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どうしても思い出せない絵本がある『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』(三上延)【読書ログ#155】

子どもの頃に読んだ絵本みたいな本がある。そして、その本を、たまに思い出してはネットで検索し、見つからなくて撃沈する、ということを定期的にやっている。その本を読んだのは小学校へ入る前なので、きっと絵本的なものだと思うのだけど、いくら探しても見つからない。

どうしても読みたいわけではないし、自分の子供に読ませたいと思っているわけでもない、熱心に読んでいたわけでもない、なんとなく、たまに手に取って読んでいた程度だ。だって内容なんて覚えていないし。

でも、見つからないので気になってしょうがない。

まず、ヒントが少ない。我ながら記憶力が弱く、乏しく、曖昧で模糊でモコモコしていて頼りにならない。覚えているのは、まず豚の親子の話であるということ。たぶん、両親と子供が一匹か二匹が出てくる。かれらは擬人化されていて、文明社会に生きている。そして、なぜか正面を向くことが出来ない。

ずっと横を向いている。ずっとこちらを向いている。ずっと読んでいる読者に顔が向いている。ずっとカメラ目線。ずっとキングダムの麃公みたいな顔でこちらを見ている。覚えている特徴らしい特徴は以上だ。ずっとこっちを見ている豚の親子。

ずっとカメラ目線なのに、色々な所に出かけるものだから、他人やらモノやらなにやらに衝突しつづける。ずっとカメラ目線なのにモーターボートに乗ったり、自転車に乗ったりして、人様に迷惑をかけ続ける。でも、豚の親子は全くそのことに気が付かない。ずっと気が付かない。

たぶん、なにかしら文章もついていたはずなんだけど、その内容も思い出せない。日本語だったのか、英語だったのか、それすらも思い出せない。思いだすのは、坊や哲に出てきた印南みたいな表情だけ、まっすぐで純心なまなこでこちらを見ている豚の親子の顔だけ。

なぜこれを思い出すのかわからない。とにかく思い出すので、そのたびにグーグルに「豚 横 迷惑 絵本」とか入れて探すのだけど、まったくそれらしいものにヒットしない。多分、母親がどこからかもらってきた本だと思うのだけど、その母親も覚えていなかった。

本の紹介を忘れていた。

『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』(三上延)

シリーズの第三巻となる本作は、これまで通り短編(中編?)の集まりなのだけど、その中の一つに依頼人からの「タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの」というヒントで本を探す事になった話がある。

そう、この話を読んで、またひさしぶりに例の豚の親子を思い出したのだ。

そして、ひさしぶりに「豚 親子 カメラ目線」とか「豚 ボート 衝突」などのキーワードで検索をしてみたが、もちろん答えはわからない。誰か、知っている人があらわれないかなぁ。もう、Peppa Pigだったってことにしとこうかな。でも、あんなに卑猥な動物ではなかったなぁ。

今回取り上げられる本は見出しの通り。

プロローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)I
第一話 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)
第二話 『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの』
第三話 宮澤賢治『春と修羅』(關根書店)
エピローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)II

第二話の答え合わせは面白かったな。誰もが知る(わけでもないか、でも人気のある海外の)キャラクターなのだが、私たちがしっている姿は全然タヌキではない。

ロバート・ヤングは存じ上げなかったが、Wikipediaによると「叙情的で優しい、気恥ずかしいほどストレートに愛を語るロマンティックな作風が特徴。」とあり、がぜん興味を覚えたので、手に入れて読んでみようと思う。気恥ずかしいほどのロマンティックを味わってみたい。

ロバート・ヤングは、本作で取り上げられた『たんぽぽ娘』以外にも、面白そうな作品が翻訳されている。刊行された時期をみると、明らかに本作で取り上げられたから再び刊行されるようになったのよね。こういうのは本当にすばらしいと思う。

物語の展開はおおむね読む人が期待する通りに進んでいるので割愛。面白いよ。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。