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仙臺俳句会2023(10句合同作品集)

■仙臺俳句会(せんだいはいくかい)
仙台の街なかで、奇数月第3土曜日の午後に開催している超結社句会です。2017年6月に発足し今年6月で7年目を迎えます。句会名は、塩竈市在住の俳人・渡辺誠一郎氏に命名いただきました。「俳句会」とついていますが結社ではありません。会員制ではなく一回ごとにエントリーを受け付けています。ご参加者は毎回十数名で、若手が多く合評型式による句会で、自由に発言できる雰囲気を大切にしています。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2021年1月以降は夏雲システムを利用したネット句会となり、全国から新しいご参加をいただきながら充実した句会を開催しております。

■『仙臺俳句会2023』(10句合同作品集)
年1回の発行でご参加者の有志による10句合同作品集です。当句会に出句した句に限らず自由(既発表可)。一度でも参加いただいている方ならどなたでもご参加いただけます。

                         2023年2月𠮷日
                       編集発行人 小田島 渚

■一句選および一句選評の募集!
冊子のご参加者以外からの一句選(選評は任意)を募集しております。
各作品10句から1句ずつ選び下記メールアドレスまでメールください(書き方はnote掲載の形式をご参考になさってください)。いただいた1句選は本noteに更新していきます。なお全作品からでなくてもいいです。1句から受付けますので、お気軽にご参加いただければ嬉しいです。
〈送信先:sendaihaiku★gmail.com(★を@に変えて)〉


■ダウンロードA5判20枚

小冊子としてプリントする方法
①Adobe Acrobat Reader DCでファイルを開き、印刷をクリック。
②ページサイズ処理のなかに「小冊子」があるのでクリック。綴じ方を「右」と設定して、「印刷」をクリック。
※Adobe Acrobat Reader DCは以下URLから無料でダウンロードできます。
説明書きなどをよくお読みになって行ってください(ダウンロード後のパソコンおよび周辺機器の不具合などについて当会は責任を一切負いません)。
https://get.adobe.com/jp/reader/?promoid=TTGWL47M

仙臺俳句会2023

【目 次】
解体       舘野 まひろ   (秋草)
こんな      緋乃 捨楽
郷厭ふ      恩田 富太    (銀化)
孤愁       武田 菜美    (銀化)
マトリョーシカ  水月 りの    (小熊座)
コンテナハウス  あさふろ     (河)
囀る       佐復 桂     (蒼海・塔)
銀河蕩揺     浅川 芳直    (駒草・むじな)
菩薩       佐藤 涼子    (澤・蒼海・塔)
鯨の海      渡辺 誠一郎   (小熊座)
むらさきに流れ  小田島 渚    (小熊座)
白髪ねぎ     うにがわえりも(かばん・塔・むじな)
ひとところ    有川 周志    (むじな)

解   体         舘野 まひろ
この人に雨の水鶏を見せたくて
風鈴に飽きて軒しづくに飽きて
先生にいつもの席や小鳥来る
びつしりと雨に吹かれて鵙の贄
折鶴のかほの三角冬に入る
生意気な足の出てゐる炬燵かな
解体や葉牡丹の鉢そのままに
カーテンのなき家に来る桜鯛
くちづけのあとのくちびる豆の花
受付とつばめのことを話しけり

こ ん な       緋乃 捨楽 
区切り良き仕事帰りの風邪心地
九度二分のからだへ狐火とポカリ
ひっそりと嘔吐する夜や冬の虫
抗原検査キット陽性冬の雷
マスクしてなおドア越しの家族かな
寝たきりのあたまのにおいブロッコリ
貧血や生姜湯ひとつ煎れられず
木の葉散る珈琲こんな味じゃない
小春日やラノベで埋まる枕元
久々の空に綿虫光りけり

郷 厭 ふ       恩田 富太
ふる里は雪に終はれる古暦
先づもつて目玉を据うる初鏡
幾たびも郷を厭ひしのつぺかな
回廊に待つ豆撒の鬼の者
肉色に砂丘よこたふ安吾の忌
嫩草やほどくに惜しき躾糸
雪しろの勢ひを堰いて菜の花忌
龍天に半炒飯の遅れて来
馬の背の番号を忌む啄木忌
家いちど捨てたる力田を起す

孤   愁       武田 菜美
蜜壺に溺るるごとく寝正月
寒鯉の沈思に水の重さかな
立春や小吉ほどの陽を賜ひ
ぼうたんのよよとくづほる夕ごころ
ながむしのとぐろ孤愁を芯となす
津軽には津軽富士あり月見草
なほ残るのみどの小骨終戦日
声にして言葉の傷む水蜜桃
海螺廻しひとり勝ちして独りなり
手袋は邪魔老い先を手探りす

