他者の他者性と自分のなかの他者性

今週のお題
Q1. あなたの好きなところは何ですか?
Q2. あなたの大切な人の好きなところは何ですか?

考えやすいQ2から取り組んでいく。

「あなたにとって大切な人とは誰ですか」と訊かれたときに、家族や恋人と言える人は幸せな人であって、ぼくはどうしても、そんなふうに答えることができない。

ぼくにとって大切な人とは、純然たる他者を指す。正確に言うならば、「自分ではない世界が、そこにあるのだと実感させてくれる人」のことだ。誰かのなかにある、自分ではない世界が好きなのである。

「自分のことばっかり考えすぎなんだよ」と言ってくる人。「きみの知らない楽しいことがあるよ」と誘ってくれる人。「私からみると、きみにはこういう意識が足りない」と指摘してくれる人。「私はこう感じた」と言う人。言葉じゃなくても、「この人は何か違う世界を見ている」と思わせてくれる人。そして、そんなふうに他者性を伝えてくれるところ。

大切な人と言われたら、特定の人や関係性を思い浮かべるのではなくて、「ぼく以外の世界をもっていて、伝えてくれる人」を思い浮かべる。他者の他者性が好きなのだ。

ぼくは自分のなかに浸かってしまうことが多いから、違う世界に連れだしてくれる他者を求めている。自分ではない他者の世界に触れると救われたように感じる。もっと言えば、そういう他者をわかろうとしてもなお、わからないままに残っている他者性が好きだ。その不確実で神秘的で蠱惑的な薫りを魅力に感じる。

翻って、最初の問いを見つめる。

――自分の好きなところはどこですか。

けっきょくのところ、これも同じだ。他者の他者性が好きなのと同じくらい、自分のなかの他者性も好きなのである。

自分と対話できるようになると、自分のなかに複数の自分がいることに気づく。いま確実に判別できるのは2-3人だけれど、「普段のぼく」が感じたり考えたりしていることに彼らが異を唱えてくる瞬間がある。心のうちから、ぬっと顔を出してくる瞬間がある。

若干の気持ち悪い感覚をやりすごさずに、ぬめっとした彼らの全身を引きずりだしていく。サザエに楊枝を一本ぶっ刺して、クルリと回転させながら内臓の奥がちぎれないよう配慮し、ずるりと全身を剥き出して大気に触れさせるみたいに。その中身を咀嚼して嚥下するときに、「あぁ、ぼくはぼくだけじゃないんだな」と嘆息する。

最高に楽しい。ヒリヒリとした快感がある。

そういう、自分のなかの他者性が好きだ。あるいは、他者性を探して味わう過程と言ったほうがいいかもしれないけれど。


サポート金額よりも、サポートメッセージがありがたいんだと気づきました。 読んでいただいて、ありがとうございました。