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寝るまえ読むのに丁度いい日記_7/3

今日で日記をやりはじめて三日ほどになる。続くかどうか不安だ。なにせこのために夜遅くからパソコンの前に座り文章を書かなければいけないのだから。

3時45分。日を跨いぎ深夜というより早朝に近い。またしても日記を書きそびれ現時点に至る。とりあえず一旦いったん箇条書きにして寝ることにする。

日記という行為は、思っている10倍の時間がかかる。正直なところ、かなり生活を圧迫している。続く気がしない。一方で、憶えておくほどでもない日常が、記録の過程で記憶になるのも悪くはない。

3時56分、ある程度の箇条書きを終えて床に就こうとするが、犬が僕の場所を占領している。

犬を跨ぎ、回り込んで1枚写真を撮る。似たようなのを前にも撮ったなとも思う。4時4分。犬を90度回転させて、今度こそ寝る。

日を遡り午前10時57分、起床。58分、出勤を打刻。リモートワークの人間は全員こうしている。19時頃まで特記事項なし。汁が出るほど退屈な作業をこなす。

僕はソニー製品を壊す会社で、PCを叩き割る部署に配属されている。家に届いたPCをダンボールから取り出しては壊し、取り出しては壊しの繰り返しだ。噂によれば会社は普通に潰れそうらしいのだが、僕の知るところではない。家に届いたものは全て壊す。それだけである。

窓を開けると風が涼しかったので、ベランダで鞄を痛めつける。鞄の合皮部分を取り除き、真皮にある本革を毛羽立たせる前準備として、カッターの刃で鞄の表面を切り付ける。効率的な破壊と自然な仕上がりを追求する結果、膝に這わせて削るスタイルを見出す。デスノートの L みたいな行儀の悪さで、鞄をズタズタにする。ひとつたりとも難事件を解かない L が尼崎に爆誕する。鞄の表面を削り、足元が茶色の毛クズだらけになる。日が暮れていることに気づく。

19時頃、新しく買ったベルトに穴をあける。僕の家にはベルトに穴をあける専用の器具がある。本当にそれ以外に何の使途もない。サルトルも引くほど本質が先だった実存だ。

10代の頃から革製品が好きだ。牛や馬の死骸から皮をひん剥いて加工したモノに、なぜこんなに夢中になっているのかと俯瞰すると滑稽だ。

21時前、夕食など諸々を済ます。届いたディッキーズの半パンがデカかったので切る。一発で正解を出す自信もないので、少しずつ刻んだのち、切り口を糸切り鋏で調整する。ここ数日ですっかり手作業にはまった。楽しい。己の成果が手触りのある物体になる経験はこれまで無かったから。少なくとも、電化製品を壊す仕事の100倍はマシだ。

作ったゴミをインターネットに投棄して他人の時間を奪うことに、僕はいつも後ろめたさを感じている。


\犬はこちら/


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