マトリョーシカ      水月 りの
冬の駅マトリョーシカの目に涙
虎の尾を静かに踏みて実朝忌
氷上に穴あり我に虫歯あり
ジムノペディ流るる街の大試験
花の雨我も令和の避難民
北上のマーメイド号風薫る
QRコードに眩暈薄暑かな
友の死を友に告げたる夏の暮
葡萄踏み月面濡らすアルテミス
不眠症と熊と月面探査機と

コンテナハウス      あさふろ
初列車横隔膜のやうな川
如月の輪郭を綯ふ水夫かな
花曇人質小路東入ル
利き耳と反対側のヒヤシンス
十薬や目を瞑りたる一軒家
地下鉄を燻らせてゐる雨蛙
海境やゼリーにゼリー液のあふれ
水系を違へて拾ふ夏帽子
目隠しの手の湿りたる花野かな
テーブルをざらめの光冬の鳥

囀   る        佐復  桂
囀や自転車幹に立て掛けて
花ミモザ抱へておりぬ横の僧
石鹸玉仏連なる息に似て
オーボエのA聞こえくる間よ涼し
少年は声引き絞り鹿火屋守
月光を浴びていよいよヒトとなる
神の留守等間隔にベンツ行く
サーモスの蓋キュッキュっと淑気かな
寒の入わたし今日カワウソになる
一斗缶ベコベコ打つて焚き火かな

銀河蕩揺         浅川 芳直
掛時計音を連ねて彼岸来る
菜花畑やうやく人の気配かな
葱坊主雲生まれつつある低さ
葉桜の山毛欅よりの風梳きゐたり
雨後しばし森の匂ひの夏座敷 
夕立や昂然としてパインの木
新幹線無月の山へなだれこむ
銀河蕩揺水車の音の夜通しに
霧の中霧雨の筋見えてきし
鈴虫の夜の烈しさに読む童話

菩   薩         佐藤 涼子
地に注ぐ清酒一升茸狩
芋煮会煤けし軍手火に焚べる
猪の腸熱し軍手ゴム手を重ぬれど
あざーすと客引くホスト夜寒なる
煙草の先寄せて貰ひ火秋の夜
スカジャンに刺せる菩薩や分厚かり
吐瀉受けしごみ箱洗ふ寒夜かな
フランベの葡萄酒ワイン惜しまじ薬喰
鯨より掻き出す臓腑胴に乗り
ウインチに皮引き剥がす鯨より

鯨 の 海         渡辺 誠一郎
プーチンもレーニンも来よ春炬燵
ロシアより愛が届くもささみだれ
断層を三度蹴飛ばす薄暑かな
馬の目に青大将がとぐろまく
片棒を担ぎ夕立を走り行く
風待ちの港に今日の残暑かな
鴨の陣ほどけ一人は祇園へと
弔いを引きずって行く冬野原
ことごとく根雪の空に発火して
いつの日か鯨の海に眠りたし

むらさきに流れ       小田島 渚
昃りて初夏の火口湖深くなり
炎天の地や鬼の手が石落とす
野葡萄の冠かざる髪沖つ風
霧の家尋ねし者は帰りこず
九天の使者にか黒き柘榴受く
指差されし者雁となる夕べかな
露が露呑み込み 渦巻く 黒き砂塵
肩寄せ合ひ聖夜はむらさきに流れ
罪びとの匂ひに聡き鷦鷯 
暦には在らざるひと日地球凍つ

白髪ねぎ          うにがわえりも
あまに油の畳に垂れて冬の朝
式台をたぬきふがふがしてをりぬ
霜柱踏めばソプラノとなる君
インスタまぶし白髪ねぎ震へをり
御降をエナメルバッグ通過せり
冬帽にざらめせんべい舐めるぬこ
温泉に訊くはあの日の鯛焼のゆくへ
いい人になるには読書冬木立
春近しよく膨らんだおざぶかな
膝掛の端よりしらみはじめたり

ひとところ          有川 周志
数歩ごと人の間を縫う残暑
秋の宵つい先輩を呼びとめる
ひとところより次々と食う葡萄
インタビューの締め時逃す刈田原
熊穴に入る送電線の異音
一眼に十一月を収めけり
外套の列や合同説明会
ぶらんこの縛られており春の泥
残雪をもれなく散らす教習車
大試験終えてフォントの気に掛かる


(編集後記)
5号を迎えることができました。ご参加者はほぼ結社に所属、また仕事や家庭など、どうにもならないくらいにさまざまに忙しいと思います。だからこそ、〈ここ〉は、俳句に真摯に向い、多様な句に出合える、ひらかれた〈場〉でありたいと願います(渚)

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