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【気づき】Vol.1110(2011年7月17日発行のブログより)

博士の愛した数式。

小川洋子さん原作の小説がミリオンセラーとなり、 2006年映画化。

原作とはかなり細部も大枠もストーリーが変わっている。

それがよくないと感じる人もいる。

でも、いつも通り原作は原作の、映画は映画の楽しみかたがあると思う。

それでいいのではないだろうか。

豆から挽くコーヒーと粉末のインスタントコーヒーは、
まったく別の美味しさがあって、
どちらもそれが飲みたい時には美味しいのと同じだ。

別のものとして楽しめばいいのだ。

ちなみに僕が今楽しんでいる豆はコロンビアだ。

中学1年生で習う初歩的な数学から始まって、
最後には、オイラーの公式まで登場。

このオイラーの公式こそが、博士の愛した公式なのだ。

映画の中では博士と義理の姉は昔不倫関係で、堕胎している。

そのため最初、

eiπ=-1 ・・・①

※実際にはiπはeの右上に「乗」として表⽰される

として表記されていた。

だから他人の子どもに対しても異常なほどに愛情を燃やすんだ。

ところが、

映画の終盤に博士は-1を左辺に移項して、 eiπ + 1 = 0 ・・・②

と表記するんだ。

これが実に味わい深い。

義理の姉もこの変化によって心の垣根を開いてくれる瞬間なんだね。

右辺にあった-1が左辺の+1になっただけでちょっと心が安らぐんだよ。

否、右辺の0こそが奥深いんだよね。

数学的には同じでも、
博士の主張する心の数学ではまったく別のものなんだね。

つまり、①と②では違うということなんだ。

寺尾聰さんの博士役はピタリと当てはまっていた。

深津絵⾥さん、吉岡秀隆さん、そして 浅丘ルリ子さんもよかった。

個人的にはちょっと白けるくらいに、
美辞麗句を並び立てられるシーンもあったけど・・・

この映画は随所に人間の何気ない温かみや懐かしさが出てくる。

主張は激しくはないんだけど、
懐かしい涙を流せる映画なのではないだろうか。

数学というのは哲学なんだね。

この映画の中で好きなシーンがあって、
博士の投稿した論文が権威ある雑誌に評価されるんだけど、
「神様の手帳をちょっと覗いただけ」と片付けてしまうところ。

原理を原則にしただけということなんだね。

原理とは人間がこの世に生まれる前から宇宙に存在したもの。

原則とは人間が自分たちにわかるようにルール化したもの。

人間味溢れる素晴らしい映画でした。

追伸.

なぜかこの映画を見た後に、

自分の

『この悲惨な世の中でくじけないために20代で⼤切にたい80のこと』の算数の章を無性に読みたくなった。

そういえば、本書の62・63ページを理解するために、
わざわざプラネタリウムに行って説明を聴いてきたって、
報告してくれた女性がいました。

しかも一人で出掛けるって、すばらしいですね。

ボールを投げると弧を描く。

小学生の頃、コンパスで弧を描くのが好きでした。

  ...千田琢哉(2011年7月17日発行の次代創造館ブログより)

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