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サンゴは、生きている。

「こんなもん 期待しすぎは 裏切られ 奄美のサンゴは 死んできている」

1年前、私が初めて奄美大島でシュノーケリングをしたときに詠んだ一句だ。当時、俵万智の『サラダ記念日』や穂村弘の『短歌ください』を読んでいた私は、日頃感じたことを詠むことが密かなブームになっていた。誰に発表するわけでもなく、そのとき感じたことを簡潔にまとめるのに、短歌はぴったりだったからだ。

これまで国内外の海でシュノーケリングをしたことがあった私は、奄美のシュノーケリングも非常に楽しみにしており、素晴らしいサンゴ礁やたくさんの魚たちに出逢えることを期待していた。

ところが、初めて入った海は、もちろん白い砂浜で青い海、綺麗ではあるのだが、入水してみると、私が想像していた世界とはかなり違っていた。泳げども泳げども、死んで藻が付いているサンゴばかり。魚もチラホラ。生きているサンゴは決して多くなく、シュノーケリングツアーではお麩を撒いて魚をおびき寄せるほど。ウミガメに遭遇したが、そこまで感動することもなく、むしろ、海に入ったことで地球温暖化や、環境問題、海を漂うプラスチックゴミの多さが目につき、ショックだった。

ところが、最近、そろそろ梅雨明けしそうな夏日が続く奄美大島。エアコンが苦手な私が、涼をとるために最適な方法は、やはり海にドボンである。ツーリストスポットではない海もだんだんわかってきたため、少々マイナーな海へ行ってきた。そこで、非常に綺麗な、健康なサンゴ礁に遭遇したのである。黄色に紫、青、ピンク。また、テーブルのようなもの、まん丸だったり、脳みそのような形をしていたり、枝のようなサンゴなど、種類も豊富。カラフルで生き生きとしたサンゴたちの周りにはもちろん、たっくさんの魚たち。また彼らも、南国の魚らしく、蛍光色の黄色や青など、色とりどりで、とんでもなく種類が多い。A4サイズぐらいありそうなほどの大きい魚(多分エラブチ)に、シラスのような小ささの魚たち(多分キビナゴ)の群れが目の前をキラキラした光のように通り過ぎていた。最も綺麗だったのは、暗いブルーがベースの体に、目の周りやお腹にピンクの模様があり、尻尾に黄色のラインがあったあの美しいお魚さま。もしあの魚を濱口が「獲ったどー!」したら、番組にクレームを入れてやるレベル。何という名前なのだろうか。知っている人がいたら教えてください。

さすがにウミヘビがこちらに向かってきたときは全力のバタ足で回避したが、それ以外は海の上をプカプカと、あくまで海の世界の生き物たちの邪魔にならないように気をつけながら、元気な彼らを上から眺めていた。体感的には9mぐらいありそうな水深のところは、もはや、空を飛んでいる気分だった。酸素ボンベを背負って海の中にお邪魔するよりも、遠いところからそっと見学させていただくシュノーケリングが私には合っていると思う。頭の上には『アンダー・ザ・シー』が流れた。

移住して1年強。奄美での生活は、まだまだ発見続きの毎日だ。自然に触れると同時に環境問題や地球温暖化を憂うことが多い私だが、最近はシュノーケリングを通して、ポジティブに自然を楽しめる気がしている。そして、この素晴らしい自然を味わう経験が、自分だけでなく、色んな人にもあると良いなと思う。そうすれば、もっとたくさんの人が、日頃の生活を見直し、環境に配慮する意識が生まれるかもしれない。自然を守っていくことを、人間の責任として、これからも考えていきたい。自分の子どもたち、孫たち、そのずっと先の世代まで、私がしたように、自然に触れて感動する体験ができるように。

久しぶりに、一句。

「プラごみは 捨てるもんじゃない 漂えば まだ海も 捨てたもんじゃない」



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