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漫画の井之頭五郎はハードボイルドなんだよ『孤独のグルメ』【読書ログ#141】

書棚を整理していたら、ホーガンの『星を継ぐもの』の間に『孤独のグルメ』(久住昌之、谷口ジロー)が挟まっていた。

なんのこっちゃだろうが、写真をみてもらうとよくわかる。挟まっている。

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三冊ありますね。左から、二冊目に買ったやつ、再読したくて家を探したけど見つからないから買ったやつ、ひとつあけて、100刷の帯が付いていて感動して買ったやつ。という並びです。

100刷ってすごいよね。

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福音館書店の絵本かと思う勢い。

三冊とも中身は一緒。欲しい人が居たら言ってね。

なぜここに『孤独のグルメ』が挟まっていたのか。よくわからないけど、とにかく片付けはまた今度にして、懐かしみながら読みました。

人気ドラマ「孤独のグルメ」の原作。ドラマは好きだけどこれを読んでいる人は意外に少ないのかもしれない。

内容や設定はほぼ一緒なのだけど、ドラマの井之頭五郎と違って、漫画の井之頭五郎はもうちょっとニヒルでハードボイルドだ。

個人で輸入雑貨商を営むのは一緒だが、大女優の彼女よりも仕事を取るし、車はBMWのクーペとVolvoのステーションワゴンを使い分け、自宅とは別に事務所や倉庫を持ち、さらにショールームまで作ろうとしている。

服を脱げば筋肉モリモリで腹筋は割れており、元格闘家のオッサンに絡まれても逆に関節をキメて撃退してしまう。

あまりにも完璧。ドラマの松重豊なイメージを持ったまま漫画を読むと、いきなり役所広司が出てくるのでビックリしてしまうだろう。

でも、ご安心、中身はドラマと一緒。つまり、超面白い。

井之頭五郎は、各話の頭では、だいたいボヤいたり憂いたりしている。面倒な感じなのだが、ひとたび食事がはじまるとすべてが一変する。

むはっ、ふはっ、と、一心不乱に食べる、食べる、食べる。誰にも邪魔はさせない、誰にも咎めさせない、おかずが足りないと思えばどんどん追加だ。メインにメインを重ねる事もいとわない。定食を食べ終わった後に、隣の人が食べていて気になったカレーを追加注文するようなことも、恥ずかしげもなくやる。

そして、飯を食いながら、だんだん気持ちはフラットになってゆき、ボヤきは鳴りを潜め、やがて大満足に達する。

これが繰り返される。ただ、繰り返される。だのに、これがいい。ああ、俺もこんな風に自由に食べたい、飯の事だけ考えて、飯の事だけ見て、一心不乱に食べたい!

この流れ、見覚えがあるなと思って読んでいたが、まさに子供達に食事を与えているときの感じとそっくりだと気が付いた。

子供は、身に降りかかる不快感が何か、なんて冷静に分析は出来ない。

日に何度も訪れる空腹の不愉快が体と心を支配しはじめると、その不愉快が冷静な判断を見失わせる。

そんな様子を見つけ、両親は口に食事を、おやつを、とにかく手元にあるものをねじ込む。そうすると、さっきまでの不機嫌がうそのように吹き飛び、徐々に上機嫌になっていく。

身体の声が素直に表に出ていてほほえましい。

井之頭五郎は、最後にタバコを一服して取り乱した自分を諫め、また自分の住むハードボイルドの世界に帰っていく。いっのーがしーら、ふー。

読んでいると、腹が減る。どうしよう、こんな夜中に。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。