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「こんなもんか」を得る練習=筋トレ

はじめに

このサイトのデータによれば、
腕立て伏せの平均回数は「男性23.7回、女性6.6回」らしい。

さて、あなたはどう思っただろうか。

自分の力量をどう見積もっただろうか。

ちょっと嫌な言い方をしてしまったかも。

ちなみに自分はと言えば、「絶対盛ってるだろ男…」と真っ先に思った。

「腕立て伏せ」の認識は個々人によって結構異なるけれど、ちゃんとしたフォームでやるとかなりきつい。

そもそも「ちゃんとしたフォーム」でやらないと意味が無いのだが、「回数できるのがかっこいい」的なバラエティ番組的認識がクソみたいなフォームをまかり通らせてしまったというのはあるだろう。

で、お前は何回できるんだよ、という話になるだろう。ちょっと考えてみる。えーと…今の自分なら…リングフィットとロードバイクばっかりだからあまり腕立てはやってないけど…。

15回くらいでやめようかな…と思い、18回目でもう頑張ったからいいでしょ…と腕の震えに耐えつつ、歯を食いしばって20回目を終え、倒れ込む。大体こんなかんじだと思う。

で、実際やってみた。だいたいあっていた。15回を超したあたりでかなりキツくなってきて腕もプルプルしはじめ、身体をくの字にして休憩のインターバルを挟みつつ、20回。うめく。

その「大体こんなかんじ=自分の有限性」を、「自意識をへし折ってから再起する」ことによって見積もることができるようになる、というのが今回の話。

ちなみに「筋トレは最高のソリューション」かと聞かれたら、自分はそうは思わない。そういうマインドフルネス信仰もそれはそれでいいけれど、自分としてはもう少し違う活用をしてみたい。

自己を知り、自己に満足する思考法として活用してみたいのだ。

「自意識の過剰=なんでもできる」をへし折る

もう少し自分について言うと、中学校のころは結構ハードな運動部に所属していたこともあって、全く運動習慣が失われた期間を経てなお、「腕立て伏せ20回くらい余裕っしょw」というような根拠のない自信があった。

で、コロナ禍になって家で過ごす時間が増え、流石に運動を取り入れようと筋トレを始め、腕立てを久々にやってみた。

身体が地面スレスレになるまで腕を下げ、しっかり上げる。

2回で腕が笑い始めた。

3回目であきらめた。
「フン…このくらいにしておいてやる」とか思いながら。

…。

結構ショックを受けた。目算では15回くらいはできるでしょ、くらいに思っていたのだけど…。

さて、どうしてそう思ってしまったのだろう。

それは、自意識と身体が一致していないからだ。

あるいは、自意識と行為が一致していないからだ。

自転車に乗っていて「どこまでも行ける」と思っていても実際は20kmも漕げば疲れてしまうように、「絶対20回腕立て伏せするぜ」と思っていても実際は3回くらいだったりするように。

「自分は世界にどこまでも影響力がある/コミットできる」という思いは、残念ながら行為を及ぼす身体と一致しない。

接続過剰の世の中において、「なんでもできる/なんにでもなれる」という言葉を鵜呑みにしてしまうと、かえってつらくなることもあるだろう。

だから、自分のひとまずの有限性を知る。これが筋トレのまず最初の効能だ。

「自意識の過少=なにもできない」を蹴散らす

自分の身の程を知る。もしかしたら、一旦は自分に失望してしまうかもしれない。ここまでの話だとちょっと憂鬱だけれど、ここからはその地点から再起する話だ。

自意識は無事へし折られたけれど、ここで「もう何もできない」と思ってはいけない。

トレーニングを続けてみると、多かれ少なかれ身体のなしうることが増えていく。筋トレの第二の効能がここにある。

自分のなしうることが、蜘蛛の巣がじわじわとその領土を広げていくようにして増えていく。一ヵ月までは3回だった腕立て伏せが、5回くらいまでできるようになっている。

ひとまずの有限性が、どんどん新しいものにアップデートされていく。

そうするとどうだろう。「もしかしたら一ヵ月後には8回くらいまで、半年後には10回くらいまでできるようになっているかも」と、自分の能力に目算が付くようになる。

自分の力量が、自分のなしうることが、つまり「だいたいこんなもんか」がわかってくるのである。

自意識と身体が一致する

「だいたいこんなもんか」という感覚は、健全に自己に満足することだ。

「何でもできる」と嘯くのでもなく、「何もできない」と諦めるのではなく、その間で「こんなもんか」と自己を肯定してみせること。

ここまで来れば、もうハウツーはわかっているはずだ。

「今はこんなもんでも、もうちょっと努力すれば届くかな」「この能力を伸ばせば、やれることが増えるかな」…自意識と行為がほどよい所で一致しているマインドセットなら、過度に自意識過剰になるのでもなく、かといって過度に絶望するのでもなく。

適度に自己に満足しながら、やれることを増やしていけるだろう。

その練習として、筋トレはきっと役に立つ。はずだ。


(胸筋と上腕三頭筋がパンパンなので、これは明後日くらいまでトレできないぞ……。)