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古流と居合

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古流の身体操法について書きます。身体を観察する、ということ。
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2018年11月の記事一覧

重みを伝える――体内の流れを可視化する

ニュートンのゆりかご、という実験がある。五つくらいの連なった玉の、一つをもちあげてパチンと落とすと、反対側の一つだけが跳ね上がる。 ちょっと不思議な実験である。 普段は一つの玉だけど、これを二個でやったり、三個でやったりするとどうなるか。もしくは両側から一つずつ持ち上げるとどうなるか。映像を見ると、すごくおもしろい。 じつは古流の動きでも、達人は同じことをしている。自分の身体のなかで、運動量を発生させ、端に移動させて、放出する。外側からは移動の過程が見えない。でもたしか

真っ向斬り下ろし

初心の人に教える場合の図である。意図的に強調した部分がある。どこが強調してあるか、というのをわかるようになったら、この図を見る必要はないだろう。 ぼくが教えられたのは、「天井を引っかくように振ること」「振り下ろすときには、茶巾を絞るように手の裡を締めること」「敵のいる場所で最高速度を出し、重みを乗せること」である。 しかし、このうち「天井を引っかくように」という教えは、間違った形で理解されやすいし、「茶巾絞り」は教え自体が間違っているように思う。 天井を引っかくようにと

重みを操作する――古流の基本原理

古流の動きは、重みの操作の体系である。 重みは何から生まれるかというと、身体の「質量」と地球に引っ張られる「重力加速度」から生まれる。 質量の七割を占めるのは、水分である。だから中国の古流は、人体を水の入った袋にたとえる。たぷたぷに水の入った革袋が人体である。人体のなかには、骨と筋肉がある。 重力加速度は、日常生活で意識することは少ない。意識しないということは、それだけ普遍的で「大きな」意味をもつことでもある。だから、その力を使えるようになると、日常とは違う身体の動かし

上達とは感度があがること。

来週、居合を新人に教える。 ひとまわりも歳上のひとに教えるから、何を教えるのかを言語化しておく。何を教えるのかは、何を教えないかを明確化すると定まる。 剣を振る。これは楽しい。 なんと言っても日本刀だ。居合用だから斬れないようになっているけど、傍目にはホンモノと変わりがない。着物を着て、帯を締めて袴をはく。そして刀を腰にさす。鏡を見れば、幕末の志士である。 かっこいい。 刀を抜き出して、振りまわす。気持ちいい。たまに音がなる。爽快だ。 教われば教わるほど、成長する自分に出会