ブラヒロシ・東海道19 四日市編

世良 一夢

 今回は、桑名の次の四日市です。四日市と言うと化学やエネルギー系の工場群を思い浮かべますね。東海道沿いでは京浜地区を除くと唯一の工業都市で、今はコンビナートの夜景が人気らしいです。実は私はかつて化学業界で仕事をしていましたので、この地には馴染みがあります。四日市の工業地帯は、戦前に海軍燃料廠があったことから発展しましたが、そのせいで戦時に激しい爆撃を受け、街道遺跡は殆ど残っていません。東海道沿いでは軍施設があった平塚が同じでした。
 この地には、名前の通り十五世紀位から市が開かれ、伊勢参宮道の追分を控え、江戸期は旅人の往来で大いに賑わったそうです。
 歩いていると、創業天文十九年(1550)「笹井屋」という古い和菓子屋を見つけました。細長い形の「なが餅」が名物で、藤堂高虎が足軽の頃に「武運の長き餅を食うは幸先よし」として、大名になっても参勤交代時に必ず立ち寄ったとのこと。この謂れが、店内の大きな額に絵入りで詳しく説明されておりました。
 この地とは別の中山道の話で恐縮ですが、先日、参勤交代の街道の様子を題材にした浅田次郎の小説「一路」を読み、参勤交代が侍にとっていかに大変であったかが分かりました。藤堂高虎も、その途中の息抜きに立ち寄ったのでしょう。
 駅前を散策していると、ゆるキャラ「こにゅうどうくん」に出会いました。四日市に伝わる日本一大きいからくり人形「大入道」の子で、悪戯好きの妖怪だそうです。単に地名をひねったゆるキャラが多い中、個性的で人気者です。
 同じ駅前で、ご当地グルメの「トンテキ」を食べました。グローブの形の分厚い豚肉で、かなりの迫力です。東京では、食べたことが有りません。

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