神経はすごいという話と体験談の罠

あんまり闘病について書かないようにしているんですが、こちらはおそらく書いてもいいかなというか、書いておけば希望になるかもという話です。そんなに大げさな話じゃないんですが当事者にとっては大変です。

片側反回神経麻痺について

私、6・7年前に甲状腺の摘出手術をしたんですが、その時に片側の反回神経が麻痺してしまってほとんど声がでなくなりました。で、今は概ね大丈夫、声は出ていますよ。というお話です。麻痺はしていますが大丈夫です。

先に結論を書いておかないと、もし、当事者が読んで希望を持てない内容なら読みたくない場合もあるので。あ、あと、長めに書きました。

反回神経とは

声を出す声帯を操る神経で、楽器で言うとリードの役割を果たす声帯を開け閉めします。

この神経は両側にあり、それぞれ半分ずつ開け閉めしています。ここがうまく開け閉めできないと空気が漏れるので穴があいたリードのように声がでなくなります。たまに、うまいこと真ん中で止まってくれる場合もあって、その場合びたりと閉じることが出来るので声は出ます。

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そして反回神経はとてもデリケートなため、神経自体が切れたり傷が付かなくともその周辺の筋肉を触れたことで引っ張られてしまったりすると麻痺してしまったりするそうです。(H25年位に青森県の病院の当時の主治医に聞いた話)

というわけで、神経が切れなくても麻痺が起きたりしちゃいます。詳しくは下記HPから。

最近は調べていないので当時見聞きした話になりますが、「神経の麻痺は3~6ヶ月が回復のMAXで、その後それ以上の回復は望みが薄い。」ような説明を私は受けました。これは術後半年位にももう一度先生に質問をしました。

声が出ない辛さ

で、実際麻痺がおきると予想以上に辛かったです。「声がでない」ということを甘く見ていました。

風邪なんかで声がでないのとは全く違う出なさです。

音域が極端に狭くなり、音量も張る声は全く出ない。この音域も、元々の自分の音域ではない音、オクターブ下の多分1つか2つくらいの音でしか声が出ません(しかも嗄声)。私はもともと声が高く、カラオケでも華原朋美を持ち歌としていたので、これは大変ショックでした。オクターブさげて「ぞうさん」すら「おーはなが」の部分でグェエってなってしまいます。

そう、無理に出そうとすると喉が締め付けられるような苦しさ、空気も漏れているのですぐに呼吸が苦しくなります。当時下の子どもは2才。ああ、絵本も読めないし、歌も歌ってあげられない、何より危ないときに大きな声で注意ができない。上の子はバスケを始めていたのに声をだしての応援もできない、とひどく落ち込みました。

これはちょっと話が逸れるのですが、私その何年か前にも手術をしていてその時に思うような回復をしなかった部分があり、それに加えて半回神経麻痺でしたので「もうほんとこの先何があっても手術なんてしたくないわ。」と思いました。結局この手術の1年後にまた違う件(更に重病)で手術をしましたが。かなり難癖付けて手術を先延ばしました(笑)まわりはヤキモキしたろうと思います。

絶望の理由

というわけで、ここまで絶望したのは先述の

神経は3~6ヶ月が回復のMAXで、その後それ以上の回復は望みが薄い。

という話を聞いていたからなんですね。半年のうちに戻らなければ戻らないのでは。という不安が強かったのです。

術後,ほとんど声が出ていない状態から3ヶ月後には低い音程で限られた音域を途切れ途切れくらい、半年後にはもう少し途切れない位で。

という感じで回復してはいましたが、例えば仕事で電話応対などはできそうにもないような声です。大きな声は出せない(叫べない)、長めに話すと息切れを起こす。歌は音域が狭いもの限定でどうにか歌えるかもしれない。その程度でした。

まあまあ普通になったのは

というと、おそらく術後2年位ですね。すごく張る声(例えば舞台でマイクなしで発表するとか)はでないのですが、普通に話せてやや大きな声を出せて、一部の歌なら歌える位。日常に差し障らないってやつです。

この時何が起きていたかというと健側の声帯が頑張って真ん中を超えて穴を塞いでくれるようになっていたのですね。

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これは、術後4年くらいたってから風邪で耳鼻科を受診した際にスコープで見た医者に指摘されたことなので、確かな話です。

※ただし、声帯が麻痺して止まる位置によってカバーしきれない場合もあるかと思います。あくまで、私のケースです。

なので、

神経は3~6ヶ月が回復のMAXで、その後それ以上の回復は望みが薄い。

というような説明を万が一受けても、また、1年経過して元に戻らなかったとしても、まだまだ回復というか代替案を体でだしてくれるかもしれないということは覚えておいても良いかなと思います。

これが、神経はすごいなって思った話です。

体験談の罠

その頃には主治医にも「声はどのくらいまで戻りますか?」とは聞かなくなった頃です。そこで、やっと気づきました。

神経は3~6ヶ月が回復のMAXで、その後それ以上の回復は望みが薄い。

これです。この罠です。

これって、医者が何年も経過観察してない場合も(データとして追っていない)場合もあるんじゃないかな。ということです。

私が通っていた病院は拠点病院として活躍していたので、「この病院でなければできない」こと以外はなるべくかかりつけ医にもどるような方針をとられていたので、何年かたつとかかりつけ医に戻って良い(というか戻される)方針でした。

私はたまたま、次の病気もその病院で診てもらったのでそのまま1年以上診ていただいたんですが、もっと早くかかりつけ医に戻ることもおそらく可能でした。

あと、その頃同病の方のブログをよく参考にしていたのですが、大体術後1・2年後で終了しているのでそれ以上の回復状況がかかれていません。

なのでその先がわからずに

神経は3~6ヶ月が回復のMAXで、その後それ以上の回復は望みが薄い。

に怯えてしまっていたのだな。と思いました。

体験談を読むときは

よく、看護師さんに「闘病ブログとかはさ、読まなくていいよ」

と言われたのですが、これですね。

・ネタがなければ更新が滞る
・ネタがないのは健康なのか悪化なのかわからない
・自分の不安から「悪化してやめたのではないか」と思う

この辺が一番危険かなぁと。その他にも怪しげな代替療法とかマルチ系の罠とか色々あるのですが、その辺は調べればわかるケースが多いのですが、闘病ブログなどで一番恐怖を与えるのは「更新が途絶える」

ことなんですね。

そして、その恐怖心は「ソース・私」なので厄介です。もう確かめようがない。自分がそう感じてしまえばそこに捕らわれてしまう。

というわけで、闘病ブログは自分は超読んだけど、私自身は書けないなって思いました。すっかり良くなってから書けばいいけど、すっかり良くなっている頃には平常運転での悩みに気を取られて書きたいことはなくなっているという(笑)

なるほどな。

じゃあ、なんで今書いているのか

というと、2020年の今日、趣味の集まりでちょっとした発表をしたのですが、その発表の感想アンケートで

「声が聞きやすかった」

と書いてくださった方が何人かいらして、とても嬉しかったんですね。

で、術後2年経過したときよりははるかに声がでているし、歌も歌えるし華原朋美もいけるな。って改めて思ったからです。
とはいえ、大きな声はここぞの1発位しかでないし、むせやすいので顔をつけて泳ぐのは危険そうなので控えていますが。(一度泳いだら水が入って死ぬかと思った)
まあ、でもすっかり誰かに違和感を感じさせることはないくらいに生活ができています。

どうか、甲状腺摘出手術後の反回神経麻痺による嗄声に悩むみなさんも回復しますように。(読んでくれるかわからないし、割とピンポイントですが)





来年またなにかやれたらいいな