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夜、帰宅中の電車で読んでいたら遠くに連れていかれた『夜行』【読書ログ#96】

そう、電車を乗り過ごしました。

京王線の鈍行で時間をかけて読みながら帰っていたら、うっかり4駅乗り過ごす。折り返しのホームで一人ポツンとしているとき、ホームの端に誰かが居るような気配がして、すこし背筋が寒くなった。

『夜行』(森見登美彦)

2016年の10月に単行本が出ているので、3年を経ての文庫本化。書店で積みあがっていたので「もりみー」と叫びながら買いました。

こういうのって、どういう塩梅で文庫化を決めるのかしら? きっと大人の事情で決まるのでしょうけど。

あっという間に文庫本になるものもあれば、この『夜行』のように、3年経ってからの作品もある。

ハードカバーは部屋で嵩みます、嵩むと家族からの視線が冷たくなります。できれば文庫本で買いたいなと思い、文庫化されるまで待とうと、決意まではする。

でも、実際は待ちきれずにハードカバーで購入してしまうことも多い。

買うばかりで積読になり、いつのまにか書店で文庫本をみかけてしまう。なんて事もよくある。

たまに、ハードカバーを買ったことを忘れ、同じ作品の文庫本を買ってしまい、そんなに好きな作家でもない(買ったことを忘れる位だから)のに大小をそろえてしまうという事もたまにおこる。

森見登美彦作品は全部読もうと決めたので、この先に刊行される作品は、今後全部ハードカバーで買う事になるのかな。

『夜行』は不思議な作品でした。

「夜行」とは、夜行列車なのか、百鬼夜行なのか。夜に閉じ込められてしまいそうな、不思議で不気味な話が、登場人物ひとりひとりの口から発せられる。連作のような構成のお話。

いままで読んできた森見登美彦作品とは、毛色がずいぶんと違う。不気味で怖いし、不安を掻き立てる、しかも、畳まない。話を畳まない。あの芸術的なというか、ハチャメチャな話の畳み方が持ち味なのかなと(勝手に)思っていたのだけど、『夜行』では畳まない。

畳まないどころか、疑問が十も二十も出てきてしまい、そのまま終わってしまう。読み終えた後にどうやって解釈をしたらよいのかと考えてしまう。

これを気に入らなければ、本作は消化不良という事になるのかな。個人的には嫌いじゃない。上手く広げているので余韻が長い。


私の住んでいるこの世界の横に、もうひとつ森見登美彦の世界があって、その世界がたまにこちらの世界を横切るとき、森見登美彦世界の断面が見えてしまう。

そこには錦鯉とか、ペンギンとかが居たり、祇園祭がずっと行われていたりするのだが、今回はちょっと怖くて不気味な「夜行」が覗いていた。そして、読了と同時にその世界は閉じてしまった。

別に良いじゃない、答えの無いまま物語が閉じたって。

でーーも、超きになるからググってみたら、謎解きにチャレンジしている方がちらほらいるのでこれからがっつり読んでやろうと思います。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。