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幻想水滸伝の思い出 故・村山吉隆さんを偲ぶ

2024年2月6日に他界された、幻想水滸伝の生みの親・村山吉隆さん。

プレステ世代を直撃したシナリオライターの1人として知られ、およそ20年の時を挟んで幻想水滸伝の精神的続編『百英雄伝』を4月23日に発売します。

ワイルドアームズの魂を受け継いだ『ARMED FANTASIA』が後に続き、クラウドファンディングによるJRPGのリバイバルが続いていますが、それもそのはず。

PS1の頃にはRPGというジャンルは既に飽和しきっており、よほどの力作で無ければ後発の新規タイトルが受け入れられる事はありませんでした。
ビヨンドザビヨンド、ポポロクロイス物語、ネオリュード、レガイア伝説、俺の屍を越えてゆけ、など、年間30~50本のRPG作品がリリースされ、大小様々なメーカーが鎬を削っていた時代です。

そんな中で、シリーズ5作品以上を出すまでに成長したPS発祥の新規IPは、幻想水滸伝ワイルドアームズゼノギアスマリーのアトリエの4作品のみ(たぶん)。
※ペルソナは女神転生シリーズ、グローランサーはラングリッサーシリーズとしてカウントしています。

ゼノシリーズとアトリエシリーズは今も続いていますが、幻想水滸伝とワイルドアームズは続編が制作されずシリーズが途絶えていましたので、クラウドファンディングでの復活に否が応でも注目が集まった訳ですね。


幻想水滸伝のここが凄い!

108人が織りなす分厚い戦記ドラマ!

幻想水滸伝の良さと言えば、何といっても「シナリオ」です。
108星の仲間1人ひとりに出自と役割があり、それが折り重なって、時には手を取り、時には対立しながら、1つの戦記ドラマを作り上げていきます。

銀河英雄伝説と同じシナリオ構造

このシナリオ構造、あの登場人物が660人居る銀河英雄伝説と同じです。
最高傑作と名高い幻水2などは、同盟vs王国のお話がまさに銀英伝的。
幻水1は原典・水滸伝と同じ国家転覆の形を取っているのですが、2からはより人間同士の掛け合いにスポットが当たるようになり、そこが評価されるようになったと思います。

仲間の数だけなら後のラジアータストーリーズ(177人)が上ですが、仲間の大半がNPCと大差の無いモブキャラであり、シナリオに関わるのはその半分も居ませんし。

シナリオライターである村山さんの手腕が、幻想水滸伝の評価に大きく影響したと言えるでしょう。


逆境にもへこたれない女性陣!

幻想水滸伝というより、村山さんのディレクションの持ち味でもあったのですが、女性キャラが底抜けに明るく、活発なのが特徴です。
戦記もののシナリオだけに救いようのない暗い展開も多い中、主人公をぐいぐい引っ張ってくれる女性キャラが必ず居る事で、落ち込んでなんかいられない!という気にさせてくれます。

世界三大死亡姉の皆さん

中でも幻水2のヒロイン・ナナミお姉ちゃんは、タクティクスオウガのカチュア、ドラクエ11のベロニカと並ぶ、世界三大死亡姉の1人。

ちなみに3人とも死亡フラグをへし折れる点で共通しています。

逆転裁判の綾里千尋を含めるかどうかは意見が分かれますが、これまで主人公を引っ張ってきたお姉ちゃんが突然命を絶たれるという、あまりにショッキングな展開に、シナリオ全体からも明るさが消えてしまい、ナナミが退場して主人公とジョウイの2人のお話になって以降は、一気に暗さが襲い掛かってくるほど存在感がありました。


撃破されたら戦死、戦争と一騎打ち!

仲間が揃ってきたタイミングで始まる戦争イベント。

手強いシミュレーション

これがどこぞの手強いシミュレーションと同様に、部隊が撃破されたら戦死扱いで108星から永久離脱する仕様になっており、通常戦闘とは緊張感が桁違いです。

さらに熱いのが一騎打ちイベント。
幻水1では、主人公の父親である帝国五将軍の1人・百戦百勝のテオを相手に戦争イベントで惨敗した後、主人公を逃がすべく殿を務めたパーンが、追ってきたテオと一騎打ちを果たします。

帝国最強のパパがあまりに強い為、負けイベントかな?と思って撃破されると、パーンは普通に戦死して退場しますし、このいっこ前で侍従のグレミオも人食い胞子から主人公をかばって死亡しているので、側近2人を立て続けに失う展開に。

このシビアなゲームデザインも、戦記ものとしてのリアリティの構築に一役買っていると思います。


梁山泊を再現した本拠地システム!

108星の仲間の他に水滸伝のお話を下地にしているのが、反乱軍を組織した英雄たちが集う場所「梁山泊」、いわゆる本拠地システムです。

村山作品の1つ、アライアンスアライブ

村山さんが手がけたアライアンスアライブでも、ギルド同盟として本拠地システムが登場しています。

108星の中には原典と同様に後方支援に回った非戦闘員も居る訳ですが、RPGにおいてバトルに参加しない事は、それはつまりNPCと大差が無い事を意味します。

これを克服するのが非戦闘員が活躍する本拠地システムであり、本拠地の成長に比重を置いたバランスになっている幻水3(金策がきっつい)では、装備品の充実や資金繰りの面での恩恵がでかく、拠点の城主であるトーマス編で仲間集めをしておく事が特に重要です。

アライアンスアライブでは分断された世界を1つに繋ぐシナリオ上の役割も与えられ、ゲームシステムとの両輪が揃った面白さとなり、より重要度が増していました(やはり金策がきっつい)ので、百英雄伝ではどうなるか楽しみです。


村山さんに感謝を込めて

私はゲームを購入する時は、シナリオライターが誰かを見ます。
時にはそのライターさんを追いかけて新規タイトルまで手を出します。

ドラクエ10の藤澤仁さんを追いかけてドラクエモンスターズ3を購入しましたし、今度は幻想水滸伝の村山吉隆さんを追いかけて百英雄伝を購入します。

世の中には、シナリオの「謎」を断片化して世界中のどこかに置いてくる人が、稀に居るのです。
私はその断片化された「謎」を解く鍵を探し出し、元通りにして1つの答えに紡ぎあげる、その為だけにゲームを購入し、答えが出るまで謎解きに没頭します。

村山さんは、情報を断片化して配置する仕掛けを施すプロでした。
その村山さんが亡くなってしまった事は、痛恨の極みです。

村山さんの遺作となった百英雄伝、村山さんに感謝を込めて、存分に楽しみたいと思います。




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