倚 伏          久 眞(いつき組)

学級旗に並ぶ似顔絵春夕日
さよならは風船を手放すやうに
ほどほどのずるさアネモネ揺れてゐる
あの群はきつと教員梅雨寒し
白地図の県境を濃くなぞる夏
あるはずのリセットボタン髪洗ふ
いちぢくや子宮ひろがりゆく宇宙
突き百本蹴り百本の寒稽古
六個入る箱の歪みて太鼓焼
笑ふこと弔ひとなり春の雷


真 紅 な る         佐藤 涼子(澤、蒼海、塔)

バトミントンのけぞり打ちや春来たる
鉛筆を挿してシニヨン梅の花
春風やエチルに拭きて献花台 
湿りたる燐寸擦る香や巴里祭
おはじきに気泡光れる薄暑かな
水泳帽かぶり寄り目となりにけり
牛乳に磨く床板涼新た
階段ごとに貼りたる標語校舎秋
古書市にディランの詩集鰯雲
ボーカル還暦トレンチコート真紅なる


避 雷 針            あ さ ふ ろ(河)

避雷針の空より紋白蝶軋む
腹見せて飛ぶ花冷えの戦闘機
石蹴りて雲の峰より石の声
手のひらに孵らぬ卵昼寝覚む
蛇動くおのれのこゑをのみながら
水の秋ふる里までの一輪車
落花生人差し指のやうな声
トンネルの両端で待つ黄落期
初明り肺腑の底にゐる研師
まづ鶴を褒め避雷針伸び上がる


ひ め み こ         小田島 渚(銀漢、小熊座)

小国はつるぎも核もなく春夜
くらやみの口づけ野遊びの匂ひ
花といふ花にふれ天門に入る
大地震に目覚むればたんぽぽの上
呼ぶこゑの青葦のさざ波に乗る
聖五月鏡すみずみ光らせて
ふたり籠もるならあぢさゐの毬のなか
蜘蛛の囲の雨粒一つづつに空
眼に海の深さを戻す冷し馬
足生えて歩き出す岩はたた神


薄    氷         水月 りの(小熊座)

右足の爪先痛みレノンの忌
薄氷に薄氷重ねフランソワーズ
菫程の小さき人と待ち合わせ
さくら今咲くかも「ゴドーを待ちながら」
五月闇薄目を開ける付喪神
梅雨入りの郵便箱にアベノマスク
まだ消えぬ線香花火と赤い靴
マスクせし嘆きの人魚さくらんぼ
月の雨大きなのっぽの古時計
くしゃみして極悪非道人となる


で ん で ら 野        武田 菜美(銀化)

神の名にルビを建国記念の日
ぽつてりと日の没みゆく桃の花
記念樹のずいと伸びたる更衣
黒揚羽女王メディアを演じ切る
その奥の淫祠を覗く草いきれ
兜煮の目玉をせせり台風圏
八月大名ワインリストにどきまぎす
夜もすがら邪宗の詩を虎落笛
風騒の種を宿して枯野原
でんでら野母喰鳥を眠らせず


夏    休        夜  行(ふらここ)

夏休まづはラヂオを解体す
日めくりに説教がある海の家
かき氷ひとさじフェリー近づき来
ふぞろひのひげのかみきりむしばかり
朝焼や風は砂丘を織りなほす
模造紙の下書きを消し涼しかり
八月の浜にしみこみゆくくらげ
かなかなやかつては疎開先の村
西瓜食ふ西瓜ならざるところまで
教室に知らぬ亀ゐる休暇明


心    音          𠮷沢 美香(小熊座・むじな)

花形のソープの泡に冬来る
牛よ牛白息に唾混じりをる
ペコちやんの舌の平たし寒に入る
立春の小学生が対岸に
羽根仕舞ふやうなりにけり春の潮
星を呼ぶ呼吸なりけり水温む
春眠は羽毛転がるやうにかな
心音のやうに震へて石鹸玉
寝袋のほつれ三月十二日
夢のすべての匂ひ膨らむ蝶生る


梟  の  血        渡辺 誠一郎(小熊座)

春袷姉の馴染まぬ母の数珠
古雛の舌を見せ合う刻のあり
思いっきり汚してみたき春の川
箒木の影なきところ水をやる
女体からもっとも近い熱帯魚
ががんぼの足一本を持ち歩く
妹を待たして捨てる氷水
さねかずら姉と話した父の愛
更地ならもっとも美しや鶴渡る
虚空淋しく梟の血を思う


裘              小田 桐妙女(陸、小熊座)

羊日の寝床から数あふれだす
鷹一羽立ち水平線は歪む
裘わたしのなかにゐる少女
膨らんで牝狼の腹から詩
雛祭り鯛の目玉を舐めてをり
蜥蜴出づ買つた覚えのない帽子
鳥交みながら翼を探してゐる 
さくら貝おとうと三つ姉みつつ
耳なしと口なし蝶は後戯する
春宵の烏啄む羽根の肉


此 処 も ま た       恩田 富太(銀化)

秋深し諍ひあうて添ひ寝して
ゐずまひを大愚に倣ふ居待かな
古酒や銀河よこたふとは斯くて
蓮の骨これを見頃と言はれをり
骨上げの眼窩に見よや冬の虹
めぐるもの霜菊に黄を灯し遣る
薄墨を雪の濡れとふ良寛忌
吾子に指生え初むるころ花苺
しらたまに坐りよき匙授けたる
此処もまた翁の半途さみだるる

ふ     き        うにがわえりも(塔、かばん、むじな)

モール泉ゆらめく朧月夜かな
永日や看板のない養鯉場
たんぽぽに突っ込む電動車椅子
葉桜や眼鏡のふちはすべりやすし
本州は目をとじている潮干狩
親は手を繋いでもいい柿若葉
二本中一本のふき剥けにけり
教卓に連絡帳と青梅と
この滝は多分静脈だと思う
解脱した者から胡瓜もいでこい


たのしいえんそく         緋乃 捨楽(無所属)

遠足は製紙工場うすぐもり
誰も隣に座らぬバス遠足
遠足のレジャーシートの余白かな
遠足や弁当隠すやうに食ふ
遠足のジュースに集る羽虫かな
遠足の自由時間に増える痣
破られし鼓膜に遠足の点呼
遠足の集合写真の薄笑ひ
宿題は「たのしいえんそく」てふ日記
家には帰れぬ遠足は終はらぬ

白     波         浅川 芳直(駒草、むじな)

水底を泥膨れくる植田風
土を乾すビニルの端を蜥蜴の尾
梅雨霧や車の鍵のかかる音
夜を鎮め鎮め蛍火湧きあがる
星降るや山に漲る星の息
曼珠沙華吹き残されて茎二本
日の射せば表裏が生まれ花芒
初雪のこぼれくる夜の広さかな
涸川の夜に白波の棲みつける
去年の雪ざつとこぼして神樹あり


仙臺俳句会2021(通算第3号)
2021年5月9日発行/編集発行人・小田島 渚
ご感想、お問い合わせ等 sendaihaiku★gmail.com(★→@)
Twitter:@sendaihaiku Note:note.com/sendaihaiku

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